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金融と新自由主義①、②。③、④、⑤
2022年2月5日
【赤旗】2月1日 金融と新自由主義(5回連載―記者の問の文頭には“▼”を、山田さんの文頭には“▽”付けました。また、中見出しには“◆”をつけました。)
 世界各国の金融市場を支配し、新自由主義の政策を企業と国家の双方に押し付けているのが巨大金融資本です。群馬大学名誉教授の山田博文さんに聞きました。(杉本恒如)

 金融と新自由主義 ①破壊された防壁
◆規制緩和の嵐
 ▼耕自由主義は金融分野でどんな改革を推し進めてきましたか。
 ▽個人の自由でなく資本の自由を最優先する新自由主義のイデオローギーが各国の政策に取り込まれたのは1980年代以降です。金融分野における新自由主義は、金融資本の利益追求の障害となる規制を緩和・撤廃する「金融の自由化・国際化」の嵐となって世界を席巻しました。主な柱は三つあります。
 第一は資本の国際移動を自由化することです。日本では▽外国投資の事前許可制を廃止する▽外国の証券会社に口座を開設して外国の株式や債券に投資できるようにする▽外国資本に国内投資の門戸を開く―などの規制緩和が行われました。
 第二は独占禁止法を緩和して金融持ち株会社を解禁し、銀行業・証券業・保険業の垣根を取り払「っことです。
 第三は証券売買手数料を自由化し、デリバティブ(金融派生商品)や各種投資信託などの金融商品を全面解禁することです。
 ▼資本の国際移動や銀行・証券の兼業が規制されていたのはなぜでしょうか。
 ▽マネーは経済の血液なので、日本で稼いだマネーは国内で循環させ、日本経済の成長に使うとい「っ考え方でした。外国投資で出血させるなんてとんでもないとい「つわけです。
◆大恐慌の教訓
 銀行の倒産が続出した1930年代の世界大恐慌の教訓も重要でした。銀行業務と証券業務の兼業禁止は最大の焦点でした。
 世界大恐慌は米国の株式・不動産バブルの崩壊から始まりました。なぜバブルが生まれたかといえば、不特定多数の企業と個人から預金を集める銀行が金もうけに走って株や不動産を買いまくり、投資したいという個人や企業にもどんどん資金を貸したからです。膨れ上がったバブルが崩壊し、銀行取り付け騒ぎが起こって金融システムが破綻し、世界に恐慌が波及しました。
 銀行は決済業務を担います。個人や企業の経済取引に伴「っ金銭上の債権債務関係を清算する業務です。決済業務が機能しないと個人も企業も金銭の受け払いができず、商品売買などの経済活動が停止します。公的な性格を持つそんな大切な業務を、利益優先の民間銀行に委ねるのが資本主義体制の矛盾です。銀行が価格変動リスクのある株式投資に走って株価の下落で倒産し、預金者の預金引き出しや決済業務に支障を来すと、経済社会全体が大恐慌に陥ります。
 そこで預金者を保護し、銀行の健全性を保証するために、銀行業務と証券業務の間に防壁が築かれました。銀行・証券の兼業禁止規制は世界大恐慌の渦中の33年にアメリカの連邦法(グラス・スティーガル法)として制定され、戦後世界に影響を与えました。銀行と証券の間にチャイニーズウォール(万里の長城)を築くべきだといわれました。
 ▼その防壁を新自由主義は台無しにしてしまったのですね。
 ▽金融資本は70 年代以降、低成長経済への移行で利益の薄くなった銀行の貸し出し業務より、株式・債券などの超高速売買で巨額の利益を稼ぐ証券業務に傾注します。米国は金融資本の要求に沿った規制緩和を繰り返し、99年には銀行・証券分離規制を事実上撤廃するグラム・リーチ・ブライリー法を成立させます。
 その結果、銀行・証券・保険・為替などすべての金融業務を自由に遂行し、国境を越えた金融ビジネスから利益を得る金融コングロマリット(複合企業)が登場しました。現在では日本の3メガバンク(三菱UFJ ・三井住友・みずほ)を含む「大きすぎて潰せない」約30社が世界中から利益を吸い上げて独り占めしています。
