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2023年の世界と日本の経済の潮流―工藤昌宏さん<上>、<下>、藤田 実さん<上>、<下>(いずれも「赤旗」)
2023年1月15日
【赤旗】1月11日 2023年の世界と日本の経済の潮流について、識者の寄稿を掲載します。

 東京工科大学名誉教授・工藤昌宏さん<上>停滞を抜け出せぬまま
 1991年のソ連崩壊を契機に資本主義は暴走を開始し世界中に混乱を広げていきました。
 資本主義は資本運動の自由、競争の自由を前面に押し出し、社会維持費用を堂々と国民に押し付けるようになりました。
 その結果、国民生活の劣化とは対照的に大企業は活動領域を世界中に広げていきました。しかし、これによって世界は激しい競争の渦に巻き込まれました。競争は多くの企業を破綻させ、大量の失業者を生み出し、貧困と格差を拡大し、資本主義国ばかりか新たに市場経済を導入した国々を巻き込んで世界各国の経済を長期的に停滞させています。
 しかも、貧困・格差拡大を容認するばかりか正当化する考えが広まっていきました。自己責任という言葉がそれを象徴しています。そして今、世界各国はさらに大きな問題に直面しています。
◆金融対応できず
 2000年代になると、世界各国は停滞から抜け出そっと相次いで金融緩和策をとり始めました。しか停滞を抜け出せぬままし、金融に経済を回復させる力はもともとありません。世界各国が停滞に陥っているさなか、20年には突如としてコロナウイルスが世界を襲い、今なお多くの命を奪い、暮らしを破壊し続けています。21年になるとコロナ感染がやや緩やかになり生産が復活し始めると、今度は生産財不足、エネルギー不足から物価が上昇し始めました。さらに、22年2月にはウクライナをめぐる戦争が勃発しました。これを契機に、物価はさらに上昇し世界中の人々の生活に打撃を与えています。
 そこで、各国は急激に上昇する物価を抑え込もうと米国を先頭に一斉に金利の引き上げに転じました。しかし、米国による金利引き上げは物価を抑え込むには力不足で、しかもドル高と各国通貨の下落を誘導し、それによって各国の輸入物価の上昇を引き起こしています。さらに、ドル高は新興国通貨の価値の下落を通じて、それらの国の物価上昇、ドル建て債務の増大をもたらしています。
◆根源問題が深刻
 世界各国の経済停滞、国民生活の動揺、政府・中央銀行の混乱は、株価や外国為替相場を乱高下させ、経済をさらに停滞させるばかりでなく、巨額の投機資金を動かし高収益を上げてきたファンドまでも破綻に追い込んでいます。
 つまり、世界各国経済は停滞から抜け出せないまま次の停滞局面に入っているとい「つことです。過剰生産、倒産、失業、貧困、格差といった資本主義経済が根源的に抱え込む問題は、国境を越えた大企業の活動、コロナ禍や戦争を契機に一層深刻化しています。とくに日本では、ゼロ金利にもかかわらず、投資領域はますます細り、お金が行き場を失い、国民生活の困窮化とは裏腹に企業の内部留保が積み上がり、国家の支援なしには企業活動も成り立たない状況です。しかも頼みの支援も効果が期待できません。(つづく)

【赤旗】1月12日 東京工科大学名誉教授工藤昌宏さん<下>でたらめな施策の結果 
 2008年の米国投資銀行を中心にした金融不祥事、いわゆるリーマン・ショックを契機に、世界各国経済は金融、経済危機に陥りました。以後、世界各国経済は停滞基調に陥り、今もなお低成長から抜け出せないままです。20 年には、新型コロナウイルスの大流行によって、世界は一気に奈落に落とされてしまいました。
◆停滞と混乱鮮明
 問題は、このような世界各国の停滞を単に一時的なものとみることはできないとい「つことです。背景には、国境を越えた資本運動、それによる競争激化、貧困・格差の拡大といった問題が横たわっています。
 賃金を押さえつけながら肥大化してきた資本が富を過剰に蓄え、行き場を失ったお金が投機資金となって世界中の金融市場を食い物にしています。その結果、各国経済は混乱し、不安定な状況に置かれています。
