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検証 アベノミクスつづき(労働、異次元金融緩和、TPP)
2022年7月30日
【赤旗】7月26日 検証 アベノミクス―労働=働かせ方の自由を拡大 桜美林大学教授藤田実さん
 第2次安倍晋三内閣の労働政策は、一見すると首尾一貫しておらず、捉えどころのない政策遂行のようにも見えます。
 企業による働かせ方の自由を拡大するものとしては、労働者派遣法改正や、裁量労働制の拡大、高度プロフェッショナル制度の導入があげられます。
◆常用雇用の代替
 2015年の労働者派遺法改正では、派遣労働者の受け入れを有期契約の場合で3年に制限していますが、それは同一組織単位(課)での受け入れであり、職場(課)を変えれば、延長できます。事業所単位では過半数労働組合の意見聴取で永続的に利用できます。さらに、無期雇用の派遣労働者ならば、期間制限なしに使役できるようにしました。
 これは、派遣労働者を常用雇用の代替として永続的に利用できるようにしたものです。
 18年に国会提出しながら、不当な実態調査が明らかになり、法案成立を断念した裁量労働制の拡大も、労働時間規制にとらわれずに労働者を働かせたいという企業の意図に基づくものです。政府や財界は、裁量労働制の適用範囲が狭く、適用されている労働者が少ないとして、提案営業を行っ営業職も企画業務型の裁量労働制に加えることで、裁量労働制の拡大を企図しました。
 19年より導入された高度プロフェッショナル制度(高プロ)も、企業による自由な働かせ方の拡大を意図したものです。高プロは高度な専門知識を要する業務に従事している労働者に対して、一定の要件を満たすことを条件に深夜割増賃金も含めて労働時間規制の対象から外す制度です。
 アベノミクスの労働政策の中には、一見すると労働者重視のように見えながらも、本質的には企業の働かせ方の自由を過度に侵害しないように制度設計したものもあります。それが、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間の不合理な待遇差の解消をうたった同一労働同一賃金原則の導入です。これは、労働法制の規制緩和や企業の雇用戦略で、2000年代以後急速に増大し、現在では2000万人を超えるようになった非正規雇用労働者の劣悪な労働条件を放置できなくなり、正規労働者との格差是正策として義務化されたものです。
◆財界許与の範囲
 正規雇用労働者との格差是正のために、同一労働同一賃金ガイドラインが決められました。従来のような正規雇用労働者を低賃金の非正規雇用労働者と置き換えることで、利潤増大を図るという企業行動は、非正規雇用労働者の生活困難をもたらしたとして、事態を放置してきた政府や企業への批判の高まりを背景にしています。
 これにより企業は格差がある場合には、格差の根拠を示さなければならなくなるので、一定の格差是正の効果はあります。しかし、ガイドラインではキャリアコースの違い、配置転換や転勤の有無などによる格差を認めています。安倍政権で成立した同一労働同一賃金は全面的な原則の実現を目指すものではありません。
 以上のように、アベノミクスにおける労働政策は、規制緩和を進める一方で、本格的な労働者生活の改善を目指したものではなく、財界が許与する範囲にとどまっていると言つことができます。

【赤旗】7月27日 検証 アベノミクス―異次元金融緩和(上)―「日しずむ国」に転落 群馬大学名誉教授山田博文さん
 異次元金融緩和政策とは、アベノミクスの第1の矢を担って2013年4月以来、黒田東彦日銀総裁の下で実施されている量的・質的金融緩和政策です。国債を大量に買い入れて民間市場にジャプジャプのマネーを供給する量的緩和策と、株式なども買い入れる質的緩和策を組み合わせています。
 世界でもまれな異次元金融緩和政策の帰結をデータ(表―略)で検証します。
◆官製バブル惹起
 まず注目されるのは、この政策は日銀主導で株式の官製バブルを引き起こしたことです。日銀が株価指数に連動する上場投資信託(ETF)を36・9兆円も買い入れ、株式市場に大量の日銀マネーを供給し、株価をつり上げたからです。
 中央銀行が民間企業の株を買うことは世界で禁じ手とされています。その効果は抜群で、日経平均株価は2・5倍、株式時価総額も2・3倍に増大しました。「バイ・マイ・アベノミクス」、「インベスト・イン・キシダ」と、二人の首相による世界の投資家へのトップセールスがニューョークとロンドンで行われました。
