電力小売り「自由化」8年―大手が支配料金つり上げ再エネ阻害
2024年7月6日
【赤旗日曜版】7月7日号<経済これって何>電力小売り「自由化」8年―大手が支配料金つり上げ再エネ阻害
2016年4月の「電力小売り全面自由化」から8年がたちました。当初は「原発でなく再生可能エネルギーの電力を買いたい」と、新電力(新規参入した電力小売事業者)に期待が高まっていましたが、現在、再エネ中心社会への歩みは進んでいるのでしょうか。
実際には大手電力による市場支配が維持され、公正な競争環境がないもとで電気料金の高値が続いています。原発や石炭火力発電などへの支援制度が新設され、再エネ普及への阻害要因となるなど、問題も多いのです。
全販売電力のうち新電力の割合は21年度に20%超でしたが、市場価格高騰の影響等で倒産・撤退も相次ぎ、23年度は17%程度に低下しています。
各社が電気を調達する電力市場で、21年1月に異例の価格高騰が起き、21年末から22年1月に高騰しました。市場価格は16~20年度に年平均で結時あたり10円程度でした。それが、22年夏に一部地域で一時200円まで高騰、年平均で20円を超えました。販売価格は家庭向け(低圧)も企業向けなどユ局圧)も、調
達価格を下回り、新電力は赤字を抱え、値上げも余儀なくされました。
電気の調達先は、電力市場のほか自社や他社の発電所などがあります。再エネの電気を取り入れている新電力は、FIT(固定価格買い取り制度)の電気や市場からの調達の割合が高い場合が多い。FIT電気の調達価格も電力市場価格に連動するしくみのため、再エネ新電力はより深刻な影響を受けたのです。
市場価格が高くなった要因は、国際的な化石燃料価格の高騰だけではありません。大手電力が大規模電源のほとんどを所有し、化石燃料も大量に調達している状態で、自社の利益を最大化する行動をとったことも、価格をつり上げました。例えば、関西電力は電力市場で必要以上に買い占めて価格をつり上げ、国から業務改善勧告を受けました(23年12月)。大手電力は、市場に電気を供給しており、価格をつり上げれば収益が増えます。
大手電力は国の支援もあり大規模電源を所有できました。地域独占の時代に得た顧客の多くを自由化後も握っています。圧倒的な力の差をそのままにした、いびつな「自由競争」が現状です。
他方、市場価格高騰のもとで新電力が、価格の安定した地域の再エネの開発や調達に、自治体等と連携して一層力を入れる姿勢も見られました。地域の脱炭素化や経済循環をけん引する存在として発展が期待されます。
再エネの割合は22 年度で約22%と着実に増えています。しかし原子力や火力が優先され、九州電力などで再エネ出力抑制も問題となっています。
再エネ中心の電力システムへの改革として▽大手電力と新電力の非対称(不公平)な関係の是正▽大手電力の発電部門と販売部門との分離▽公正な競争環境の確保▽大手電力からの送配電子会社の所有権分離、公平・中立な運営▽再エネの最優先での活用が必要です。
吉田明子(よしだ・あきこ国際環境NGO「FoE Japan」)