 他方、各国政府は、資本運動の活性化に活路を求め、資本運動も国家への依存度を強めています。もはや、資本運動は国家の支援なしには成り立たない状況に置かれています。そして、このような、停滞、混乱した経済の姿を鮮明に示しているのが今日の日本経済です。
 22年7~9月期、日本の国内総生産(GDP)は、実質で前期比0・2%減、年率0・8%減と、4期ぶりにマイナスを記録しました。しかし、マイナスは今でたらめな施策の結果期に限ったことではなく、1990年代以降、頻繁に繰り返されてきました。とくに、2000年代になると、さまざまな政策が講じられてきたにもかかわらず、先進国で唯一「低金利」、「低成長」、「低物価」を余儀なくされ、そこから抜け出せないままでいます。そして、そのよ「つな中で、新型コロナウイルス禍の直撃を受けてしまいました。
◆誤認識・誤政策
 日本経済の長期停滞は、長年にわたる政府の誤った経済認識、それによる誤った経済政策によるものです。経済停滞の原因は、実際には国民生活の劣化によるものなのに、大企業の収益が伸びないからだとして円安を誘導したり、日銀からお金を流せば物価が上がる、物価が上がれば国民は経済が好転していると錯覚して消費を増やす、さらに株価をつり上げれば株を持っている人は懐が温まって消費を増やすはずだなどといっ、妄想に近い認識で異様な金融緩和を続けるなど的外れな政策を長年とり続けてきました。
 また、財政政策も無駄遣いを放置し、場当たり的な支出を繰り返しています。経済再生の起点となる国民生活に対しては、消費税率や社会保険料の引き上げなど、信じがたい暴挙を繰り返してきました。これでは、日本経済の再生などはありえません。株価は、日銀の株価操作の影響で13年以降上昇しましたが、富裕層の懐を潤すだけです。結局、日本経済の長期停滞は、日本政府の的外れどころかでたらめな姿勢、施策の結果であると言えます。
 長期のゼロ金利、マイナス金利にもかかわらず、資金需要が弱く、新たな投資先もなく、自力で利益を稼ぐこともできず、お金が行き場を失い投機に回り、経済のアラート機能を果たす金融市場も壊されているよ「つな状況を資本主義と呼ぶことができるのでしょうか。日本については、資本主義は終わっているといった意見もあながち否定できない状況にあります。(この項おわり)

【赤旗】1月13日 桜美林大学教授・藤田 実さん<上>下がる産業競争力
 日本経済の長期停滞が続き、「失われた20年」が30年と称されるようになり、2021年の日本の1人当たり名目GDP(国内総生産)が経済協力開発機構(OECD)で20位まで低下しました。日本の経済力の低下の原因のーつに、産業競争力の低下があります。
◆半導体や車でも
 産業競争力の低下はさまざまな指標から説明できます。典型的には、電機産業における世界市場シェアの劇的低下としてみられます。周知のように、1980年代には日本の家電や電子産業は世界一で、メード・イン・ジャパン(日本製)は高品質の代名詞でした。しかし現在は、電機・電子産業の製品競争力は、韓国や中国に押されて、見る影もなくなっています。スマートフォンも同様です。
 半導体産業分野でも、80年代は日本企業が世界市場の過半を占めていました。現在は、インテル、サムスン電子などのアメリカや韓国のメーカーが圧倒的で、調査会社の調べでは日本企業のシェアは6%(2021年)にすぎません。
 強い競争力を誇ってきた自動車産業でも、EV(電気自動車)ではアメリカのテスラやドイツのフォルク下がる産業競争力ではトップのトョタや日産など日本の自動車企業はトップ10には入っていません。
 急速に普及が始まった再生可能エネルギーの分野でも、欧米企業や中国企業などが上位を占めていて、日本企業の市場シェアは少ない。例えば、風力発電機ではデンマークのベスタス、ドイツのシーメンス・エナジー、中国のゴールドウインド、太陽光発電では中国のロンジ、ジンコソーラーなどが上位メーカーです。
