コメ輸入拡大の動き―国産の需要奪われ不安定さ増す
2025年5月10日
【赤旗日曜版】5月11日<経済 これって何>コメ輸入拡大の動き―国産の需要奪われ不安定さ増す
昨年から続く米不足•価格高騰の中、主食用の外国産米の輸入を拡大する動きがあります。「トランプ関税」をめぐる日米交渉の中で、日本がアメリカ産米の輸入拡大を検討していると報じられました。
政府はこれまで災害や不作時に限っていた備蓄米放出を、「円滑な流通の確保」を新たな理由にして実施し
ました。「おきて破り」の備蓄米放出にもかかわらず、2023年産からの米不足•価格高騰の沈静化は見通せません。25年産米の作柄いかんでは米のひっ迫が強まる恐れがあります。
米の安定供給に赤信号が点灯しているもとで、財務省は4月の財政制度等審議会財政制度分科会で、海外から輸入しているミニマムアクセス米(MA米)の主食用米としての活用拡大などを提言しました。
日本の主生産の危機的状況を国民が不安に感じているとき、「貧乏大は割安な外米を食え」とばかりに冷や水を浴びせた財務省の皮相な論理には怒りがこみ上げてきます。MA米に関する農林水産寫告書69年)はMA米の輸入は、食料政策•農業政策の観点からは必要ありません」とし、「ガット•ウルグアイ・ラウンド交渉の中で、我が国全体としての経済的利益等を考慮して、導入された」と説明しています。この報告書は08年に全国で政府米の事故品(90%以上が残留農薬基準値オーバーのMA米)が食用に不正流通した事件を機にまとめられたものです。日本にMA米が不必要と公式に認めました。
政府はMA米輸入が義務でもなく、輸入機会(アクセス)の提供にすぎないことを明らかにしています。食料政策上も、一部の加工用以外には国内需要もないのに、MA米77万トン全量を輸入し続けています。その結果、2006年には189万㌧にも在庫が膨らみ、飼料用途への販売を始め現在は輸入数量の90%、約70万㌧にのぼります。22年には674億円もの赤字となり、膨大な差損を生じさせ続けています。
財務省は財政負担を減らすことにつながるMA米の主食用途利用は当然だとの考えです。
国内生産の縮小と米不足•価格高騰のもとで、現在1キロ当たり341円の関税を払って輸入しても、十分利益が確保できることから、今年の夏に向けて中外食産業を中心に、輸入契約が進んでいます。
外米輸入の拡大を歓迎する論調もあります。しかし国産米の不足を補う形で、外米が定着してしまえば、国産米の需要を完全に奪うことになります。新たな米価下落と生産増への道を閉ざすことに直結します。
外米の主食用需要が固定化すれば、輸出国での豊凶・価格変動が日本のお米の価格と需給に直接影響し、主食であるお米の生産•流通・消費がさらに不安定化することになります。
25年産米の作柄いかんでは、外米頼みになる事態も想定されるのが現在の深刻さです。だからこそ、減産から増産への道筋を示す政策と予算、政治への転換は待ったなしなのです。
湯川喜朗(ゆかわ・よしろう農民連ふるさとネットワーク)