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もろい日本経済(3回連載―「赤旗」)
2022年4月23日
【赤旗】4月21日 もろい日本経済(上)
 インフレ・物価高が世界を襲う中、日本経済の脆弱(ぜいじゃく)性が際立っています。その現状と原因について、群馬大学の山田博文名誉教授に寄稿してもらいました。

 最近の消費者物価は、アメリカで40年ぶりの前年比8・5%の上昇、ユーロ圏諸国でも過去最高の7・5%上昇です。欧米の消費者物価は従来152%台の上昇で推移していましたから、現在は深刻なインフレです。
 国連食糧農業機関(FAO)によれば、世界の食料価格指数(2014~16年)は3月に過去最高の159・3まで上昇しました。各国の国民生活は食料高騰に直撃されています。
 日本は、原油・ガス・原材料・食料の多くを輸入に依存しているので、高騰した輸入物価は企業物価指数を押し上げます。2月には前年同月比で9・3%上昇し、41年ぶりの高・水準となりました。
 この高騰した企業物価は消費者物価に転嫁され、店頭の食轡m価格の高騰を招いています。食卓に上がるパン7・2%、マーガリン9・5%、コーヒー・ココア5・6%などと高騰しています。
◆ダブルパンチ
 世界中がインフレ・物価高に襲われる背景には、以下の事情があるようです。
 第1に、リーマン・ショック(世界金融恐慌)や新型コロナウイルス禍に直面した各国政府と中央銀行が歴史的に例をみないほど拡張した財政金融政策を行ってきたことです。各国の財政支出と中央銀行の資金供給量は世界の実体経済(国内総生産=GDP)の成長を大きく上回りました。
 不況対策・生活支援の財政支出は必要なことです。しかし増大した中央銀行の資金供給は、民間銀行の企業・家計・投資家などへの貸し出し原資を増やすので、実体経済が必要とする通貨量を超えて過大な通貨が流通し、通貨価値は下落します。そのため、すべての商品価格が上昇する全般的な物価高=インフレが発生します。
 中央銀行の資金供給量がどれだけ増大したかは、中央銀行の資産(保有国債や貸出金など)の増大となって表示されます。リーマン・ショック以降、主要中央銀行の資産は激増しました。日銀で約6倍、米連邦準備制度理事会(FRB)で約10倍、欧州中央銀行(ECB)で約6倍に増えました。しかし世界経済(GDP)の規模は1・6倍にしか増えていません。
 各国中央銀行から過剰に供給された資金は、民間金融機関を通じて世界各国の各種商品、株式などの金融資産、不動産などに買い向かい、インフレやバプルを起こしました。
 第2に、ロックダウン(都市封鎖)など、新型コロナ対策としての人と物の移動制限は、グローバル化したサプライチェーン(供給網)を切断し、商品の供給量が減りました。しかし、需要サイドは各国の財政金融膨張で大きくなっていますから、需要が供給を上回り、その分だけ商品価格は上昇しました。
 この価格上昇は、通貨価値の下落によるインフレとは区別されます。国民生活からすれば、インフレに加えて需給のアンバランスによる価格上昇というダブルパンチの物価高に襲われました。
◆生命維持深刻
 第3に、今年2月末に勃発したロシア・ウクライナ戦争は、世界の原油・天然ガス・各種資源大国の対外輸出減と供給減を招き、価格が高騰しました。世界中の全産業の基幹エネルギー価格が高騰したので、この川上の価格高騰が川中の企業物価を押し上げ、さらに川下の消費著物価に転嫁され、世界的な物価高を誘発しました。
 ウクライナとロシアの2カ国は世界の穀物取引の4分の1を占めます。国連は、世界が食料難に陥り、すでに過去最高値にある食料品価格が今後さらに22%上昇する恐れがあると推測しています。穀物は生命維持のための代表的な食料です。各国の国民生活、とくに食料自給率が低く輸入に依存する日本の国民生活にとって、今後の物価高の影響は深刻化することが予想されます。(つづく)(3 回連載です)