 このような産業競争力の低下に対して、政府は2022年6月に閣議決定した「新しい資本主義のグランドデザインおよひ実行計画・フォローアップ」で、科学技術・イノベーションへの重点投資で量子技術、AI(人工知能)技術、バイオものづくり、再生・細胞医療・遺伝子治療などの分野をあげるとともに、GX(グリーントランスフォーメーション)やDX(デジタルトランスフォーメーション)への投資を強調しています。
 しかし、こうした先端分野の基礎研究を担う大学の研究予算は、集巾と選択の名の下に縮減し、大学院を修了した若手研究者も安定した研究職に就けない現状にあります。企業でも、博士課程修了者の採用を躊躇(ちゅうちょ)する傾向にあります。
◆根本的な反省を
 また、GXに関しても、日本では原子力発電などを抱える電力企業や原子力ムラの「圧力」もあって、再生可能エネルギーへの転換が遅れてしまったことが設備産業の競争力を低下させたにもかかわらず、依然として原子力発電に固執しています。
 日本の産業競争力を復活させるためには、科学技術政策も含め、根本的な反省に基づいて、産業政策を再構築する必要があります。(つづく)

【赤旗】1月14日 桜美林大学教授・藤田 実さん<下>企業の経営力劣化
 産業競争力の低下の背景には、日本企業の経営力の劣化があります。
◆人件費抑え利益
 日本企業は、2000年代から売上高が停滞するもとでも利益を出そうとして、人件費の削減のためのリストラに力を入れてきました。実際に、「法人企業統計」(資本金10 億円以上、金融保険業を除く全産業)で、2010 年代の売上高の推移を見ると、一部の年を除いて、550兆円台を前後しているのに対し、経富利益は13年度から増大し、21年度は新型コロナウイルス禍にもかかわらず49兆5341億円と過去最高となりました。これに対して、21年度の賞与を含む従業員給与は43兆8818億円で、1997年度の43兆9347億円を超えていません。他方で、利益剰余金は2013年度から毎年増加を続け、21年度で156兆2527億円と過去最大になっています。設備投資は21年度は21兆1728億円ですが、1990年代後半の23兆525兆円台には届いていません。
 このように、「法人企業統計」で企業経営の実態を見ると、人件費を抑制しながら、利益を出す一方で、設備投資は停滞しているので、利益剰余金が蓄積され続けています。利益剰余金が積み上がるのは、企業活動が順調だったという結果を示すものだという見方もあります。しかし、実態としては、人件費を抑制することで利益を出しているのであり、その利益も設備投資など生産的投資には向けていないのです。また株式や有価証券の保有も増大しており、21年度は308兆5930億円と過去最大になっており、企業は増大した利益を金融投資に振り向けています。
 企業が、人件費抑制で利益を創出し、それを内部留保として保有したり、金融投資をしたりしながら、本業の事業活動を拡大させないのは、拡大再生産を基本とする本来の資本主義経済からすれば、異質な行動です。
 イノベーションという面から、日本企業を見ると、IT(情報技術)でも、EV(電気自動車)でも、AI(人工知能)でも、半導体でも、従来の技術や製品を乗り越える、いわゆる破壊的なイノベーションを実現した領域は少ないように思われます。
◆短期的な視野で
 結局、日本企業は、少子化など国内市場の縮小を理由に、国内での事業展開には消極的になっています。
また、低金利であるために、金利を上回る程度の利益をあげれば、経営は維持できるので、技術開発や設備投資、新しいビジネスモデルの開発などに消極的となり、これがまた売上高の停滞を招くという悪循環に陥っています。さらに企業経営者はファンドなど海外株主の配当増大への圧力もあり、長期的な視野で研究開発や情報化への投資を行うことなく、短期的な視野でリストラなどに走るので、ますます企業成長のシーズ(種)を枯渇さサでいます。
 このような企業行動から考えると、日本の産業の停滞は、企業の経営力の劣化と企業家精神の衰退によると言えると思います。このように考えると、日本企業の経営力の劣化に起因する産業の衰退が、日本経済の長期停滞の原因のーつになっているということになります。(この項おわり)