日米首脳(トランプ・高市)会談についての論評や投稿(「東京」「毎日」「日刊スポーツ」「赤旗」)
2025年10月30日
【東京新聞】10月29日<社説>日米首脳会談 追随一辺倒でいいのか
高市早苗首相は就任後初めて、トランプ米大統領と会談。「日米同盟の新たな黄金時代を共につくりたい」と呼びかけ、トランプ氏は「日米は最も力強いレベルの同盟国だ」と応じた。
首相は会談成功と自賛するだろうが、軍事力、経済力により他国に圧力をかける指導者を称賛することには疑問を禁じ得ない。
対米関係の重要性は理解するが追随一辺倒では日本の国益を損なう。法の支配や自由貿易を重視する自立的外交も探るべきだ。
首相は会談で、2027年度に防衛関連予算を国内総生産(GDP)比2%に増やす目標を前倒しして25年度中に達成する考えを説明した。欧州やアジアの同盟国に国防費増額を迫るトランプ氏への配慮は明らかで、日本の「主体的な判断」とは言い難い。
トランプ政権が望む対米投資でも、エネルギーやインフラ分野を中心に日本企業の関心事項を多数並べた。高関税で威嚇され、米国の要求に唯々諾々と応じることが「世界の真ん中で咲き誇る日本外交」なのだろうか。
極め付きは、トランプ氏が渇望するノーベル平和賞への推薦を首相が自ら買って出たことだ。
トランプ氏がイスラエルとイスラム組織ハマスの停戦に尽力したことは評価するとしても、持続的な和平実現の確約があるわけではない。ウクライナでの戦争では停戦の兆しすらない。米政権は中米カリブ海で麻薬対策を名目に一方的な軍事行動を繰り返す。
首相は、トランプ氏と蜜月関係を築いた故・安倍晋三元首相がノーベル平和賞に推薦したことを踏襲したのだろうが、そこまで迎合する必要があるのか。トランプ大統領の2期目に入り1年足らずで「世界はより平和になった」と評価するのは楽観的過ぎる。
首相は先の東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議で、法の支配に基づく国際秩序に寄与すると訴え、覇権主義的な動きを強める中国をけん制した。その直後に法の支配を一顧だにしないトランプ氏を持ち上げれば、国際社会に二重基準と映らないか。
安全保障、経済の両面で米国を重視することが必要だとしても、トランプ氏への追随が過ぎれば、日本外交が築き上げた国際的な信用を傷つける。米国に卑屈にならず、バランスの取れた外交にこそ指導力を発揮すべきである。
【毎日新聞】10月29日<社説>高市・トランプ会談 対米迎合が先走る危うさ
同盟の姿が変容しつつある。日本に求められる役割が際限なく膨張することへの懸念が拭えない。
高市早苗首相が就任後、初めてトランプ米大統領と会談した。日米同盟の強化に向け、経済と安全保障の両面で連携を深めることを確認した。
両首脳は、「強い日本」「強い米国」を掲げ、保守的な政治思想も重なる。安倍晋三元首相と親交があることも信頼醸成のうえでプラスに働いた。
元首相が提唱し、共通の戦略目標である「自由で開かれたインド太平洋」の実現を再確認した。米国がアジアに関与し続ける姿勢を明確にしたことは日本にとっての成果といえよう。
高市氏は「今や日米は世界で最も偉大な同盟になった」と強調し、トランプ氏は「我々は最高レベルの同盟国だ」と応じた。署名した合意文書は「日米同盟の新たな黄金時代」を築くと訴える。
共同で対処する青写真が必要だが、際立つのは「米国第一」を優先するトランプ氏に迎合する日本外交の変わらぬ姿である。
首相はトランプ氏のガザ停戦の仲介を「歴史的偉業」と持ち上げた。だが、イスラエルによるパレスチナの人々への非人道的な攻撃を非難することはなかった。