 「貯蓄から投資」を推進する政府と日銀に支えられ、株式の配当金や大企業の内部留保金も大幅に伸びました。日銀が株を買って資本金を供給してくれるので、経営が悪化しても会社は倒産しないし、株高を利用して株式の売買差益も入ってきます。海外投資家・金融機関・富裕層などの株式保有層は大もうけしました。
 経団連などの財界は、「アベノミクスの推進により、力強い日本経済の復活を成し遂げた」と大歓迎です。でも、復活したのは大企業だけで、99%の企業と国民にとって、経営と生活はむしろ悪化しました。
◆政策こそが原因
 政府はこの間の物価高を海外の戦争などのせいにしていますが、むしろ国内の異次元金融緩和政策に主要な原因があります。日銀が量的緩和策で過剰なマネーを供給し続けたので、この10年間で円は35・2%も安くなったからです。
 円安とは円の対外購買力の減退です。エネルギー、資源、食料などの輸入物価は為替要因だけで35・2%も高騰することになり、国内物価の押し上げ要因として作用しています。すでに企業物価は過去量局の9・2%高騰しました。経済を動かすエネルギー価格の上昇は、すべての企業製品や公共料金を上昇させました。
 深刻なのは6割以上を輸入に依存する食料品価格が高騰し、国民生活を直撃していることです。帝国データバンクによれば、国内105社の食品メーカーが実施分も含め年内に1万5257品目、平均13%の値上げをするようです。
 他方、円安は輸出で稼ぐ大企業に為替差益をプレゼントし、輸出を増大させます。トヨタの場合、1円の円安で約400億円の営業利益が発生するようです。
 日本経済はアベノミクスの下で縮小しました。
 国内だけに目を向けた自国通貨の表示では、国内総生産(GDP)は500・4兆円から556・9兆円へ11・2%増大し、「日本経済の復活」や「強い経済」の証とされます。
 でも、戦後、各国の経済指標は国際通貨のドルで表ホされ、比較されます。国際通貨基金(IMF)によれば、ドル表示の日本のGDP は6・27兆がから4・91兆ザへ21・6%も縮小しましたが、世界経済は38・2%増大しました。その結果、世界経済に占める日本経済の割合も、8・3%から4・7%になりました。日本経済の脆弱(ぜいじゃく)化と円安の帰結です。
 世界各国の日本を見る目線は、「日いずる国」から「日しずむ国」に転落し、海外メディアは日本を取り上げなくなりました。(つづく)

【赤旗】7月28日 検証 アベノミクス―異次元金融緩和(下)―退くも、進むも地獄 群馬大学名誉教授山田博文さん
 アベノミクスの異次元金融緩和政策によって累積された負の遺産が日本経済と国民の肩に降りかかってくるのは、むしろこれからの近未来になるようです。その負の遺産についてデータ(表―略)で検証しましょう。
◆政府債務の重圧
 日銀が国債を大量に買い入れる量的緩和策は、国債を発行する政府サイドにとって、ほぼ無制限に国債を増発できる政策でした。この間、普通国債発行残高は705兆円から1026兆円へ1・4倍に増大し、政府債務残高が国内総生産(GDP)の262・5%に達しました。日本は主要国の中で最悪の政府債務大国に転落しました。
 政府債務の重圧はこの間、歳入面では消費税の増税圧力として作用し、消費税率は5%から10%へ引き上げられました。歳出面では社会保障関係費などの削減圧力となって、国民生活を悪化させています。
 歴史を振り返ると、GDPの262・5%の政府債務の水準は、日銀の直接引き受けで軍事国債が増発された第2次世界大戦直後と同水準です。終戦後、この自国通貨建ての政府債務は、国民からの大収奪で解消されました。封鎖された国民の預金や不動産などには最高で90%の財産税がかけられ、物価は3年で100倍というハイパーインフレとなりました。
 戦後の憲法下で、このような一般国民からの大収奪で政府債務を解消することはなんとしても回避しなければなりません。異次元金融緩和政策で巨万の資産を築いた大企業や富裕層に応能負担を求めるという選択肢が検討されるべきでしょう。
 第1の矢の結末今、欧米は約40年ぶりのインフレ・物価高に襲われています。各国中央銀行は政策金利を引き上げ、金融引き締めにかじを切り、物価高を抑える「物価の番人」としての役割を発揮しています。でも、日銀は、異次元金融緩和の負の遺産を抱えているため、まったく身動きできません。物価は上がるがままに放置されています。