 金融コングロマリットは全世界の大手企業の資金繰りを支配する圧倒的な力を持っています。企業には新自由主義的な経営を、政府には新自由主義的な政策を迫る、主権者のごとく振る舞っています。巨額の資金を動かして投機的取引を主導し、バブルの発生・崩壊の元凶ともなっています。これが、金融分野における新自由主義のグローバルな帰結です。(つづく)

【赤旗】2月2日 金融と新自由主義 ②外資が日本経済改造
 ▼日本ではどのよ「つに金融の自由化が進められましだか。
◆米国要求に沿い
 ▽日本の金融自由化・国際化は米国の要求に沿って進められました。米国は1980年代以降、レーガン大統領(当時)と中曽根康弘首相(同)の会談や「日米円ドル委員会」(83年)で、日本の金融市場の規制緩和、外資への門戸開放、金利規制の緩和などを迫りました。さらに「日米の新たなパートナーシップのための枠組みに関する共同声明」(93年)以来、日本改造の年次要望書を毎年提出し、貿易・企業経営・金融・労働など広範囲の規制緩和を求めました。
 多国籍化を意図する日本の大資本も規制緩和を後押しし、対米従属的な日本政府も米国の要求を受け入れました。こうして「金融システムの改革」(日本版金融ビッグバン)が1996年から2001年にかけて実施されました。
 金融ビッグバンは戦後日本の金融経済システムを抜本的に改造し、米国の大資本が日本に進出して自国と同じやり方で金融ビジネスを展開できるようにする内容でした。また、金融持ち株会社を解禁したため、日本の金融機関も銀行・証券・保険などの子会社を持つ巨大な金融コングロマリット(複合企業)へ変貌しました。日本の金融経済システムは「間接金融から直接金融へ」構造的に転換させられました。
 資金の調達者と提供者の間に銀行が介在するのが間接金融です。融資を行う銀行が不良債権のリスクを負います。他方、銀行を介さず資金の調達者が証券市場で債券や株式などを投資家に直接買ってもらうのが直接金融です。投資家がデフォルトリスクを負います。
 英米仕込みの金融ビッグバンは証券市場を活性化させ、直接金融を金融システムの主役に据えて、外資の参入を容易にすることを狙いました。直接金融は、使い方次第で企業の民主化に役立つ可能性があるものの、「自由化・国際化」の中で巨大金融資本の支配力を増大させました。
 バプル崩壊後に大量の不良債権を抱えた日本の金融機関は融資を渋る一方で、株式・債券やそれらを組み込んだ多様な金融商品を組成し、証券市場で売買する証券業務に傾注していきました。
 ▼金融ビッグバンの恩恵を受けたのはだれなのでしょ・つか。
◆侵略のノウハウ
 ▽多国籍的な大資本・投資家・富裕層です。外資に門戸を開放した途端に「ハゲタカファンド」が乗り込んできました。不良債権を抱えた日本の金融機関や企業を安く買いたたき、リストラして株価をつり上げ、高く墾元して大もうけしました。
 日本企業の株主構成を見ても、外国人投資家の割合は1990年の4・7%から2020年の30・2%へ激増しました。「株式会社日本」の最大株主は日本の企業・金融機関・個人でなく、外国人投資家に交代しました。
 日本株に投資する外国人投資家の目的は日本の会社に資本を供給し、育成することではありません。高い配当金を引き出し、株価をつり上げ、株式売却益を稼ぎ出すことです。外国人投資家は「もの言う株主」として最高意思決定機蘭の株主総会に乗り込み、目的を実現します。とくに大手金融機関の大株主になって株主総会で自分たちの意思を通すことに注力しました。
 もともと直接金融は英米が最も得意とする分野です。英米の投資家は、金融機関を押さえてその国の経済全体を効率よく支配するノウハウを知っています。「金融侵略」です。
 いまや3メガバンク(三菱UFJ ・三井住友・みずほ)」や2大証券(野村・大和)の大株主は外国人投資家です。これら大手金融機関の大株主になれば、取引関係にある多数の主要日本企業の経営方針に口を出せます。経営に必要な資金を手配する条件として、終身雇用・年功序列賃金・企業福祉などの日本的な制度を廃止し、効率的な成果主義を導入するよう迫りました。