「自由で開かれた国際秩序は揺らいでいる」と首相は危機感を示す。そうであるなら、自由貿易を阻害し、国際協調をないがしろにする米国を諭すのが筋だ。
しわ寄せを受けるのは日本も例外ではない。関税交渉では5500億ドル(約80兆円)の対米投資を約束した。トランプ氏はその具体化を求めた。
「責任ある積極財政」を掲げる首相は人工知能(AI)からサイバー防御までを「危機管理」と称して国内投資に巨額を投じる。限られた財政でどう両立させるのか。財源の議論は後回しだ。
防衛費の国内総生産(GDP)比2%の前倒しを表明したのは、さらなる増額をにらんでのことに違いない。トランプ氏は米国からの装備調達を歓迎している。
「日米同盟は不公平だ」という米国の不満を和らげる狙いもあるのだろう。だが、言われるまま野放図に拡大するなら、専守防衛などの原則は骨抜きになる。
日本ができることとできないことを明確にし、米国との役割分担を定めるのが先だ。それなしに同盟は機能しない。
■主体的な外交戦略こそ
信頼関係の構築にも疑問符が付く。場当たり的なトランプ外交は不安材料だ。ロシアへの融和と敵対で揺れる姿勢を見ればわかる。対中姿勢も同じだ。
トランプ氏は先週、アルバニージー豪首相との会談で米英豪の安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」の役割を対中抑止力と認めつつ、「不要だ」とも述べた。
「取引」を好むトランプ氏の行動は予測できない。日本の頭越しで中国と何らかの合意を結ぶなら、衝撃は計り知れない。
米国が近く策定する新たな防衛戦略では「対中抑止」を低減させ、「本土防衛」を重視する方針とされる。中国に対する誤ったメッセージになるとの懸念もある。
不透明な時代にあって求められるのは主体的な戦略外交である。
日本は、オーストラリア、韓国、フィリピンなどとの防衛協力を推進し、多層的な安全網を張り巡らせている。こうした努力は今後も継続すべきだろう。
必要なのは「力による抑止」だけではない。紛争を回避する外交との両輪によって初めて安定への道筋が見えてくる。
中国との直接協議を重ね、緊張を管理する努力を怠ってはならない。中国と台湾の紛争が起これば日本は傍観者ではいられない。
大国間紛争の影響は新興・途上国のグローバルサウスに顕著に表れる。共に協力し紛争回避の国際世論を醸成するのも効果がある。
トランプ氏の意に反することもあるだろう。だが、日本の多国間外交は米国の利益にもかなうはずだ。そう説得することが結果的に信頼関係を強くする。
【日刊スポーツ】10月30日東ちづる「女性だからこそ媚びと過剰適応でのし上がってきたと想像、残念」核兵器保有にも異論
女優の東ちづる(65)が30日までにX(旧ツイッター)を更新。「現立場上は対外的にも堂々と振る舞ったほうが益になったはず」などとつづった。
「女性だからこそ、その業界では特に、媚びと過剰適応でのし上がってきたと想像できる。大変だっただろう。が、現立場上は対外的にも堂々と振る舞ったほうが益になったはず。残念」とつづった。
東は直接言及していないが、自民党の高市早苗首相(64)は28日に米トランプ大統領と初の日米首脳会談を行った。高市氏は28日午前、来日したトランプ氏と初の首脳会談を行い、午後はトランプ氏とともに横須賀基地を視察した。横須賀基地でトランプ氏がスピーチした際、高市氏は表情を崩しながらサムアップで応じた。また、トランプ氏から肩を引き寄せられる場面もあった。