 もし日銀が金利を1%引き上げると、国内の金利は連動して1%上昇します。他の条件を無視すれば、政府一般会計の8・2兆円の国債利払い費は、理論上最終的には国債発行残高1026兆円の1%に当たる10兆円ほど増え、18・2兆円になります。国の財政赤字体質からの脱却が求められています。
 量的緩和策の大量国債買い入れで、541・8兆円を保有する日銀は、金利上昇に伴う国債価格の下落で、巨額の含み損を抱え込みます。「円」の信用が揺らぎ、円安が加速され、輸入物価が上昇し、国内物価も上がり、生活が破壊されます。
 国債金利を0・25%に押さえ込もうとする日銀の指し値オぺの結果、すでに日米の金利格差は3%ほどに拡大しています。何もしないでいたら、各国との金利格差はますます拡大し、世界の投資マネーは日本を捨てて高金利国へ逃避し、日本経済はさらに脆弱(ぜいじゃく)化していきます。まさに進むも地獄、退くも地獄、これがアベノミクスの「第1の矢」を担った異次元金融緩和政策の結末です。
 しかも、異次元金融緩和政策は、かつての「1億総中流社会」日本にとって変わる「格差社会」をもたらしました。
 日本の5400万世帯の約3割は、預貯金などの金融資産を持っていません。他方で、世帯数ではわずか2・4%にすぎない富裕層世帯(純金融資産1億円以上世帯)は、株式バブルを主導した異次元金融緩和政策のおかげで資産を1・8倍にし、145兆円も増やしました。「和をもって尊しとなす」日本社会は破壊されました。(この項おわり)

【赤旗】7月29日 検証 アベノミクス―TPP(上)「断固反対」ウソだった 農民運動全国連合会常任委員真嶋良孝さん
 安倍晋三元首相が凶弾に倒れたことに対し、私たちは深い哀悼の意を表明し、暴挙を厳しく糾弾します。亡くなった方に対して礼儀をつくすのが、私たちの立場でもあります。
 同時に、安倍氏が在任中に果たした役割については、事実にもとづいた冷静な評価が行われるべきです。私たちは、安倍氏が進めてきた内政・外交政策、特に環太平洋連携協定(TPP)推進に対して厳しく反対してきましたし、その立場は今でも変わりません。
◆過去最悪の協定
 10年前の記憶はまだ生々しく残っています。自民党が全国の農村に「ウソつかないTPP断固反対。ブレない。」というポスターを張りめぐらした2012年12月の総選挙。民主党から政権を奪還し、首相に返り咲いた安倍氏が真っ先に行ったのは、公約を裏切り、13年2月の日米首襲云談でTPP交渉入りを米国に誓約することでした。
 安倍元首相が3月に交渉参加を正式に表明した後、せめてものク担保ガとして4月には国会決議が行われました。
 国会決議が求めたのは、「重要5品目」(米、麦、牛・豚肉、乳製品、砂糖)は関税撤廃・削減の対象から「除外する」ことであり、これが「確保購されないと判断した場合は、交渉からの脱退も辞さない」こにとでした。
 しかし、国会決議麟も無残に足蹴にされ加ました。TPPは「重要5品目」の3割で、それ以外の品目では98%で関税をゼロにする過去最悪の「自由化」協定となりました。米国が脱退してTPP11になり資ましたが、本質は変わりません。
◆アベノマジック
 TPP交渉入りを決断するにあたって、安倍政権は「政府統一試算」(13年3月)を公表しました。その内容は食料自給率が40%から27%に下がり、農業産出額は32%減、小麦生産は壊滅、米生産も3分の1減という悲惨なもので、「日本を亡食の国にするのか」という批判が相次ぎました。
 森友学園、加計学園、桜を見る会をめぐる疑惑に見られるように、偽造や捏造(ねつぞつ)が安倍政治の特質ですが、批判をかわすために使ったのは、“ガアベノマジック”ともいうべき詐術でした。TPP が大筋合意した15年12月、政府は改定試算を公表しました。それは、農業生産減少額2・7兆円という2年前の試算を0・16兆円に捏造しなっえで、「影響が出ないように対策を打つから、影響はない」として、農産物の生産減少はゼロ、自給率も下がらないと強弁する荒唐無稽なものでした。
 安倍元首相は15年10月のJA全国大会で、参加者からヤジが飛びかうなか、「国益にかなう最善の結果を得ることができた」と大見得を切りました。毒を薬と言いくるめる不実きわまりないものでした。
◆総「自由化」体制
 18年9月の国連総会で、米国のトランプ前大統領が「グローバル化拒絶」を宣言するかたわらで、安倍元首相はただ一人、「自由貿易の旗手として立つ」と声を張り上げました。
