家計直撃 物価高騰①、②。③(「赤旗」)、世界の億万長者、コロナ禍で573人増加(CNN)
2022年5月28日
【赤旗】5月26日 家計直撃 物価高騰①―食料値上げ年3.8万円
物価高騰が続いています。総務省が発表した4月の消費者物価指数は生鮮食品を除く総合で前年同月比2・1%の上昇でした。消費税増税を要因とする物価高騰を除けば、2008年9月以来の上昇率2%超えでした。生活実感に近い持ち家の帰属家賃を除く総合では同3%増です。賃金が上がらないもとでの物価高騰に業者も消費者も悲鳴を上げています。
◆朝食に異変
物価高騰は朝食に顕著な影響を与えています。第一生命経済研究所の熊野英生主席エコノミストは一般的な朝食を構成するパン、加工肉、タマゴ、コーヒーなど10品目の価格変動を集計し、「朝食価格指数」と名付けています。朝食価格指数は1月の前年同月比2・4%増から、5 月は同5・2%増まで上昇。年間で5000円もの負担増になると試算しています。
熊野氏は20日発表のリポートで朝食や外食を含む食料費の指数が前年同月比4・0%増となっていることを指摘。年間で「3・8万円の増加になる計算だ」「2022年のエンゲル係数は物価要因だけで過去最高になりそつだ」と危倶します。
◆品目が増加
4月の消費者物価指数の特徴のーつは価格上昇した品目が増加していることです。消費者物価指数の調査対象は、価格変動の大きい生鮮食品を除くと522品目あります。そのうち3分の2を超える351品目がこの4月、前年同月に比べ値上がりしました。3月の値上がりは320品目だったので価格上昇品目が1割増えたことになります。
値上げが目立つのは食料品です。とりわけ生鮮食品の値上がりが激しく、タマネギは同98・2%増、マグロ同17・2%増、リンゴ同35・9%増などとなっています。また、これまで比較的値上げが抑えられてきた外食も同1・8%増。食料品値上げは生活を直撃します。
◆悩ましいが
横浜市内の居酒屋で料理人を務める男性は「今年1月にメニューを値上げしました。それでも小麦粉やバター、ハムなどの値上げが続いていて苦しい」と話します。
この男性のお店はお手頃価格のランチが人気です。男性は「お客さんの懐具合を考えると、短期間に2 度目の値上げはしづらい。いくつかの店を回って安く仕入れる努力をしていますが、料理の質は落とせない。悩ましいところです」と苦しい胸の内を語ります。(つづく)(3回連載です)
【赤旗】5月27日 家計直撃 物価高騰②
生活必需品の価格は2%を大きく超えて上昇しています。4月の全国消費者物価指数の上昇率(前年同月比)を品目ごとに詳しくみてみましょう。
◆3度値上げ
食料品は4%値上がりしています。
なかでも小麦粉は、北米生産地での不作やロシアのウクライナ侵略の影響で、15・2%高くなりました。小麦粉を原料とする食パン(8・9%増)やスパゲティ(11・3%増)も値上がりしています。
日清製粉ウェルナ(旧日清フーズ)は、2021年中旬に約259%、22年初旬に約359%、小麦粉製品やパスタ製品
を値上げしました。さらに今後、758月に約258%、3度目の値上げを行うと発表しています。輸入小麦の政府売り
渡し価格が4月に値上げされたほか、▽海上運賃の上昇▽円安▽原油高▽動力燃料費の高騰ー続き、「企業努力だけでは吸収できなくなった」といいます。
食用油は36・5%も値上がりしています。原料となる大豆・菜種・パーム油などの価格が世界的な需要の増加や天候不順の影響で高騰したためです。
生鮮野菜は天候不良などの影響で12・2%高くなりました。タマネギ(98・2%増)、キャベツ(49%増)、ハクサイ(45・6%増)など、日常の食卓になじみ深い野菜の価格が高騰しています。
ブリ(15%増)、サケ(13%増)などの生鮮魚介も、燃料費や輸送コストの上昇により、12・1%値上がりしています。
◆家電にまで
食料品だけではありません。家電製品の価格も2%を超えて上がっています。
電気冷蔵庫(16%増)などの家事用耐久財は5・9%、カメラ(13・5%増)などの教養娯楽用耐久財は4・5%、照明器具(11・3%増)などの室内装備品は3%値上がりしました。
パナソニックは4月に蛍光灯の価格を約30%引き上げました。「金属製材料などの原材料価格、物流コストや海外での人件費の上昇」が続いているためだと説明しています。
日々の生活に欠かせない電気(21%増)、ガス(17・5%増)、ガソリン(15・7%増)の価格高騰は引き続き深刻です。
◆何食べれば
東京都大田区で活動する「消費税をなくす六郷の会」は毎月1回の宣伝を続けています。「マイクで物価高を話題にすると街の注目が集まる」と、事務局長の向井初江さんは話します。
「大手スーパー前で対話したときのことです。買い物に来たという方から『一体、何を食べたらいいのでしょう』と訴えられました。その方の息子さんが体を壊して、サバを食べられなくなったそうなのです。『質のいいタンパクを安価な魚で取るのが難しくなった』と困っていました。家計の苦しさが伝わってきました」(つづく)
【赤旗】5月28日 家計直撃 物価高騰③
