個人消費も設備投資も依然低迷(「赤旗日曜版」)
2023年9月4日
【赤旗日曜版】9月3日 経済議これって何―個人消費も設備投資も依然低迷
内閣府は15日、4~6月期の実質GDP(国内総生産)速報値が前期比1・5%増(年率6・0増)であったと発表しました。
プラス成長は、2022年10~12月期0・04%増、23年1~3月期0・9%増に続き3期連続といつことになります。また、実質GDPの規模を見ると、コロナ前のピークであった19 年7~9月期の557兆4118億円規模に対して、今期は560兆740億円と、よつやくコロナ前の水準を超えました。
これらの数字は、日本経済がようやくコロナ禍から脱出したかのような印象を与えます。
しかしGDPを構成する主要項目を見ると、GDPの5割超を占める個人消費は前期比0・5%減、GDPの約15%を占める設備投資は0・03%増と低迷しています。とくに、個人消費はコロナ前のピークであった14年1~3月期には311兆円規模であったのに対して、今期は296兆円規模と遠く及びません。設備投資も同様です。
GDPは、日本経済の規模や勢いを測る重要な指標です。しかし、問題はその中身です。注目すべきは、個人や企業の経済活動の勢いを示す個人消費や設備投資の動向です。これらが、持続的に伸びて初めて日本経済は停滞から脱出できたということになります。
今期はその両方が低迷しており、停滞から脱出したとは言えません。しかも、個人消費は、8%への消費税増税直前の14年1~3 月期を境に今日まで低迷し続けています。20年以降の急激な物価上昇も消費を抑え込んでいます。
個人消費の落ち込みにもかかわらず、今期がプラス成長を記録した原因は、円安の追い風を受けて欧米向け自動車輸出が好調であったことなどで、輸出が前期比3・2%増と大幅に伸び、逆に4~6月期GDP2023年9月3日号輸入が内需の停滞などで4・3%減となり、輸出入の差である純輸出が大幅に伸びたことにあります。今期のプラス成長は内需ではなく外需の増大によるものだということです。しかも、今期の輸出増は前期(1~3月期)の3・8%減の反動の性格を持っています。
日本経済の停滞はGDP以外の指標からも読み取れます。政府のコロナ対策支援で抑えられてきた企業倒産件数は22年4月以降増え始め、今年7月時点で16カ月連続で増大しています(前年同月比)。労働力需要が強まるなかでも賃金は低く抑えられ、物価の変動を取り除いた実質賃金は1990年代末以降慢性的に下落しています。
日本経済の行く手には暗雲が立ち込めています。ロシアのウクライナ侵略を契機にした急激な物価高、世界各国経済の停滞傾向、新興国の累積債務の増大、世界的な長期金利の上昇などがそれです。円相場や株価は米国の金融政策に振り回され、政府と日銀はなすすべを失っています。そのうえ、軍事費を一気に増やし、あげくには物価高の中で増税まで画策するありさまです。
工藤昌宏(くどう・まさひろ東京工科大学名誉教授)