 その言葉通り、米国が脱退してTPP11となった協定が発効したのは18年12月。翌年2月には日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(日欧EPA)、20年1月には日米貿易協定が発効し、安倍政治のもとで、日本は坂を転げ落ちるように農産物の総「自由化」体制に突入しました。
 その結果、どうなったでしょうか。20年度の食料自給率は史上最低に下がり、17~20年の農畜産物生産額は3400億円減少しました(農林水産省「生産農業所得統計」)。これには、新型コロナウイルス禍などの要因もありますが、3FTA(TPP11、日欧EPA、日米貿易協定)の発効に伴う輸入増が有力な要因です。政府は、3FTAによる生産減少額を10~15年後に3700億円と試算しましたが、発効後1~2年でこれだけの被害が出ているのです。(つづく)

【赤旗】7月30日 検証 アベノミクス―TPP(下)農民運動全国連合会常任委員真嶋良孝さん
 環太平洋連携協定(TPP)大筋合意直後に行われた全国農業協同組合長アンケートでは、9割を超える組合長が「TPPは国会決議違反」「安倍農政を評価しない」と答えていました(日本農業新聞2016 年1月4日付)。安倍晋「民の政治への不信は空前の規模に達していました。
 これに対し、農林水産省幹部は、「安倍さんを怒らせたら農業対策費が1円も出なくなる」と忠告していたといいます。(「日経」15年10月15日付)
 脅しがきいたのか、TPP反対の国民的共同の一翼を担っていた全国農協指導部は、潮が引くように撤退します。しかし、これでは終わりませんでした。
◆戦後体制解体と
 安倍氏はもともと、第1次政権時に「戦後レジーム(体制)の解体」を叫び、政権復帰後最初の施政方針演説では、「世界で一番、企業が活躍しやすい国」を目指すと公言していました。
 農政における「戦後レジーム」とは、農地改革で創出された家族農業経営を支えるための制度・政策的枠組みで、①大企業の農地支配を許さない農地法②農業協同組合制度③価格保障④農産物の輸入コントロール⑤種子・市場制度ーなどです。安倍「農政改革」は、TPPを手始めに、これら全てを解体することを狙いました。
 アベノミクスを呼号して進められた「農政改革」は、戦後、最も大規模で最悪の攻撃でした。
◆農協解体の攻撃
 中でも熾烈(しれつ)をきわめたのは、農協解体攻撃でした。「世界で一番、企業が活躍しやすい国」をめざす安倍政権にとって、農民の協同組織である農協自体が邪魔物であったのに加えて、TPPに反旗をひるがえしたからです。
 その狙いは、①共同販売と共同購入を崩して、農産物の買いたたきと生産資材価格のつり上げをもくろむ企業の要求に応え②信用・共済事業を単位農協から引きはがして総合農協をつぶし③最終的には、農協が行っている事業と140兆円の農協マネーをアグリビジネス(農業関連企業)と金融・保険資本に引き渡すーことにありました。
 この狙いのほとんどは、強力な抵抗によって道半ばになっていますが、規制改革推進会議などで火種はくすぶり続けています。
◆コメ暴落引き金
 現在の米価暴落の引き金を引いたのも安倍政権でした。民主党政権は価格保障に軸足を置いた戸別所得補償をスタートさせましたが、安倍元首相はこれを2 年がかりで廃止し、代わって米の生産調整廃止を打ち出しました。
 米の需給と価格の安定に政府が責任を負うことを放棄し、農民に需給・価格安定の「自己責任」を押しつける究極の新自由主義政策が18年にスタートしました。
 コロナ禍が世界と日本を襲ったのは20年。安倍政権は「アベノマスク」に象徴される愚策と右往左往を繰り返すばかりでしたが、米国のトランプ前政権は農家から農産物を買い上げて所得の低い人たちに配給し、農産物価格を下落させませんでした。
 私たちは「コロナ禍による過剰米を買い上げろ」と繰り返し要求しましたが、かたくなに新自由主義政策に固執し続けた安倍・菅義偉・岸田文雄政権のもとで、米価暴落は3年連続しており、それにウクライナ・円安危機が追い打ちをかけています。
 安倍元首相の常用旬のーつは「息をのむほど美しい棚田の風景」でした。これに「輪出農業の育成に重点を置く攻めの農業政策」というアンバランスな言葉が続きます。しかし、「攻め」られるのは8割の家族経営と棚田を含む中山間地です。食料自給率37%の日本が5兆円=世界第3位の農林水産物・食品輸出国をめざすというナンセンスな日標を信じている農民はいません。
 岸田首相と林芳正外相は、安倍政権で外相と農相を務め、TPPとアベノミクス農政の直接の当事者でした。安倍元首相亡き後、どういう責任をとるのかが間われていす。(おわり)