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米銀園綻―FRB報告書を読む㊤、㊥、㊦(「赤旗」)
2023年5月27日
【赤旗】5月24,25,26日 米銀園綻―FRB報告書を読む㊤
 米連邦準備制度理裏〈(FRB)は破綻したシリコンバレー銀行(SVB)の経営や銀行監督の実態を検証した報告書を4月28日に公表しました。報告書をどう読み解くか、政治経済研究所の合田寛理事に寄稿してもらいました。

 米国ではSVBに続いてシグネチャー銀行、ファースト・リパプリック銀行と、銀行破綻が相次いでいます。突破口となったSVB破綻は新たな金融危機再燃の先駆けとも見られるものです。監督当局であるFRBの本報告書は注目に値します。
◆中堅の地域銀行
 2022年12月末のSVBの総資産は2090億㌦(全米16位)、ファースト・リパプリック銀行の総資産は2126億㌦(同14位)、シグネチャー銀行の総資産は1100億㌦(同29位)でした。全米トップのメガバンクであるJPモルガン(3・2兆㌦)、2位のバンク・オプ・アメリカ(2・4兆㌦)などと比べれば規模が下回るとはいえ、いずれも中堅の地域銀行として、金融システムの重要な一翼を担っています。
 報告書によると、SVB破綻の最大の原因は、FRBがインフレ対策として取った金短期利益追った経営者利引ぎ上げに対してSVBが必要なバランスシート対策を行っのではなく、短期利益を追求し続けたことです。
 SVBのビジネスモデルは、テクノロジーやライフサイエンスなど、成長しつつあるベンチャーキャピタル企業やスタートアップ企業に金融サーピスを提供するとともに、彼らの預金を受け入れ、それを長期証券に投資するというものでした。金利上昇は保有する証券価格の下落をもたらし、大量の未実現損失によってバランスシートが急激に悪化しました。
 SVBの経営に不安を感じた預金者は、前例のないほど急速に預金解約に走り、取り付け騒ぎとなったのです。米国では預金保険制度によって守られる預金は25万㌦(約3440万円)までですが、SVBの顧客の預金は大半が大口預金で、保険対象外の預金は預金総額の94%に達していました。急速な預金流出はそのために起きたものです。
 急速な預金流出を加速したのはSNS(ネット交流サービス)による情報伝搬の速さです。リーマン・ショックによる銀行破綻時には、ワコピアは8日間で100億J の流出、ワシントン・ミューチュアルは16日間で190億㌦の預金流出であったのに対して、SVBの預金は一両日にして1420億㌦の流出が見込まれたのです。
 破綻に至った背景は、高度に集中化したビジネスモデルで急成長し、規模の急拡大と複雑化を強める中で企業経営に高い脆弱(ぜいじゃく)性を抱えていたにもかかわらず、SVBの取締役会がリスク管理を怠ったことです。19年から21年にかけてSVBは資産を710億㌦ から2110億㌦へと3倍化させますが、それに伴って必要な監視や規制の基準は高めませんでした。
◆「役員報酬制度」
 経営者が経営の悪化にもかかわらず、早期のリスク管理をとることができなかった要因として、経営成果に応じた報酬支払う役員報酬制度があります。SVBでは上級経営者に対する報酬規定は短期的な利益と配当に結び付けられており、リスク指標は含まれていませんでした。それは経営者に健全なリスク管理よりも短期利益を目指すインセンティブを与えたのです。(つづ<〕

