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2022年経済の潮流(つづき)明海大学経済学部准教授 宮崎礼二さん(上)〝米国労働者の団結の年〟(下)〝若者と労働者が決起〟 ,
2022年1月22日
【赤旗】1月14,15日 2022年1月14,15日 2022年経済の潮流(つづき)
=明海大学経済学部准教授 宮崎礼二さん(上)〝米国労働者の団結の年〟
 世界最悪の新型コロナウイルス感染者数と死者数を出しながらも、米国はコロナ禍による経済危機から迅速に脱出しつつあります。
◆回復の一方で
 「100年に1度」とも形容された2007~09年の金融危機の後、国内総生産(GDP)が後退前の水準に戻るのには3 年を要しました。それとは対照的に、今回のコロナ危機では21年第2四半期(456月)にコロナ過削(19年10~12月期)の水準を1年半で上回りました。
 ▽トランプ、バイデン両政権による積極的な財政支出(直接給付、失業保険給付の加算措置、中小企業の雇用維持支援の融資など)▽連邦準備制度理事会(FRB)によるゼロ金利政策と量的緩和▽ワクチンの普及―によって、コロナ禍で抑制されていた個人消費や設備投資が急激に持ち直しています。
 しかし、この力強い経済の回復の一方で、労働力不足、原材料不足、半導体不足、コンテナ不足などの供給制約が生じています。また、コロナ禍で石油需要激減による価格の大幅下落に直面した産油国は世界経済の回復に対応した増産に消極的であり、原油価格が高騰しています。経済の急速な回復の一方での供給不足は、インフレ率の急上昇を招きました。21年10月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比6・2%上昇。米国労働者の団結の年11月には同6・8%、12月には同7・0%上昇し、1982年6月以来39年ぶりの高い伸びを示しています。
 FRBはこれまで高インフレは「一時的」との認識を示してきましたが、21年11月末にパウエルFRB議長は議会証言でその認識の修正を示唆しました。とりわけ、労働需給のひっ迫による賃金上昇の可能性を指摘しました。失業率は1948年の統計開始以来最悪の14・7%(2020年4月)から4 ・2%(21年11月)へと大きく改善を続け、求人需要に供給が追い付かない人手不足の状況になっています。
◆よりよい機会
 労働者にとっては、よりよい賃金や雇用条件を求めて転職する機会です。就業者に占める自発的離職者の割合は過去最高を更新し続けています。離職者は、とりわけ対面勤務で賃金の低い業種で非常に多く、全産業での離職率は昨秋に過去最高の3%であったのに対して、宿泊・飲食で6・9%、小売りでは4・4%の高水準を記録しています。
 新規採用のできない企業が増え、人手不足の業種では、賃金引き上げで求職者の確保に乗り出しています。時間当たりの平均賃金は、昨夏以降対前月比で毎月0・5%上昇、10月と11月の対前年同月比の伸び率はそれぞれ5・8%と5・9%と高くなっています。しかしそれでも、最近の高
いインフレ率に追いつかず、実質賃金はマイナスのままです。
 需給ひっ迫の労働市場の動向は、大企業と株主に偏重する所得分配を労働者側に取り戻し、賃金・雇用条件の改善と公正社会を実現する好機になっています。バイデン政権による労働組合の権限強化の姿勢を追い風に、全米でストライキが起こり、これまで労組のなかった巨大企業でも組合結成の動きが活発になっています。労働者の運動は各州・郡・市で最低賃金引き上げを続々と実現させ、年内実現も含めれば全米半分の
25州で運動が結実しようとしています。
 22年は労働者の団結と99%の国民の尊厳のための政治選択の年になるでしょう。(つづく)

=明海大学経済学部准教授 宮崎礼二さん(下)〝若者と労働者が決起〟 
 バイデン米大統領は「(富裕層が豊かになれば、低所得層にも効果が波及するという)トリクルダウン理論は、一度も機能したことがない。底辺を引き上げ、中間層を起点に経済を成長させるときだ」と表明しました。
 トリクルダウン理論は、大企業と富裕層を優遇する減税政策の底流をなす新自由主義の考え方です。1981年に誕生したレーガン政権から下ランプ前政権までの共和党政権が実施し、クリントン政権やオバマ政権といった民主党政権においても、トリクルダウン理論の信塞者が財務長官や国家経済会議議長を務めていました。
 バイデン大統領はトリクルダウンを否定し、底辺を引き上げて中間層を豊かにする経済政策でコロナ禍からの回復を図り、コロナ後の米国の転換を進めることを訴えてきました。
◆若い世代の支持
 2020年大統領選挙で民主党の勝利を導いたのは、Z世代(1997年以降生まれ)とミレニアル世代(81年から96生止」まれ)といった若い世代の強い支持でした。この世代は、富の再分配、気候変動、人種やジェンダーによる差別、医療保険、性的指向の自由などを重要課題と考え、2 
019 年の調査ではこれら世代の6~7割が「大統領選で社会主義の候補に投票してもいい」と答えています。民主党支持者の半分近くを占めるこの世代の存在が、オバマ政権期の副大統領として新自由主義を受容若者と労働者が決起してきたバイデン大統領の転換を推し進めています。
 米国の新たな政治力の誕生のきっかけは、1%の富裕層が富を独占する不公正な社会に異議を唱える運動として11年秋にニューヨークで始まった「オキュパイ運動」です。この運動は既存の労働組合や他の組織との連携を重視し、停滞していた労働運動に新風を吹き込みました。また、翌12年にはファストフード労働者による最低賃金15 がを求める運動「ファイト・フォー・15ダラーズ」が発足し、全米一斉ストライキや組織化の契機になりました。
 社会運動と労働運動の新たなうねりは民主党の進歩派議員連盟(CPC)の議席増に結びついています。CPC は労働者を優先して経済社会の不平等を解消し、市民的自由を前進させるという進歩的政策を掲げます。1991年にわずか6人の下院議員で発足したCPCは現在、上院1人と下院95 人にまで勢力を拡大。CPC所属議員は下院総数435人のうち22%を占め、民主党下院議員221人の43%にのぼる一大勢力になっています。昨夏に
は週4日労働制導入の法案を提出しました。
◆労組強化の支援
 2001年から20年の年平均ストライキ数はわずか16件であったのに対して昨年はバイデン政権による労組強化の支援を受けて、368件のストライキが実施されました。ストを通じた勝利は労働者に団結の意義を確信させ、労組のない大企業での組合結成を活発にしています。
 今年はバイデン政権任期半ばの中間選挙が実施されます。共和党はトランプ前大統領の影響力を利用しながら保守的主張を強め、上下両院で多数派キ奪還する自信をみせます。
 バイデン大統領を新自由主義からの転換に踏み込ませた草の根運動とCPCはトランプ前政権下の逆風にあらがい、新自由主義の荒波の中でも不屈の運動を続けた実績があります。今秋の中間選挙の結果いかんにかかわらず、新自由主義からの脱却と99%のための経済社会をめざす運動はますます大きなうねりになるに違いありません。(おわり)