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検証 アベノミク ス(マクロ政策、消費税)専門家の寄稿各2回
2022年7月23日
【赤旗】7月20日 検証 アベノミク ス マク口政策(上)―取り残された日本(東京工科大学名誉教授工藤昌宏さん)
 安倍晋三元首相が殺害され、メディアでは安倍政権時代の政策を美化・礼賛する言論であふれています。国民生活にとってアベノミクスとは何だったのか、専門家に寄稿していただきました。

 2013年から20年中でろまで、約7年半にわたって展開された第2次安倍内閣による経済政策、いわゆるアベノミクスについては、これまで円安や株高を誘導したとして財界からは評価を得ています。しかし、その真偽はもとより肝心の国民生活や日本経済、さらには深刻度を増す累積債務問題や金融市場への影響などについての検証は十分になされてきたわけではありません。
 経済政策の検証は、経済の実態や問題点を鮮明にし、将来に向けて適切な経済政策を立案するうえで欠かすことのできないものであり、為政者が自らの責任においてなすべき仕事です。しかし、安倍内閣はもとより現政権に至るまで、アベノミクスの検証については沈黙し続けてきました。正確には避けてきたといってよいでしょう。背景には、彼らにとっての不都合な真実が横たわっているからです。
◆自立回復できず
 日本経済は、08年のリーマン・ショックによって激しく落ち込み、11年には東日本大震災に見舞われ、以後長期の停滞を余儀なくされています。背景には、雇用、所得環境の悪化に加え、増え続ける国の債務とそれによる国民負担の増大、さらには年金、医療などへの将来不安の高まりがあります。
 13年から本格的に始動したアベノミクスのもとでの日本の実質国内総生産(GDP、前年度比)を見ると、12年度の0・6%増から13年度には一気に2・7%増を記録しました。しかしこれは、巨額の財政支出、東日本大震災の復興需要、そして消費税率引き上げ前の駆け込み需要によるもので自立的な経済回復とは程遠いものでした。
 14年度には、消賛税率の5%から8%への引き上げによって実質GDPは一気に0・4%減と沈み込みます。15年度には、1・7%増と再びプラスとなりますが、その原因は前年度のマイナスの反動と財政支出、輸出増に支えられたものでしかありませんでした。
 16年度にはプラスとはいえ0・8%増に減速し、しかもこれは研究開発費を設備投資項目に組み込んでかさ上げされたプラス成長でした。翌17年度には、1・8%増となりますがこれも財政支出、東京オリンピック、さらには輸出といういわば外的な要因によるプラスでしかなく、低金利政策にもかかわらず住宅投資は落ち込みました。
 18年度には、わずか0・2%増に減速し、19年度には消費税率の引き上げもあって0・7%減とついにマイナスに落ち込みました。
このように、日本経済はアベノミクスのもとで自立的な回復を遂げることはできず低迷し続けてきました。この間、他の先進国がほぼ2%台の成長を続けているのとは対照的に、独り日本だけが取り残された形になっています。
◆「日本化現象」に
 日本経済の低迷を裏付けるように、国民生活実態を示す雇用、実質賃金、消費支出、消費者物価も低迷し続けました。失業率は2%台で推移したものの非正規労働者が就業者の4割近くを占める状態が続き、実質賃金は、12年度から15年度取り残された日本まで4年連続で前年度比マイナスを記録した後、16年度の0・5%増、18年度の横ばいを除き20年度まですべてマイナスとなりました。
 家計の実質消費支出も、13年度の0・4%増、17年度の0・7%増を除き20年度まですべてマイナスとなっています。消費者物価も、消費税率引き上げの影響で14年度に2・9%増となった以外はすべて1%に届かない低水準で推移し、16年度には0・1%減とマイナスに落ち込みました。当然、雇用環境に影響を与える設備投資も低迷し続けました。経済停滞は税収減を通じて国の累積債務を増やし続け、将来の国民負担増につながっていきます。
 各国の金融担当者は、このような日本経済の長期停滞現象を「日本化現象」と表現しました。低成長、低金利、低物価が長く続き、そこから抜け出せない日本経済のようにはなりたくないというわけです。(つづく)

【赤旗】7月21日 検証 アベノミクス マク口政策(下)―政策 的外れで矛盾(東京工科大学名誉教授工藤昌宏さん)
 種々の経済指標を見る限り、アベノミクスは日本経済の再生に失敗したというほかはありません。原因は、的外れで矛盾した経済政策をとり続けたことによります。そして、その根底には誤った経済認識があるのです。
◆失敗七つの原因
