米富裕層・大企業に課税―2023会計年度「予算教書」、年金減額中止・消費税減税こそ(いずれも「赤旗」3月30日)
2022年4月2日
【赤旗】3月30日 米富裕層・大企業に課税―2023会計年度「予算教書」
【ワシントン止雄藤誠二】バイデン米政権は28日、2023会計年度(22年10月~23年9月)の「予算教書」を発表しました。規模は5兆7900億㌦(約724兆円)。富裕層・大企業への課税を強める内容となっています。
――大統領「税率公平ではない」
バイデン大統領は28日の会見で、「この数年、国民は困難な状況にあり、限界に達していた。しかし、億万長者や大企業はかつてなく裕福になった」と指摘。億万長者の所得税率が平均8%なのに対し、「消防士や教師はその倍以上の税率だ。公平ではない」と述べ、富裕層への増税の理由を説明しました。
予算教書によると、資産1億㌦(125億円)以上の富裕層(米国世帯の0・01%)に、少なくとも税率20%の「最低所得税」を新設。これには投資の含み益も含まれ、資産を増やした富裕層の「税逃れ」を防ぎます。この課税強化により、10年間で3600億㌦の財政赤字を減らすことが可能となります。法人税は28%に引き上げます。
今後10年で1兆㌦(約125兆円)以上の財政赤字削減をめざします。22年は前年から1兆3000億㌦、財政赤字を減らす見通しです。
処方箋薬のコスト引き下げ、低価格の住宅供給、銃規制強化、警察・犯罪対策強化等へも予算を増やす内容です。
◆国防予算前年比45%増
一方、国防総省予算は7730億㌦。核兵器を管轄するエネルギー省など他省庁の予算とあわせた国防関連予算の総額は8130億㌦となり、前年比4・5%増です。
バイデン氏は「米国の歴史上、国家安全保障で最大規模の投資だ。われわれの軍隊が、世界で最も準備され、訓練され、装備が充実していることを維持するためのものだ」と軍事費増を正当化しました。
ロシアによるウクライナ侵略に対応するために、北大西洋条約機構(NATO)、欧州抑止イニシアチブ(EDI) に69億㌦が充てられました。バイデン氏は「プーチンのウクライナ侵略に対応することを強いられた」として、国防費増加はウクライナ情勢が影響していると指摘しました。
【赤旗】3月30日<解説>年金減額中止・消費税減税こそ
長引くコロナ禍に物価の高騰まで重なったことで追加の経済対策が必要であることは誰しもが認めるところですが、事態の深刻さに鑑みれば、「予備費頼み」ではなく、改めて補正予算を組むことが必要です。
そもそも22日に成立した22年度予算自体がコロナ禍から国民の命と暮らしを守るには極めて不十分で、非正規労働者などを広く対象にした困窮者への給付金や事業復活支援金の拡充、消費税5%への引き下げなどが切実に求められていました。
「第6波の出口がはっきり見えてきた」という首相の言葉とは裏腹に感染者数の減少鈍化や一部地域での増加が見られる中で物価の高騰まで進んでいるといっ深刻な事態のもとでの経済対策としては、消費に対する影響を緩和するためにも、すべての値段を一挙に引き下げていく消費税減税が最も有効です。政府は消費税減税拒否に固執する姿勢をいまこそ転換すべきです。
総合緊急対策では、与党が提案する年金生活者への5000円支給案への扱いも焦点となります。
年金生活者の暮らしを本当に心配するなら、物価上昇のなかでも年金額が減る仕組みそのものを見直すべきです。4月からの年金削減自体を中止し、減らない年金への改革に踏み出すべきです。(藤原直)