米銀園綻―FRB報告書を読む㊥
 米国では連邦淮備制度(FRS)が、通貨監督庁(OCO)、連邦預金保険公社(FDIC)と並んで金融機関の監督を担っています。中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)が直接に、あるいは全国の主要都市にある12の連邦準備銀行(連銀)を通じて、監督を行っています。シリコンバレー銀行(SVB) はサンフランシスコに本店があるため、設立以来20年以上にわたって、主としてサンフランシスコ連銀が監督に当たってきました。
 FRBの監督は銀行の資産の規模に応じて行われています。総資産1000億㌦以上の銀行は「大規模およひ外国銀行組織(LFBO)」として、100億~1000億㌦規模の銀行は「地域銀行糧(RBO)」として監督されます。
◆弱点発見したが
 SVBはRBOとして長く監督されてきましたが、規模の急成長によって2021年、LFBOに移行し、より厳しい基準で監督されるようになりました。これに伴いサンフランシスコ連銀は新しい監督チームを派遺し、SVBのガバナンスやリスク管理に関してさまざまな弱点を発見しました。しかし、基準達成のために長い猶予期間を与え、弱点を改善する緊急の措置はとられませんでした。22年11月、監督チームはSVBの格付けを引き下げる計画を立てましたが、実際に引き下げが行われる以前に破綻したのです。
 その背景にはトランプ政権による金融規制の緩和があります。
 リーマン・ショックを契機とする世界金融危機を踏まえ、オバマ政権は金融規制の強化を図るためにドツト・フランク法を制定し、総資産500億㌦を超える大銀行に対する規制を強化しました。ところがトーフンプ政権の下で、この規制強化の対象となる銀行の資産を2500億㌦に引き上げるとともに、総資産1000億~2500億㌦の銀行に対してはテイラリング・ルール(規模に応じた個別ルール)を適用し、より緩やかな基準を適用することとしました。
 同時にFRBは監督の政策スタンスを変え、18年に「ガイダンスに関するガイダンス」を公表し、法律や規制よりも監督当局の期待の役割を重視する考えを公式に明確化しました。21年4月、FRBは「監督ガイダンスは法律上の強制力や効果を持つものではなく、期待や適切な業務を描くことだ」という内容を含む最終ルールを長期的な原則として承認しました。
◆監督体制弱める
 報告書では、この時期にトランプ前政権が指名したクォールズ副尋長の下で、監督の姿勢が緩められたことが具体的に紹介されています。インタビューを受けた監督スタッフが、銀行側による負担の軽減を求める圧力や、監督上の結論を導くにあたっての高い立証責任、監督実施に要求されるデュープロセス(適法手続き)の圧力などを繰り返し訴えたことも紹介されています。
 FRBのこうした監督スタンスの変化によって、監督スタッフはこれまで以上に多くの証拠を蓄積する必要が生じ、ある場合にはスタッフに行動をとどまらせることもあり、それが監督業務の遅延につながったことが指摘されています。
 じっさいこの時期にSVBに対する範囲と強度は弱められ、SVBが急成長した17年から20年にかけて、監督時間は40%以上減らされていたのです。全米でも16年から22年に銀行部門の資産は37%増えたのに対して、FRBの監督人員の数は3%減らされています。(つづく)

米銀園綻―FRB報告書を読む㊦
 米連邦準備制度理吏本(FRB)のパウエル議長は3月22日の記者会見で、シリコンバレー銀行(SVB)は「アウトライアー(外れ値)」だったと弁明しました。通常の銀行とは異なった例外的な経営モデルであったことを強調したのです。
 この点に関して報告書は、①総資産に占める保有証券の製口が55%を占め、大銀行平均の25%の倍以上であること②保有証券の総額に占める満期保有証券の割合が78%で、平均値の42%の2倍近い大きさであること③総預金に占める預金保険で守られる保険対象となっていない預金の割合が94%で、平均の41%の2倍以上であることーどのデータ(2022年末)を示し、一般の銀行との違いを説明しています。
◆証券価格が急落
 しかし、FRBによる低金利政策の下で、全米の銀行は有利な運用先として、大量の証券を保有してきました。FRB による金利引き上げにより、証券価格が急落し、多くの銀行は含み損を抱えるに至っています。SVBの場合は保有する証券価格の下落による18億㌦の未実現損失が破綻の主要因となりました。連邦預金保険公社によると、全米の銀行の未実現損失は6200億㌦(約83兆3000億円)にのぼります。
 また総預金に占める保険対象外の預金の割合の高さも、SVBの特異性を示すものではありません。同時期に破綻したシグネチャー銀行は90%、5月に破綻したファースト・リパプリック銀行は67%でした(22年12月末現在)。
 連邦預金保険公社によると、近年、総預金残高に占める保証対象外預金残高は急増する傾向にあります。その割合は平均で50%近くに達しており、大銀行ほどその割否は高くなっています。米国の預金口座の99%以上は25万㌦以下の預金なので、保証対象外預金の預金者は、口座数にして1%以下の富裕署や企業による大口預金によるものと考えられます。
◆富裕層を相手に
 近年の保証対象外預金の急増は、金融緩和政策によって市中に大量のマネーが供給されたこと、とくに富裕層の大口マネーが金融機関に流れ込んでいることを示しています。大手金融機関は、こうした富裕層を相手にしたピジネスで、収益を拡大してきたのです。
 このように、SVBはもちろん、破綻した他の2行も含め、そのビジネスモデルは特別な「外れ値」として片づけられるものではなく、むしろ「先駆け」と見た方が正しいかもしれません。
 いずれにしてもSVB 、シグネチャー銀行、ファースト・リパプリック銀行の3行の破綻は、わずか7カ月で、米国史上4大銀行破綻のうちの三つ(最大の破綻は08年に破綻したワシントン・ミューチュアル銀行)が生じたことを意味するもので、米国金融システムの新たな危機と見なければなりません。
 これらの破綻にともなって、大手銀行による買収(ファースト・リパプリック銀行は最大手モルガン・チェース銀行によって買収)や預金保険制度によって、とりあえず預金者は保護されました。預金の全額保護は平時には認められておらず、財務省の「システミック・リスク」の判断と大統領との緊急協議のうえで、この決定が下されたのです。
 しかし大口預金を含めて全預金を保証すれば、より大きなリスクをとる誘因を銀行に与えます。そうした処理は危機を引き延ばす危けで大銀行をますます巨大化し、「大きすぎてつぶせない」ばかりか、「大きすぎて制御できない」深刻な事態を招くことは必至です。(おわり)