 失敗の原因の第1は、経済実態に対する誤った認識です。日本経済が停滞しているのは世の中にお金が流れていないせいだと考え、そこで思考を停止してしまったこと、つまり、なぜ世の中にお金が流れないかに考えがいたらなかったことです。統計数値を素直に見れば、日本経済停滞の原因が国民生活の劣化による需要不足にあることは明白であるにもかかわらず、それを看過したことです。
 失敗の第2は、誤った認識のもと、世の中にお金を流せば停滞から抜け出せるという短絡的な思考に陥ったことです。しかし、国民生活劣化によってお金の流れる道筋が途切れているもとでは、政策は空回りするだけで、効果は期待できません。失敗の第3は、世の中にお金を流し込めば物価がつり上がり、それを起点に経済は回復するという誤ったシナリオを描いたことです。
 物価上昇による経済回復の道筋は、①国民に経済が回復しているとの錯覚をもたらし消費を拡大②企業収益が増大し設備投資を刺激③資産(土地や株)インフレを引き起こし投資を刺激④実質金利(名目金利から物価上昇率を差し引いた値)を引き下げ投資を刺激―というものです。しかし、お金を流し込んでも物価が上昇するわけでもなく、物価が上昇しても投資や雇用につながるわけでもありません。
 また、経済停滞下で物価をつり上げれば、消費をさらに押さえつけることになります。結局、物価はもとより投資も雇用も低迷し続けました。
 失敗の第4は、金融政策の効果に対する過信と執着です。つまり、金融政策を駆使すれば世の中にお金が流れ込み、経済は回復するという思い込みです。しかし、もともと金融政策の経済に及ぼす影響は限定的であり、また金融を緩和すればお金が流れるわけではなく、しかも金融政策に雇用や賃金を引き上げる力はありません。
 失敗の第5は、矛盾した経済政策です。それを象徴するのは、経済停滞下で行われた2014年、19年の2度にわたる消費税率の引き上げです。これによって、日本経済は一気に停滞に追い込まれてしまいました。
失敗の第6は、株価や円相場の操作に固執したことです。これによって、株価や円相場は実態から乖離(かいり)し、経済実態を覆い隠してしまいました。
 失敗の第7は、18年1月に発覚した実質賃金のかさ上げ偽装に象徴される統計偽装を繰り返したことです。これは、国民を欺き、実態をでまかし、問題を先送りし、問題を深刻化させる許されざる行為です。
◆国民生活の軽視
 アベノミクスはさまざまな弊害ももたらしました。日銀による大量国債購入の結果、6月には日銀の長期国債保有額は発行残高の50%を超えました。これは、国の財政が日銀頼みになっていること、国の財政規律が緩んでいること、そして、それは将来の国民負担増のリスクを高めることを意味します。
 また、日銀による長短金利を力ずくで抑え込むやり方は、金利変動を通じて資金の流れが調整される本来の金融市場の機能を破壊しました。さらに、日銀による株価操作は、経済を映し出す鏡としての株式市況の機能も奪ってしまいました。
 肝心の雇用、所得問題を放置し、誤った認識、誤った経済政策をとり続け、さらに操作や偽装を繰り返した結果、日本経済は構造的な停滞に陥りました。その結果、アベノミクスは最後には身動きが取れない状況に陥り、自ら幕を引くことになりました。失政の背景には、大企業優遇主義と表裏一体となった国民生活軽視の政治姿勢が横たわっているのです。(この項おわり)

【赤旗】7月22日 検証 アベノミクス 消費税(上)―法人税減税など穴埋め (元立正大学教授・税理士浦野広明さん)
 安倍晋三元首相のアベノミクス(経済政策)は、消費者物価を2%上げて円安と株高を実現すれば、雇用や消費も増え、経済再生が実現するというものでした。結果は、大企業の内部留保が増え、雇用は不安定になり、賃金も上がらず、消費も増えないという失政でした。
◆目的税ではない
 NHKの「日曜討論」(6月19日放送)で野党から消費税減税要求を受けた自民党の高市早苗政調会長は、「消費税は法律で社会保障に使途が「限定されている」と発言しました。高市氏の発言は消費税法1 条2項を根拠としています。
 同条項は消費税の使途について「年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する経費に充てるものとする」と定めています。
 しかし、法律で使途を規定しても、消費税は特定の経費に充てる目的で課す目的税ではありません。使途を特定せず一般経費に充てる目的で課す普通税です。高市氏は全くの的はずれの発言をしたのです。
 1989年の消費税導入から34年間で国と地方を合わせた消費税総額は476兆円です。一方で国・地方の法人税(法人3税)は324兆円、所得税・住民税は289兆円も減収しました。これを見れば消費税収が法人課税や所得税・住民税の穴埋めに使われたのは明白です。
 日本経済を決定的に悪化させたのは、安倍政権下における2014年4月と19年10月の2度にわたる消費税の増税です。大企業や大資産家向け
