維新は「政治とカネ」から逃げるのか あれだけ自民を批判してたのに(「東京」21日“こちら特報部”)、自民・維新の政権合意―反動化へ危険な企てを許すな(「赤旗」主張)
2025年10月21日
【東京新聞】10月21日<こちら特報部>維新は「政治とカネ」から逃げるのか あれだけ自民を批判してたのに…党内からカネ絡む事件、裏金議員応援も
日本維新の会は、自民党との連立合意へかじを切った。「裏金」に甘い自民に歩み寄る姿は「政治とカネ」の問題に及び腰になるように映る。ただ、逃げては困るのがこの問題。特に維新はそう。最近、関係がある議員らがカネ絡みの事件で相次いで立件されている。維新こそが「政治とカネ」の問題に向き合うべきなのに、緩い面々と手を携えてどうするのか。(中川紘希、太田理英子)
◆公設秘書の給与めぐり在宅起訴
20日、「こちら特報部」は茨城県取手市に入った。9月末、国から公設秘書の給与約828万円をだまし取ったとして詐欺罪で在宅起訴された石井章元参院議員の地元だ。
税金が絡む疑惑。JR取手駅前にいた結束(けっそく)栄子さん(84)は「私たちは税金納付で小さなミスをしただけで税務署からすぐ指摘されるのに…」と漏らす。
2022年夏の参院選に比例代表で再選出馬を表明し、記者会見する石井章氏=2022年5月、取手市で
石井氏は2016年の参院選で、おおさか維新の会(同年に日本維新の会に改称)から比例代表で出馬して当選し、2022年に再選された。起訴内容によると、3人で共謀して2021年4月、男性を公設第2秘書に雇用したとする虚偽の「採用届」を参院事務局に提出し、同5月〜2022年10月に給与や退職金の名目で詐取したとされる。今年8月末の家宅捜索後、維新は除名処分とし、石井氏は議員辞職した。
◆維新の改革に期待していたけれど
先の結束さんは「腹と口が違う」と感じて石井氏を支持していなかった一方、維新には思うところがあるという。「自民とは異なる改革に期待したいけど、政治不信になる」
在宅起訴された元参院議員の石井章氏の地元事務所=20日、茨城県取手市で
藤代駅近くにある石井氏の地元事務所にも足を運んだ。「日本維新の会 参議院比例区第4支部 代表 石井あきら」と記した看板が掲げられ、吉村洋文代表のポスターも貼られていた。近所の男性は「看板はいつまでそのままなのかな」とつぶやく。一時期は石井氏を支持していたといい、在宅起訴に至った今、「恥ずかしい」と口にした。
先に触れた通り、維新は石井氏の辞職前に除名処分としたが、ある女性(72)は「辞めさせただけ。反省を感じない」と語る。
裏金問題で世間を揺るがせたのは、主に安倍晋三元首相がいた派閥。「『安倍チルドレン』とされる新総裁の高市早苗氏と維新が組んだとしても、『政治とカネ』の問題がただされるとは考えにくい」と話す。
◆地元大阪・岸和田では談合疑惑も
維新が絡む「政治とカネ」の事件は、他にも取り沙汰されている。大阪府岸和田市の前市長、永野耕平氏だ。2018年の市長選では、日本維新の会の母体である地域政党「大阪維新の会」に擁立されて当選し、2022年の市長選は公認を受けて再選。昨年末に女性問題で不信任決議が通ると、議会を解散、市議選後に再び同決議を受けて失職、今年4月の出直し市長選で落選した。
永野氏は同9月、2021年に市の発注工事の競争入札で業者側に最低制限価格を漏らして落札させたとして官製談合防止法違反などの疑いで逮捕された。その後、落札業者側から計1900万円の融資を受けたとして再逮捕され、今月14日に収賄罪などで追起訴された。
大阪府岸和田市の前市長、永野耕平氏の公式サイト。今も「大阪維新の会」「市長」と書かれたままだ(スクリーンショット)
