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経済安保の深層安①、②、③(「赤旗」)
2022年2月19日
【赤旗】2月17日 経済安保の深層安①―「有事」に「経済力」動員
 経済安全保障法制づくりについて、岸田文雄首相は、「待ったなしの課題」と国会への提出と、その成立を急いでいます。(金子豊弘)

 経済安全保障法制づくりの推進力となってきたのが、2020年6月4日に自民党政務調査会の中に設置された政調会長直属の新国際秩序創造戦略本部です。本部長は当時政調会長だった岸田氏、座長には甘利明衆院議員が就任しました。同本部は21年12月、「経済安全保障対策本部」に名称が変更され、高市早苗政調会長が本部長に就任しています。
◆新たな国際秩序
 党政調会と新国際秩序創造戦略本部は20年12月16日に、「『経済安全保障戦略』の策定に向けて」と題した提言をまとめました。
 この提言は、冒頭で「経済力は国力の根幹」と強調し、「経済」と「安全保障」を一体的にとらえる考え方の必要性を前面に押し出しました。そして提言は、この「経済力」を「国家間関係の基盤である」と位置付けたのです。
 「国際関係が安定している状況」では、このことが「意識されにくい」ものの、「国際社会が大きな変動を迎え、既存の秩序が揺らぎを見せ始め」た状況では、「注目を集めることになる」としました。米中対立激化の中で日本の「経済力」を軍事・外交分野の「基盤」として動員する意図がうかがえます。
 提言には、次のようなことも指摘しています。国連などの場で「経済的手段が『武器』として使われることもあった」ものの、これは、「既存の秩序やルールに違反した主体に対する制裁措置」であり、「平和のための『武器』」だと断じます。
 しかし、今日においては、「経済的手段をもって自国の意向を他国に押しつけ」「自国に有利な形で既存の国際秩序を作り替えようとする国も現れ」たため、「激動する国際社会の中でわが国の国力を高めると共に、国益にかなう新たな国際秩序の形成」の必要性があると説きます。
 そして、「平時」だけでなく、「有事においても」国家の運営ができるように「国家としての方針と時間軸を示す」ためのものが、この提言であると強調しました。つまり、自民党がいう「経済安全保障」は「有事」をも想定した戦略だというのです。
◆対米関係が基軸
 中国の軍事的経済的台頭によって米国が主導する国際的な安全保障体制が揺らぎ始めています。提言では、中国への対抗を念頭においた米国の経済安全保障戦略の取り組みについて触れ、「(米国の)動向は、わが国にとっても示唆に富むものである。米国はわが国の同盟国であり、対米関係はわが国の外交及び安全保障政策の基軸である」「同盟国である米国との意思疎通と適切な連携を強化し、共に国際的連携を主導していく必要がある」としました。
 提言は、このように米国と歩調を合わせて日本の「経済安全保障」体制づくりを進めることを強調し、22年の通常国会において「『経済安全保障一括推進法(仮称)』の制定を目指す」ことを要求しました。
 岸田政権の下で設置された「経済安全保障推進会議」の4日の会合で岸田首相は、「経済安全保障は、21世紀型のグローバル・ルールの中核となるものです」と強調。岸田氏自身、党政調会長として深く関わってきた経済安全保障法制づくり。2年前に示された自民党の提言は岸田氏が首相の座について、いよいよ実行されようとしています。(つづく)

【赤旗】2月18日 経済安保の深層②―米中対立の影響
 自民党政務調査会と新国際秩序創造戦略本部が「『経済安全保障戦略』の策定に向けて」の提言を発表したのは、2020年12月16日でした。自民党内では、この提言に先立って、経済安保について議論する会合が開かれていました。その会合は、ルール形成戦略議員連盟(ルール議連=甘利明会長)。自民党の衆参国会議員が17年4月に設立した議員連盟です。ルール議連は、19年3月に「国家経済会議(日本版NEC)創設」に関する提言を公表しました。この提言を受け、20年4月1日には「国家安全保障会議」を事務局として支える「国家安全保障局」に「経済班」が設置されました。
◆米国と意見交換
 提言を発表する際にルール議連は、マイケル・グリーン元大統領補佐官など米国の要人たちとの意見交換を行っていました。
 提言は、中国を想定した形で「経済覇権と安全保障上の勢力拡大」が狙われていると、次のように指摘しました。
 「世界経済は、異なる政治体制を背景に非対称の企業・組織活動が展開され、安全保障や統治システムを共有する新たな地域、国際秩序が生まれつつある。わが国が主体的に、国際社会の平和・安定・繁栄のため、経済的パートナーシップと経済制裁、知的財産管理とデータ流通、国際標準やルール形成の時間軸を制御しなければ、世界潮流に埋没する」
 自民党が「台湾有事」を会議体として最初に議論したのは、このルール議連の場でした。「台湾有事が起こって台湾に中国が進出した場合、日本にどのような影響が出るのか議論した」といいます。
 台湾問題に関しては、自民党の高市早苗政調会長が雑誌『Hanada』1月号の対談企画で、次のように発言しました。
 「もっとも努力しなくてはいけないのは、台湾のいまの政権、いまの民進党をしっかり支えていくことです。もしこれが親中派の政権になったら、いたるところに影響が出ます」
 台湾に「親中派」の政権が生まれないように、日本の政権党が深く関わっていくとなれば、日中関係への影響は必至です。
 このように経済安全保障論を契機にした議論は、日本と中国の関係を険悪にする危険があります。
◆日本企業の苦悩
 シンクタンク「アジア・パシフィック・イニシアディブ」(理事長は船橋洋一・元朝日新聞社主筆)が21年12月に発表した「経済安全保障に関する100社アンケート」には、日本企業の苦悩があらわれています。
 75%の企業が、経済安全保障上の最大の課題として「米中関係の不透明性」を挙げました。実際に、事業に米中対立の「影響が出ている」と答えた企業は60・8%に上っています。また、12・5%の企業が「米中の板挟み」の状態にあると回答しました。
 「アメリカの規制強化(関税含む)によるコスト増」を挙げた企業が59・5%にのぼりました。次いで「サプライヤーの変更」(36・5%)、「中国の規制強化(関税含む)によるコスト増」(33・8%)、「売上減」(29・7%)と続きます。
 各企業からは「外交・安全保障政策面では、アメリカと強く連携すべきである一方で、中国との間の経済関係の悪化はできるだけ避けるようバランスを取っていただきたい」、「米中の板挟みにより日本企業が不利益を被らないような国家間調整」、「米中二者択一を迫られるような局面を回避」することなどの声が寄せられました。
 経営者たちの不安を封じ込めるために「国防がなによりも優先する」などと、ナショナリズムがあおられれば、日本の民主主義が危機に瀕(ひん)してしまいます。(つづく)