【赤旗】4月22日(中)
 インフレ・物価高に襲われた各国中央銀行は、政策金利を引き上げ、量的緩和(QE) を縮小し、金融緩和から引き締め政策に転換しました。中央銀行の本来の役割はインフレを防止する「物価の番人」だからです。
 アメリカの連邦準備制度理妻本(FRB) は、政策金利を3月に0・25%引き上げました。今後連続利上げを予定し、来年半ばには3・5%超の水準に達しそうです。また、8兆9000億が(約1100兆円)に膨らんだ資産を来年末までに約2兆㌦圧縮する予定です。
 イギリスの中央銀行(BOE)は昨年末から連続して利上げし、現在0・75%になりました。欧州中央銀行(ECB)も利上げを予定しています。
 しかし、この肝心な時に、日銀は「物価の番人」として身動きできない事態に追い込まれています。アベノミクス(安倍晋三政権の経済政策)の悲惨な末路です。
◆金利格差拡大
 日銀はマイナス0・1%の政策金利に固執し、世界各国との金利格差は拡大する一方です。日米の長期金利格差は2%超に拡大しました。日銀が長期金利を目標値の0・25%以下に抑え込むために、長期国債を利回り0・25%の指し値オぺで無制限に買いまくっているからです。利益を求める世界の投資マネーは金利の高い金融商品に向かうので、日本からの資本逃避が進み、円安が加速しました。日本の対外金融資産残高は外貨準備や直接投資分を除いても796兆円に達しています。4月に入り、20年ぶりに1㌦=129円台の円安になりました。経済界からも、現在の為替水準は「日本が独り負けしていることの象徴」で、「大変大きな問題」との声が上がっています。資源・エネルギーの輸入コストが高騰し、企業収益に打撃を与えているからです。
ただ、大企業は一時的に受けるこの打撃を商品価格に転嫁することで軽減しています。
 円安が日本経済を活性化させる時代は去りました。かつて対外輸出で貿易黒字を稼ぎ出していた大企業の多くが海外に生産拠点を移転したからです。貿易黒字大国だった日本は貿易赤字国に転落しています。
◆円安で生活苦
 円安はむしろ、国民生活を苦しめる事態を引き起こしています。原油・天然ガス・原材料・食料を海外に依存する日本の輸入物価を高騰させ、高騰した輸入物価が企業物価を押し上げ、それが一番川下の消費者物価に転嫁されるからです。円安が進めば進むほど、国内の物価が上がり、生活は苦しくなる悪循環に陥っています。
 こんな状況にもかかわらず、日銀が身動きできないのは、アベノクスの負の遺産に縛られているからです。異常な低金利水準を維持しないと、財政破綻や株式バブルの崩壊を引き起こし、場合によっては日本発の大恐慌が発生するからです。
 安倍元首相の強力な推薦で総裁になり、アベノミクスの「第1の矢」異次元金融緩和政策を担った黒田東彦日銀総裁が、目前のインフレ・物価高や円安間題よりも重視しているのは、以下の事柄だと考えられます。
 第1に、国債金利の低位固定化(国債の加重平均金利は0・83%)を継続し、日本政府の財政破綻を先延ばしすることです。日銀が異次元金融緩和で国債を買いまくり、国債は大増発されました。国債発行残高は約1000兆円に達し、日本は世界トップの「政府債務大国」となっています。もし国債金利が上昇するなら、政府の国債利払い費用は数兆円規模で増え、財政危機が深刻化する恐れがあります。
 第2に、バブルの夢を見続けることです。異次元金融緩和政策は国債・株式などの金融資産バプルを起こしました。大企業・富裕層・内外投資家に巨額の利益をもたらし、経済界から支持を集めました。この夢から覚めたくないのでしょう。国民には格差拡大の悪夢でしかありません。(つづく)

【赤旗】4月23日(下)
 「物価の番人」の日銀が身動きできないとなれば、物価は上昇し続け、国民生活はいっそつ深刻化します。新型コロナウイルス禍やロシア・ウクライナ戦争など、危機的事態に出くわすことで、それまで隠されていた矛盾が表面化しました。
 証明されたのは、新自由主義政策と異次元金融緩和政策にまい進したアベノミクスが貧富の格差を拡大し、政府債務を膨張させ、日本経済そのものを脆弱(ぜいじゃく)化させたことです。アベノミクスを進めた安倍晋三政権と、それを継承した菅義偉・岸田文雄政権の資任は重大です。
◆世界で位置低下
 かつて「1億総中流」や「ジャパン・アズ・ナンバーワン」などともてはやされた昔日の日本は、もはや見る影もありません。世界経済における日本の位置は驚くほど低下しています。
 日本経済(国内総生産=GDP)が世界経済に占める割合は、1994年の17・8%をピークに、2021年には5・3%まで落ち込んでしまいました。為替相場やインフレを排除した購買力平価で比較しても、日本のGDP (5・6兆㌦)は、中国(27・0兆㌦)、アメリカ(22・9兆㌦ザ)、インド(10・1兆㌦)に次ぐ第4位です。
 日本経済の脆弱化を加速したのは、大資本の目先の利益を優先し、国内の設備投資を怠り、賃金を削減する新自由主義を推進し、さらに異次元金融緩和で資産バプルと政府債務の膨張を招いたアベノミクスです。日本はもはや各国から注目されなくなり、海外メディアの日本記事は激減しました。日本に代わって注目されるようになったのは、経済大国に成長した中国やインドです。
 21世紀に入り、先進国が高い経済成長率を誇る時代は終わりました。そもそもゼロ金利とは「貨幣が資本として増殖しない=経済成長しない」状態です。2000年から20年までの実質経済成長率平均は、新興国のトップランナー中国の8・6%に対して、アメリカ1・8%、経済協力開発機構(OECD)加盟国平均1・6%、そして日本は0・6%です。
◆対外関係見直し
 この事実と歴史的傾向を踏まえるなら、沈む日本からの脱却はむやみに「成長」に走ることではなく、ましてアメリカに代わって日本の最大貿易相手国になった中国を仮想敵国にして軍備を増強することではありません。やるべきことは、新自由主義政策とアベノミクスからの大転換であり、塗り変わった世界経済地図にふさわしい対外関係の見直しです。
 第1に、新自由主義政策とアベノミクスによって失った「99%の人々の経済利益」の回復です。なによりも消費税率5%への減税が必要です。さらに賃金を上げ、各種保険料を下げて、国民の懐を温めることです。これは消費不況からの脱出に直結します。また、社会保障・教育関連政策を充実させ、明日への安心と夢を与えることです。その財源は大資本や富裕層などの応能負担で調達すべきです。
 第2に、目下のインフレ・物価高から国民生活を守ることです。国民生活を破壊する消費者物価高騰を回避するためには、円安で高騰した輸入物価を安易に消費者切価に転嫁させない大企業の努力が求められます。その財源は十分存在します。非常事態の今こそ、大企業がため込んできた466兆円の内部留保金を吐き出してもらうことです。そうすれば、消費署物価を低位安定化できます。
 第3に、世界最大の経済圏に成長したアジアに目を向け、中国、韓国、東南アジア諸国連合(ASEAN)との共存共栄を実現し、対米従属的な対外関係から脱却することです。
 問題は、このような政策に向かわせる政府を実現できるかどうかにかかっている、と言えるでしょう。(おわり)