 こうして、雇用に責任を持たない新自由主義的な経営が短期間で日本企業全体に普及しました。リストラの嵐が吹き荒れて非正規雇用が広がり、戦後の安定的な雇用環境は破壊されました。日米欧の多国籍的な金融資本は、日本の経済社会を支配して新自由主義的に改造し、日本の労働者を徹底的に搾取しています。(つづく)

【赤旗】2月3日 金融と新自由主義 ③資本逃避で国を脅迫
 ▼日本企業を新自由主義の考え方で染めたのが、外国人投資家を中心とする大株主だったわけですね。
 ▽「企業の使命は株主に報いることだ。雇用や国のあり方に経営者が責任を負う必要はない」というのが大株主の論理です。野蛮な資本の論理であり、新自由主義のイデオロギーです。この資本の論理が日本の企業経営のあり方を変えました。
 過去10年の法人企業統計を比較すれば変化は明白です。
◆配当金が最優先
 新自由主義の企業経営が最優先するのは、高額の配当金の支払いで株主に報いることです。実際に、企業の純利益や株主への配当金は2倍以上に増えました。内部留保金といわれる利益剰余金も大幅に増えました。他方で、減ったのは従業員給与と従業員数です。雇用や地域経済に責任を持たず、労働者からの搾取を強めて株主配当を増やす、野蛮な経資本逃避で国を脅迫営姿勢が現れています。
 バブル崩壊後、日本企業の売上高や本業からの営業利益は長期間にわたり低迷しています。それなのに純利益や利益剰余金が増大する「減収増益」という事態が生じています。
 その要因の第一は従業員給与を大幅に削減したことです。第二は自公政権が法人税減税を繰り返したことです。第三は大企業が金融ビジネスに傾注し、有価証券投資による金融収益(営業外収益)を増やしたことです。第四は海外投資から還流する利子・配当金などの金融収益が円安下で増大したことです。日本企業は正社員を減らして非正規雇用を拡大し、効率よく利益を増やす「新時代の『日本的経営』」(日本経営者団体連盟・1995 年)を実現しました。ため込まれた利益は国内の設備投資や給与支払いではなく、グローバルな直接・間接投資へ向けられました。
 経営権の取得を伴う直接投資は圧倒的に人件費の安い中国やアジア諸国での工場の建設に向けられました。大企業が海外に投資先と生産拠点を移したことで、日本国内の製造業と雇用は空洞化していきました。対外進出した日本の企業数は2019年度現在2万5693社、現地で雇用する従業員数は564万人に達します。
 利子や配当の獲得を目的とする間接投資(有価証券投資)は欧米の株式・債券など、高利回りの金融商品に向けられました。企業は本業に打ち込むよりも、手持ちの資金をグローバルに運用して稼ぐようになりました。
◆わが亡き後に・・・
 ▼金融収益の増大と労働者の貧困化は表裏一体なのですね。
 ▽マルクスが『資本論』で解明したように、資本主義経済の目的は飽くことなき利益追求であり、労働者が生み出す剰余価値の搾取と収奪です。しかし剰余価値を実現する工程は、原材料の調達・生産・販売のすべての場面で時間と空間に制限され、生活向上を求める労働者のたたかいと衝突して非効率になっていきます。そこで資本の論理は、海外移転・外部委託・雇用の非正規化などで生産工程の搾取率を高める一方、巨額のマネーを地球的規模で高速に運用し、世界中から効率的に利益を収奪する金融ビジネスを活性化させました。
 インターネットなどの情報通信技術の発展が時間と空間を超越した金融ビジネスに道を開きました。それに加えて、資本の自由な運動を拘東する国内外のあらゆる規制を緩和・撤廃する新自由主義の政策を各国で普及させたことにより、巨大金融資本は塾時間いつでもどこでも、自由に巨額の利益を収奪できるよつになりました。
 巨大金融資本は投資先の雇用や経済に責任を負いません。景気後退や相場の悪化が見込まれるやいなや、「わが亡き後に洪水よ来たれ」とばかり、一瞬で安全圏の国外に逃避します。資本に逃避された国ではバプルが崩壊し、工事現場は放置され、企業倒産と失業の嵐が吹きまくります。資本逃避の可能性は企業と国家への強い脅しとなり、大株主の利益を最優先する新自由主義的な経営・政策の推進力として働きます。