東は27日の投稿で、日本の核兵器保有を肯定する声に異を唱えている。「武力で国を守ることが強い国だと思い込まされ、国民の個が蔑ろにされていく現実に目を瞑る」と書き出し、「それが愛国心だと洗脳され平和を奪われた戦前・戦中。今改めて過去に学ぶべき時なんだと思う」と記述。続くポストでは「どこからか突然攻撃されたら!? そう考えると恐怖です。だから外交に期待をします。平和と国益のために慎重に丁寧に必死に、交渉・交流をしてほしい。日本ならではの外交力の発揮に期待をさせてほしい」とも記していた。
28日の投稿では「“核を保有すれば強い国”って考え方、逆に、それこそ頭の中お花畑じゃないかしら」と、核保有を肯定する意見に言及。「日本が核兵器を保有するって、そんな安易なことじゃないので」とくぎをさし、「原爆や核禁止条約のこと、雰囲気や表層的なイメージではなくて、ちゃんと深く知った上で思索したほうがいいと思います」とつづった。
【しんぶん赤旗】10月30日<主張>高市・トランプ会談
あまりにも卑屈な従属姿勢だ
米海軍横須賀基地(神奈川県)に停泊する原子力空母ジョージ・ワシントンの艦内にぎっしり詰めかけた多数の米兵らを前に、トランプ米大統領の横に立ち、右手を高く上げて跳びはねる、満面の笑みの高市早苗首相―。主権国家の首相として本当に恥ずかしくないのか。そう思わずにはいられません。
■平和賞候補に推薦
横須賀は、米国が強大な軍事力の中核である空母を海外に唯一配備している基地です。日米軍事同盟の下での日本の主権侵害の象徴です。米空母で演説したのは日本の首相として高市氏が初めてとされ、「大統領とともに世界で最も偉大な同盟になった日米同盟をさらなる高みに引き上げていく」と喜々として述べました。(28日)
これに先立つ同日のトランプ氏との首脳会談でも「日米同盟の新たな黄金時代を大統領とともにつくり上げたい」と強調しました。しかし、この日の高市氏の一連の言動で示されたのは、「米国第一」を掲げ、世界のルールも国際協力もおかまいなしのトランプ氏のご機嫌を取り、ひたすらこびる、時代逆行の卑屈な従属姿勢でした。
会談で高市氏は、パレスチナ・ガザでジェノサイド(集団殺害)の限りを尽くしてきたイスラエルを全面的に支援するトランプ氏をノーベル平和賞候補に推薦すると表明したといいます。トランプ政権はイスラエルを支援するため、イランの核施設を先制攻撃までしています。国連憲章・国際法違反で指弾されるべきトランプ氏を同賞候補に推すとは信じがたいことです。
高市氏が会談で「これまで一貫して防衛力の抜本的強化の必要性を訴えてきており、(首相)就任直後から行動に移している」とし、「防衛費の増額に引き続き取り組んでいく」とトランプ氏に約束したことは極めて重大です。
高市氏は24日の国会での所信表明演説で、軍事費を国内総生産(GDP)比2%、11兆円規模へと倍増する政府目標を2年前倒しして今年度中に達成すると表明しました。GDP比2%の目標を定めた「国家安全保障戦略」など安保3文書の改定を来年中に行う方針も示しました。
■途方もない大軍拡
トランプ政権の高官は日本に、軍事費をGDPの3・5%や5%にするよう求めています。24年度の日本のGDPの3・5%は21兆円、5%は30兆円と途方もない額です。 首脳会談での高市氏の表明はこうした要求に応え、GDP比2%の目標達成後も軍事費を増やし続けるということです。トランプ氏からは日本の軍事力の大幅な強化や米国製兵器の購入について「感謝している」とたたえられました。
高市氏はトランプ氏との電話会談(25日)で「日本はアメリカの対中戦略やインド太平洋戦略にとって非常に重要な国」と述べています。日本の大軍拡は米国の対中国軍事戦略に全面的に加担することであり、「日本の防衛」とは直接関係ありません。
日米軍事同盟絶対の道から抜け出し、東アジアの平和を創造する憲法9条を生かした外交への転換こそ必要です。
消費税をなくす全国の会