岸和田市議の海老原友子氏は電話取材に「疑惑が後を絶たない人物だが、維新に一定程度の人気があって当選した。党として、当選させてしまった責任があるのでは」と語る。
昨年末には永野氏の離党届が大阪維新に受理された一方、在職中の事件として今年9月、除名処分が出された。それでも海老原氏は「単なるトカゲのしっぽ切り。維新は議員への対応が生ぬるい」と批判した。
◆企業・団体献金の規制は進まないままで
「政治とカネ」の問題を巡って猛省が必要なのは、自民もだ。
2023年に世間を揺るがしたのが裏金問題。党内の派閥で、政治資金パーティー券の販売ノルマ超過分などを政治資金収支報告書に記載しなかったことが発覚。10人超が立件され、議員39人が党の処分を受けたが、当時、総裁で首相だった岸田文雄氏らは免れた。
次の石破茂氏は昨秋の衆院選の際、裏金が問題視された一部候補を非公認にした一方、その候補が代表を務める党支部に活動費2000万円を支給したと報じられ、強く非難された。
首相官邸に入る石破首相=20日、東京・永田町で(佐藤哲紀撮影)
企業・団体献金の規制も進まない。1994年に税金を原資とする政党助成金が導入されたが、政党や政党支部への企業献金は事実上可能。政治資金の「二重取り」状態が今も続く。
政治評論家の小林吉弥氏は「企業・団体献金は自民の生命線。企業と足並みをそろえて日本経済を引っ張ってきた自負がある。廃止すれば企業と関係が希薄になり、党も経済のあり方も変わる。簡単に譲ることができないはずだ」と説く。
◆裏金議員を気にせず起用する高市氏と手を組む
首相指名の公算が大きい自民総裁の高市氏は、裏金問題に関係した萩生田光一氏を党幹事長代行に起用するなど、緩さが批判される。高千穂大の五野井郁夫教授(政治学)は、「政治とカネ」にメスを入れるには「他党間で連携していくことが重要になる」と強調する。
昨秋の衆院選では、維新も対決姿勢を明確にした。
日本維新の会のX(旧ツイッター)。2024年10月「不透明な政治を続ける今の自民党と連立を組むことは決して出来ません」と投稿していた(スクリーンショット)
特に目を引くのが公式X(旧ツイッター)。「自民党の『政治とカネ』に対する向き合い方。一緒にやっていくなんて不可能に決まってますよ」「不透明な政治を続ける今の自民党と連立を組むことは決して出来ません」と投稿していた。
ただ、その衆院選のさなか、自民から非公認とされて無所属で出馬した萩生田氏の応援のため、維新の元代表、松井一郎氏が駆けつけている。
◆維新の「本気度」に厳しい視線
「政治とカネ」の問題に対する維新の本気度をどう捉えるべきか。
先の五野井氏は「元々、ポピュリスト政党。(人心をつかむ)『キャッチー』と思わせるものを場当たり的に出せればいいのだろう」とみる。
自民との連立に動いた今の姿については「大阪・関西万博後も(党の)支持率が伸びず、焦りがあったのでは」と述べつつ、「衆院選で維新に投票した人たちの意思に反する有言不実行の行動で、極めて不誠実。浮揚策として自民に頼らざるを得なくなったのは情けない」と手を組む相手の選択に疑問を呈する。
昨秋の衆院選で萩生田光一氏(左)の応援演説に駆け付けた松井一郎氏=東京都八王子市で
関西学院大の善教将大教授(政治行動論)は、献金規制に甘い自民との連立に関して「(規制は)維新が絶対的に優先しなければならないものではなかったのだろう」と読み解いた上で先々をこう見通す。「今後は自民との選挙協力が大きな焦点になるが、すみ分けをする中、維新は大阪以外に支持を広げにくくなる可能性がある。事実上、大阪の政党へと回帰する選択をしたのではないか」