 「金融の自由化・国際化」は、こうして巨大金融資本の権力を著しく強め、英米の投資家や大株主の下に世界の富を手っ取り早く集める「カジノ型金融独占資本主義」となって、人々の暮らしや地域経済を衰退させてしまいました。(つづく)

【赤旗】2月4日 金融新自由主義 ④異次元緩和のリスク
 ▼自由主義が掲げる「自由」は欺瞞(ぎまん)的ですね。
 ▽資本の自由を拡大して搾取を強める新白田主義は、人民の自由や権利と敵対します。その本質を見せつけた出来事があります。
◆チリを実験国に
 米シカゴ大学で新自由主義の代表的学者(Aルトン・フリードマン(1912~2006)の教えを受けた経済学者はシカゴ・ボーイズと呼ばれました。彼らは1973年、アジェンデ政権を軍事クーデターで倒したピノチェト独裁政権下で、チリを新自由主義改革の実験国にしました。
 共産党と社会党を中心とする人民連合に支えられ、民主的な選挙で誕生したアジェンデ政権は、外資を含む大企業の国有化を進め、選挙を通じた社会主義建設をめざしました。しかし、米国の中央情報局(CIA)の支援を受けたピノチェト将軍がクーデターを起こし、大統領府を爆撃し、アジェンデ政権を倒しました。そのニュースが流れたとき、シカゴ・ボーイズは学内で歓声をあげました。宇沢弘文(1928~2014)はそれを目撃して激怒し、「以後一切シカゴ大学とは関係しないと決意した」と、後年語りました。
 ピノチェト政権は、新自由主義的な民営化・規制緩和を進めると同時に、多数の労働組合員や市民活動家を虐殺しました。このチリの悲劇には、米国の支配と新自由主義の本性が現れています。
 ▽フリードマンの経済学はマネタリズムとも呼ばれます。
 ▼中央銀行が供給する貨幣供給量を増減することで経済や物価動向を管理できるとする貨幣数量説に立つのがマネタリズムです。
 第2次安倍晋三政権下で金融政策を担った黒田東彦日本銀行総裁は2013年4月、「供給する資金量を2年間で倍増させ、物価を2%上昇」させると宜言しました。この異次元金融緩和政策は、貨幣数量説に立つ新自由主義の金融政策です。
 しかし、2年間で2%物価上昇という公約は8年間たっても未達成です。新自由主義の破綻は十分すぎるほどに証明されています。そもそも、日銀が増やせる貨幣供給量は、民間銀行保有の国債を買い入れて供給するマネタリーベース(民間銀行の日銀当座預金と現金)だけです。物価や経済動向に影響を与えるマネーストック(企業や家計が保有する現金と銀行預金)は増やせません。マネーストックが増えるのは、家計や企業が消費や投資を活発化させるために民間銀行から現金を引き出すか、借り入れを増やす場合だけです。深刻な消費不況の日本では、家計も企業も消費や設備投資を増やさないので、マネーストックは増えません。
◆予測不能の危険
 ▼それでも、日銀が異次元金融緩和政策を続けるのはなぜですか。
 ▽そこには、金融ビジネスで目先の利益を追求する野蛮な資本主義の姿が見え隠れします。
 第一に、国債入札に参加資格を持つ内外の巨大金融機関約20社(国債市場特別参加者)は、安く落札した国債を日銀に高値で売りつける日銀トレードで、国債売却益を稼いでいます。巨大金融機関が12兆円以上の国債売却益を稼ぐ一方、日銀は約12兆円の国債償還損を抱え込みました。その分、日銀の国庫への納付金が減り、国民負担が増えることになります。
 第二に、日銀による国債の大規模買い入れで国債金利・長期金利は下落し、ゼロ%近傍やマイナスの水準に低下しました。これは政府の国債利払い費や企業の借入金利の引き下げに貢献しました。
 第三に、他国と違い、日銀の異次元金融緩和政策は株式ETF(株価連動型上場投資信託)の買い入れを実施するので、日経平均株価やTOPIX を構成する会社の株価をつり上げ、会社と株主の利益に大貢献しました。その結果、日銀が抱え込んだのは異次元のリスクです。日銀が保有する国債521兆円、株式36兆円の価格が何らかのきっかけで下落すればへ日銀に損失が発生します。「日本円」の信用にヒビが入り、円暴落のリスクが表面化します。輸入品の値上がりで深刻な生活破壊が広がるでしよう。
 新自由主義の異次元金融緩和政策は、内外の大資本・投資家には巨額の利益をもたらす一方、国民生活と日本経済には予測不能の危険な事態を招いています。(つづく)