【赤旗】2月19日 経済安保の深層③―米国、対中で同盟国動員
 岸田文雄政権が法制化を狙う「経済安全保障推進法案」は、四つの柱で構成されています。「供給網強化」「基幹インフラの事前審査」「先端技術の官民協力」「軍事転用可能な機微技術の特許非公開」です。政府の調査権や罰則を設けて、経済への政府介入の環境を整える一方、中長期の財政支援策も検討されています。
◆武器使わぬ戦争
 経済安保論の中で、議論になっているのが、エコノミック・ステイトクラフト(ES)という考え方です。日本語に直訳すれば、経済的国政術。つまり、経済的な手段を通じて相手に対して何らかの圧力や影響力を行使し、それによって国家の戦略的目標を達成しようとすることです。ES は「武器を使わない戦争」と呼ばれることもあります。
 ESは、経済的手段によって他国に対して強制的な措置を取ることで、特定の政策の実現を期待する「行動変容機能」を持っています。一方、国内においては、「敵の存在」を明らかにし、「他国の脅威」をことさら強く打ち出し、その「脅威」を封じ込めるための手段としてESが正当化されます。そのため、目標達成のために、ナショナリズムが増幅される危険があります。国際社会に対しては、ES に参加・協調するかどうかによって、「敵か味方か」を峻別(しゅんべつ)することが可能となります。そのため軍事同盟を結んでいる国だけでなく、より幅広く共同歩調をとる「有志国」の存在が強調されることになります。
 昨年6月、菅義偉政権の下で閣議決定された「成長戦略実行計画」には、この「有志国」の概念が登場しています。「有志国・パートナーと連携して法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を実現するため」、「わが国の経済成長と安全保障を支える戦略技術・物資を特定」し、「経済安全保障に係る以下の施策を総合的・包括的に進める」と強調しました。
 一方、米国はバイデン政権誕生以来、「同盟国」や「有志国」の役割を強調しています。昨年3月に「暫定国家安全保障戦略ガイダンス」を発表しました。この中で中国について次のように指摘しました。
 「自らの経済力、外交力、軍事力、技術力を統合させることにより、安定的で開かれた国際システムに対して持続的な挑戦をしかけることが可能な唯一の競争相手である」と位置づけました。その上で「私たちは志を同じくする同盟国やパートナーと共に世界中で民主主義を再興しなければならない」
 「ほかに類を見ない同盟国とパートナーのネットワークを強化し守り、国防へ賢く投資することにより、中国の攻撃性を抑止し、私たちの集団的安全保障、繁栄、民主的な生活への脅威に対抗する」
 バイデン政権は、「中国の攻撃性を抑止」するために、日本をはじめとした同盟国の力を動員することを強調しました。
◆経済2プラス2 
 1月21日には、岸田首相とバイデン米大統領のテレビ会談が行われました。両首脳は閣僚レベルの日米経済政策協議委員会(経済版2プラス2) の立ち上げに合意しました。経済版2プラス2には、日本側は林芳正外相と萩生田光一経済産業相、米国側からブリンケン国務長官とレモンド商務長官が参加します。経済版2プラス2で扱う議題はまだ確定していませんが、米側の説明によると輸出管理やサプライチェーン(供給網)、技術投資、基準設定など、いわゆる経済安全保障の分野の協力が取り上げられる見込みです。
 首脳会談では、日本側の軍拡予算をバイデン大統領は高く評価していました。今年の春の終わり頃には、日本で日本・米国・オーストラリア・インド4カ国(クアッド)による首脳会談が開催されることになりました。バイデン大統領は岸田首相からの訪日要請を歓迎しました。
 「経済安保」の看板の下、米国の対中戦略を日本が補完・補強するための国内体制づくりが加速していきます。(おわり)