長年、維新を取材してきたジャーナリスト、吉富有治氏は「自維連立」に厳しい視線を向ける。「自民の既得権益を認めることになり、自民の『政治とカネ』の問題、企業献金を批判してきたこれまでの姿勢とまるきり矛盾する。副首都構想が最優先だったとしても、筋が通っていない」
維新自身、「金銭にまつわる不祥事が目立つ」と触れた上でくぎを刺す。
「『改革政党』を掲げながら改革はできておらず、自民の補完勢力でしかないと言われても仕方ない。支持者離れも起きかねず、問題は尾を引くだろう」
◆デスクメモ
維新は、有言実行力。自民党と連立を組むことは決して出来ません。そう掲げながら自民と手を組む。きれいな三段落ちの時は「なんでやねん」「やめさせてもらうわ」でおしまいになるのがお約束だが、今回は背信そのもの。やめなきゃならないこと、改めて考えるべきじゃないですか。(榊)
【しんぶん赤旗】10月21日<主張>自民・維新の政権合意―反動化へ危険な企てを許すな
高市早苗自民党総裁と吉村洋文日本維新の会代表は20日、連立政権樹立の合意書に署名しました。維新は21日に召集される臨時国会の首相指名選挙で高市総裁に投票、「閣外協力」の形で自維政権が誕生することになりました。
両党の連立は、国民の暮らし、安保・外交、憲法・民主主義などどの分野をとっても日本をかつてない危険な方向に引き込んでゆくものになっています。日本の政治は反動ブロックの危険を許すのか、自民政治をやめさせ希望ある政治に転換するのか、鋭く対決する重大な局面を迎えます。
■議員削減する暴挙
自民・維新の政策合意は、国民が求め、最大の焦点になっていた企業・団体献金の禁止と消費税減税については棚上げしています。その一方、12項目を柱にした合意事項は「日本の反動化プログラム」ともいうべきものです。
社会保障では、「社会保険料を下げる」を名目に「医療費年4兆円削減」を掲げる「自・公・維3党合意」の実施とその第2段階を提起し、いっそうの患者・利用者負担増、サービス供給体制の切り捨てなど医療・介護を破壊する内容です。
2度の住民投票で否定された「大阪都構想」を前提にした「副首都構想」も重点課題として合意されています。
安保・外交では、安保3文書改定によるいっそうの軍拡推進、武器輸出の促進、「スパイ防止法」の制定、憲法9条改悪の両党起草協議会の設置、「政治改革」では政党法制定など反動化計画がズラリと並んでいます。
なかでもこの臨時国会での成立を必須条件として急浮上した国会議員の大幅定数削減は重大です。吉村氏は「これで合意しなければ連立入りしない」と強調してきました。
自民・維新の政策協議が16日に始まると、企業・団体献金禁止を棚上げしたまま合意することにならないか、疑問と批判が集中。そこでごまかすために持ち出したのが「定数削減こそ政治改革のセンターピン」(吉村氏)というすり替えです。
定数削減自体、国民の声を国会に届けるパイプを細くし、議会制民主主義の根幹を揺るがすものです。そもそも日本の国会議員数は諸外国と比較しても少ないのです。しかも現在、衆議院選挙制度協議会で定数を含め選挙制度について自民や維新の代表も参加し与野党で議論しています。
そこに突然、外部から比例定数削減を押しつけるなどは、議会制民主主義を蹂躙(じゅうりん)する暴挙です。選挙制度協議会の逢沢一郎座長(自民)が「論外」と批判するのも当然です。
■連立の基盤は弱い
自民・維新連立の危険な動きは決して軽視できません。しかしどの分野をとっても、国民の願いを実現するどころか負担を強いる悪政であり、矛盾を深め広げざるをえず国民的な基盤は弱いものです。
それだけに、それぞれの分野で国民の暮らし、権利を蹂躙する攻撃に反撃する世論と運動の輪を広げ、包囲していくことが求められます。
日本共産党は、新しい政治の局面をむかえ、国民的な共同をつくるために全力を尽くします。