【赤旗】2月5日 金融新自由主義 ⑤99%のための経済
 ▼型コロナウイルス危機の下で貧富の格差が拡大しました。
 ▽3・8億人の感染者と571万人の死者を出したコロナ禍は、生活関連の中小零細企業を中心に、大規模な企業倒産と失業を誘発しました。国際労機関(ILO)によれば、世界中で2億2000万人が失業し、約1億人が極度の貧困に陥りました。人類の生存権が脅かされ、生活破壊が進行しています。
 他方で、約2750人の超富裕層がコロナ禍の間に増やした富は3兆6000億ユーロ(約470兆円)に達した、と世界不平等研究所の調査は指摘します。2021年に世界の上位1%の超富裕層が個人資産の37・8% を独占する一方、下位50%は2%程度の資産を所有するにすぎませんでした。貧困と資産格差は一層深刻になっています。
◆驚異的株高記録
 これは、コロナ禍の2年間に主要国の株価や債券価格が驚くほど上昇したからです。アメリカのダウ平均株価は2万3000㌦台から3万6000㌦台へ、日本の日経平均株価は2万3000円台から2万9000円台へと、驚異的な株高を記録しました。
 実体経済指標である世界の名目GDP(国内総生産)合計額は87・39兆㌦から94・94兆㌦へと、ほぼ横ばいの1・08倍にとどまったのに、金融経済指標の株価や債券価格はぞれをはるかに上回って上昇しました。株式や債券投資に縁のない99%の国民諸階層が失業や一層の貧困に陥る中、富裕層は金融資産を増大させました。
 株価や債券価格が上昇したのは、コロナ禍対策で各国中央銀行が歴史的に例を見ない超金融緩和政策を発動したことで、株式や債券に買い向かう投資用マネーが膨張したからです。目先の利益を追求する金融経済が、人類の生存に不可欠なモノやサービスを生産・販売する実体経済から乖離(かいり)し、世界のGDPの354倍も肥大化する事態に陥っています。
 金融規制緩和を推進した各国の新自由主義政策が、目先の利益を求めるマネーの暴走をもたらしました。
 ▼どんな政策転換が求められますか。
 ▽金融の自由化・国際化、雇用破壊、法人税の減税競争、社会保障の切り捨てといった新自由主義政策がつくり出したのは、「1%の富裕層や株主のための経済」です。国民生活は貧困化し、国民経済と地域経済は疲弊し、貧富の格差が拡大しました。弱肉強食の新自由主義と決別し、「1 %のための経済」から「99%のための経済」に転換することが火急の課題です。
◆投機には課税を
 金融分野では、自由化・国際化の見直しが欠かせません。
 第一に、モノの取引を伴わない投機的な金融取引には課税し、実体経済から乖離したマネーの暴走を抑え込むことです。国境を越えた投機目的の国際通貨取引にも課税(トービン税)し、円・ドル・ユーロなどの為替相場の変動を抑え込み、安定化させることです。低率の課税でも投機抑制効果は大きく、巨額の税源が生まれるうえ、新自由主義的な政策を押し付ける金融資本の権力を削減することにもつながります。
 第二に、国や地域の経済活動の中で稼いだマネーの一定割合はその国や地域の発展と安定のために再投資し、循環させる仕組みを成立させることです。金融機関に集中したマネーがグローバル市場や首都圏に流出したら、国民経済・地域経済は疲弊します。米国にはマネーの地域循環を明記した「地域再投資法(CRA)」という先行事例があります。
 第三に、中央銀行の独立性を保証し、時の政権や経済界の意向に屈服せず、「物価安定」の大目標を実現することです。実体経済が安定して営まれるためには物価の安定が不可欠です。また、世界大恐慌の教訓である銀行業務と証券業務の分離に立ち返るべきです。
 第四に、21世紀の人類的視点に立ち、国連総会で採択された「持続可能な開発目標」(SDGs)の方向へ金融政策や民間金融機関の経営を転換することです。貧困撲滅、健康と福祉、質の高い教育、クリーンエネルギー、ジェンダー平等、気候変動対策、不平等と格差の是正、平和、持続可能な生産と消費、安全な街づくりなど、SDGsの17の目標達成を支援する金融システムを確立すべきです。(おわり)