物価の上昇は終わっていません。
輸入物価指数は4月に前年同月比44・6%も上昇しました。世界的な景気回復やロシアのウクライナ侵略の影響で、石油・石炭・天然ガス(前年同月比112・7%上昇)や木材・木製品・林産物(同61・8%上昇)が局騰したためです。
一方、企業間の取引価格を示す国内企業物価指数は4月に前年同月比10%の上昇でした。今後、産業の「川上」から「川下」へ値上げが波及し、消費者物価はさらに高騰する恐れがあります。
食品主要メーカ1105社の価格改定計画に関する帝国データバンクの調査(21日発表)によると、6月以降に食品3615 品目の値上げが予定されています。今年の値上げ計画の約4 割が6月以降に実施される見通しです。帝国データは「今年の夏は『値上げの夏』となりそうだ」と指摘しています。
5月までに値上げされるのは4770品目です。主要105 社による今年の食品値上げは合計8385品目、平均値上げ率は12%に達します。
◆金利差響く
輸入物価の高騰に拍車をかけているのが日銀の異次元金融緩和です。物価抑制のため利上げに踏み切った米国と、金利抑制政策を続ける日本の金利差が拡大し、金利の低い円が売られて急激な円安となっています。
4月の消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)は前年同月比2・1%上がり、日銀が目標とする2 %上昇を超えました。しかし、黒田東彦日銀総裁は「強力な金融緩和を粘り強く続けていく」(20日の記者会見)姿勢を変えません。「輸入物価の上昇」が「経済に対する下押し圧力」となり、「2023年度には1・1%程度に(物価)上昇率が低下」するためだと弁明します。
黒田氏は金融緩和を続けて「経済の回復をしっかりサポート」するのだといいますが、その金融緩和が円安による物価上昇を招いて経済を下押ししているのです。日銀は堂々巡りの悪循環にはまり込んでいます。
◆打撃ばかり
今年度と比べて23年度の上昇率が低下するといっても、物価自体は持続的に上がります。帝国データは、▽世界的な食品相場の上昇▽原油価格の高騰▽物流費や原材料費の値上がり▽急激な円安ーど「全方位でコスト増加が続いた」ため、「食料品の価格高騰は中長期的に続く」と予測します。現在の物価高騰は、賃上げによる需要増加が
原因ではなく、輸入物資のコスト上昇が原因なので、家計には打撃ばかりをもたらしています。
問題は、雇用破壊・社会保障改悪・消費税増税の新自由主義政策によって国民の可処分所得が減らされ、日本が長期の消費不況に陥ったことです。個人消費が低迷する下で「強力な金融緩和」を続けても、お金は実体経済に回らず、株式・不動産バブルを膨らませただけでした。白銀は536兆円もの国債を抱え込み、「出口」がみえません。岸田文雄政権も継承するアベノミクス(安倍晋三政権の経済政策)の大失敗が、不況下の物価高騰となって家計を直撃しているのです。
大企業の内部留保に課税して巾小一企業を支援しつつ賃金を大幅に引き上げ、消費税率を5%に減税するなど、国民の可処分所得を増やす政治に転換し、物価高騰の打撃を和らげながら日本経済を立て直す必要があります。(おわり)(清水渡、杉本恒如が担当しました)
【CNN Business】5月23日 世界の億万長者、コロナ禍で573人増加 国際NGO報告書
国際NGOのオックスファムは22日、保有資産10億㌦(約1270億円)を超える世界の億万長者は、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)前に比べて573人増えたとする報告書を発表した。
オックスファムはこの日にスイスで開幕した世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)に合わせ、米経済誌フォーブスのデータを基に経済格差を分析した。
パンデミックの2年間で、株高やそれを支えた政府の財政援助を背景に、億万長者の資産の合計額は42%増、金額にして3.8兆ドル増え、12.7兆ドルに達した。
オックスファムの格差対策部門を率いるマックス・ローソン氏によると、合計額はパンデミックの1年目で急増し、高止まりした後、わずかに減少している。
一方、オックスファムが先日発表した報告書によると、世界で今年、新たに2億6300万人が極度の貧困に追い込まれると推定される。
ローソン氏は「歴史上、貧困と富が同時にこれほど急拡大した例は見たことがない」と指摘する。
オックスファムによれば、消費者が燃料、食料価格の上昇に苦しむ一方で、売り手の企業やその経営者は価格上昇で利益を得ている。
食品、農業分野の億万長者はこの2年間62人増え、インフレ調整後の資産合計額は45%、3820億㌦も増えた。
石油、ガス、石炭の分野では合計額が24%、530億㌦の伸びを示した。
製薬分野では40人の億万長者が新たに誕生した。
テクノロジー分野の億万長者は、世界の富豪上位10人のうち7人を占める。資産合計額は2年間で4360億㌦増え、9340億㌦に上っている。
オックスファムは格差対策として、富裕層や大企業への課税を主張している。