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2022年経済の潮流(つづき)桜美林大学教授藤田実さん(上)〝貧しくなった日本経済〟(下)〝停滞の原因は政府と企業〟
2022年1月17日
【赤旗】1月12,13日 2022年経済の潮流(つづき)
=桜美林大学教授藤田実さん(上)〝貧しくなった日本経済〟 
 1991年の日本のバブル崩壊から30年、経済の長期停滞を表す「失われた20年」が30年になっても、日本の国内総生産(GDP) 成長率は1%程度の低い水準にとどまっています。この間、中国や韓国は着実に成長し続けているほか、欧米先進国でもこの間、緩やかに成長しています。日本だけが停滞している状況です。
◆各種の指標で
 30年にわたる停滞状況の中で、各種経済指標は悪化しています。例えば、購買力平価でみた1人当たりGDPの推移を見ると、経済協力開発機構(OECD)平均では4万4986㌦であるのに対して、日本は4万1775㌦ですかち、OECD 平均を下回っています。韓国が4万3319㌦ですから、1人当たりGDPでみれば、韓国に逆転されています。
 なお、名目GDPでは、2020年時点では、日本が韓国・台湾よりも上位ですが、日本経済研究センターの調べでは、27年、28年には両国を下回るとの予測を示しています。
 平均賃金も、他のOECD諸国に比べて停滞していて、1990年の3万6879㌦が2020年では3万8515㌦ですから、4・4%しか増えていません。欧米諸国は同期間に、イタリアを除けば、10%以上増加していますから、日本の停滞は際立っています。
 1人当たりGDPが停滞しているということ、賃金が停滞していることは、日本が貧しくなっているということを意味しています。
 また、「労働力調査」によれば、非正規労働者は19年比で20年には75万人減少。そのうち65万人は年収200万円未満です。21年でも緊急事態宣言がでた時期を中心に減少が続きました。
 7~9月期の雇用者総数は前年同期比で34万人増加したものの、非正規労働者数は同4万人減と雇用の回復は鈍いままです。低賃金の非正規労働者が仕事から排除され、生活困難な状態に陥っていることが想定されます。
◆新社会提示を
 日本の経済力の衰えは、GDPや賃金に関する指標だけでなく、産業の市場シェアの点からも言えます。よく知られているように、1980年代には世界一の市場シェアを有していた半導体産業(DRAM)やテレビ産業は、韓国のサムスンが圧倒しています。日本でも現在、主流になりつつある高速大容量通信規格、第5世代移動通信システム(5G)の通信設備でも米中対立の焦点となっているファーウェイやエリクソン、ノキアが中心で、日本の通信機器企業は世界市場には進出できていません。
 電気自動車(EV)市場でも、日本企業の生産・販売台数はアメリカのテスラや中国のBYDの後塵(こうじん)を拝しています。EVの鍵を握るリチウムイオン電池でも中国企業に圧倒されつつあります。
 昨年開催された国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で脱炭素の動きが明確になり、電力では石炭火力から再生可能エネルギーへの移行が鮮明になりつつあります。その中心設備である太陽光パネルや風力発電設備でも中国やヨーロッパの企業が中心で世界市場に占める日本企業の影は薄くなっています。
 このように見てくると、日本は産業競争力やGDPで見る経済力は明らかに衰退傾向にあります。もちろん、地球環境問題を考えると、経済成長を全面的に肯定するわけにはいきません。しかし、1人当たりGDPの停滞が続くとともに、賃金の停滞も続くままでは、経済面では国民生活の向上は望めなくなります。この意味では、日本は拡大再生産を基調とする資本主義経済の限界に直面しており、資本主義に代わる新しい社会像の提示が求められているとも言えます。(つづく)

=桜美林大学教授藤田実さん(下)〝停滞の原因は政府と企業〟
 日本の成長率の停滞をもたらした要因として指摘されるのは、少子化による労働力の減少、企業の設備投資の停滞、技術革新の停滞です。これらの要因が成長率の停滞をもたらしているのは確かですが、それは不可避の自然現象のように生じているわけではなく、政府の経済政策の失敗、企業の経営力の欠如によってもたらされたものです。
◆規制緩和が軸
 2000年代の経済政策は、09年からの民主党政権時を除き、市場競争を重視した規制緩和政策を軸とする新自由主義的政策が中心でした。新自由主義的政策は2000年代初頭の小泉純一郎内閣から本格化しました。
 アベノミクスは、機動的な財政政策として公共事業の拡大や、財界への賃金引き上げ要請、最低賃金引き上げ政策など、国民生活重視的な政策も一部織り込んでいました。しかし、中心的には企業競争力の強化に重点をおいた、国家主導の新自由主義的政策でした。
 新自由主義的政策は、市場競争を重視し、参入規制や価格維持政策などは自由な競争を「阻害」する既得権益として攻撃し、撤廃したり、大幅に緩和したりするものです。規制を緩和したり、撤廃すれば、企業の参入が活発になり、価格の下落や新規サービスの登場などにより、消費者の利益になると宜伝されてきました。
 新自由主義的政策で多くの分野で規制は緩和されましたが、新規産業が勃興し、経済が成長することはありませんでした。それどころか、労働分野の規制緩和では大幅に非正規労働者を増大させる結果を生じさせたり、交通運輸分野での競争激化で事故を誘発したりするなどの弊害も生じさ停滞の原因は政府と企業せました。
 グローバル競争が激化しているうえに、国内でも競争政策が採られたこともあり、企業はリストラや人件費削減で利益を創出しようとしました。それにより所得が停滞したため、国内での消費は拡大せず、消費財を中心に設備投資も拡大しませんでした。
 また新自由主義的政策は、自助努力を強調し、財政による社会保障支出を縮減する政策を採ったため、国民の将来不安も高まりました。
 このよつに新自由主義的政策を続けた結果、経済が成長しない一方で、将来不安も大きくなり、消費が停滞することで、国内市場が停滞していったのです。
◆経営力の弱さ
 産業競争力の低下も経済成長を停滞させました。それは企業の経営力の低下によってもたらされたといって良いと思います。1990年代から経団連などは①円高②法人税の高さ③電気料金の高さ④労働規制の厳しさ⑤自由貿易協定の遅れ⑥環境規制という外部環境の厳しさ―が企業経営を苦しめていると主張し、その解決を政府に求めてきました。
 しかし現在は、財界が「六重苦」と言っていた事態は、解消しつつあります。例えば、為替レートは円安で推移し、法人税も1999年の30%から現在は23・2%まで低下しています。電気料金も、現在ではドイツやデンマーク、イタリアなどと比べて、高いわけではありません。
 財界が主張する労働規制に関しては、企業はすでに低賃金の非正規労働者を自由に利用しています。財界が言うのは、正規労働者の解雇を自由にしたいということです。
 自由貿易協定(FTA) や経済連携協定(EPA) も環太平洋連携協定(TPP)など発効済み、署名済みの経済協定が21(21年1月)あり、貿易の自由化が進んでいます。環境規制は日本だけでなく、世界的に強化の方向ですので、日本企業だけが厳しいわけではありません。
 このように考えると、産業競争力の低下は財界が主張する外部環境の厳しさによるのではなく、成長事業を創り出せない経営力の弱さなのです。財界は、経営力の劣化という自らの足元の問題を見つめ直す必要があると思います。(おわり)