の減税などの穴埋めのための増税は、もともと弱かった国民の消費を痛めつけ、中小零細企業を傷つけました。家計の消費支出は増穆削に比べ、大幅に減少しています。
◆社会保障費削り
 22年度一般会計予算(当初)の規模は107兆5964億円と過去最大です。税収は65兆2350億円、国債費(国の借金の元利合計額)を除く歳出は83兆2571億円で、歳出の78%しか税収でまかなえていません。税収不足補充と過去最高の軍事費5兆4005億円(デジタル庁の予算に計上される318億円を含む)のために、税収の56%を超える36兆9260億円の国債を発行するのです。借金があれば当然元金と利息の支払いが生じます。増大する軍事費と国債費が予算を圧迫し、社会保障費を削っているのです。
 国の財政に関する基本法である財政法は、ばく大な軍事費を返す当てのない国債で賄い、財政も経済も破綻させた太平洋戦争前の経験から、国債発行に歯止めをかけています。
 岸田文雄首相は、骨太方針で「大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略(アベノミクスの3本の矢)」を「堅持」すると明記しました。アベノミクスの継続を宣言したのです。(つづく)

【赤旗】7月23日 検証 アベノミクス 消費税(下)―減税提案の早期実現へ (元立正大学教授・税理士浦野広明さん)
 深刻な物価高騰から生活を守るためには、新自由主義がもたらした「冷たく弱い経済」から「やさしく強い経済への抜本的転換が必要です。
◆米国の世界戦略
 2022年度予算が巨額の国債の元利支払いと軍事費突出という2大聖域を中心に組まれている背景には、米国の世界戦略に組み込まれた日本の軍事的経済的分担の拡大があります。
 軍事費の拡大を促す軍事同盟は相手方(仮想敵)に対する不信感で成り立っています。相互に武力をちらつかせながらでは「対話」は成り立ちません。「核の傘で平和が守られてきた」のではなく、「核の危険にもかかわらず非武装平和の憲法で平和が守られてきた」のです。安易な軍拡論議に乗らない、平和のための共同体構築が求められます。
 いま求められているのは、実体経済を底上げする政治、消費税5%減税、最低賃金の1500円への引き上げです。
 消費税は、消費者が負担することとされていますが、実際に納税するのは事業者です。納税額の計算は「売り上げ時に受け取ったとされる消費税」から「仕入れ時に支払ったとされる消費税」を差し引いて算出します。税率10%であれば「売り上げ(本体価格)―仕入れ(本体価格)」×10%となります。
 売り上げから仕入れを引いた金額は通常、付加価値とよばれます。付加価値は賃金と利益から構成されています。つまり、消費税は「賃金+利益」にかかる税ということもできるのです。
◆賃金抑える圧力
 企業は「賃金+利益」を少なくすれば、消費税負担を減らすことができることになります。利益を減らすわけにはいきませんから、賃金を減らす努力をします。とはいっても企業経営に労働力はかかせません。そこで企業はリストラなどで直接雇用する労働者を減らし、子会社からの労働力受け入れや派遣事業など会社外の労働力(外注費)を増やします。賃金とちがい外注費は、売り上げ時に受け取ったとされる消費税から差し引くことのできる「課税仕入れ」として扱われます。その結果、納めなければならない消費税額が「外注費×10%」分安くなります。
 消費税は労働者に対し、消費者としての税負担増にとどまらず、リストラや非正規雇用の増加という雇用の不安定化、賃金相場の下落も押し付けるのです。
 企業内で減った人件費が、下請け企業や派遺企業で雇用増になってプラス・マイナスはゼロとなるのではないかと指摘する論者がいます。しかし現実には、低賃金と劣悪な労働条件で働く下請けや派遣企業労働者が増えて、労働者全体の賃金や労働条件を悪化させることにつながるのです。
 消費税が労働者、中小企業、庶民・消費者を苦しめることは明らかです。さらにインボイス制度が導入されれば、消費税負担に加え、インボイスの7年間の保存義務などの事務負担が発生するなど、フリーランスや個人事業主を苦しめるものです。
 日本共産党は、消費税を緊急に5%に減税し、インボイスを中止することなど具体的な提案をしています。これらの提案は選挙中の「公約」にとどめず、実現を早めなければなりません。選挙を「その時の運動」にとどめないためには、政治を日常不断の生活の中に入れることこそが大切です。
 政治と市民生活を結びつけるのは、選挙のときだけではありません。政党の日常の活動と責任であり、その政党活動の受け皿となり、政党活動のすそ野を支えるのは、主体的な市民運動の政治的力です。その両輪がそろうことによって初めて世の中が変わることを痛感しています。(この項おわり)