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2022年経済の潮流 東京工科大名誉教授工藤昌宏さん(上)〝回復遅れる日本〟,(下)〝回復妨げる政治〟
2022年1月15日
【赤旗】1月6,7日 2022年経済の潮流
 2022年の世界と日本の経済の潮流について、識者に語っていただきました。

=東京工科大名誉教授工藤昌宏さん(上) 〝回復遅れる日本〟
 市場経済は一方で生産力を高め、国民生活の改善に寄与しますが、他方で倒産、失業、貧困、自然環境破壊などを引き起こし、国民生活に打撃を与えるという負の側面を持っています。
 21世紀になって、この負の側面が強く意識されるようになってきました。背景には、経済のグローバル化があります。グローバル化は、競争を激化させ産業構造や労働市場の変化などを通じて貧困化、自然環境破壊を加速させています。
 また、エネルギー価格の乱高下や米中対立、さらには新興国の経済混乱、累積債務問題などが世界経済の混乱要因に加わっています。
 他方、世界が危機に直面する中、持続可能な社会システムの構築、自然環境保護を求める国際的な動きも強まっています。脱炭素社会に向けての動きはその一端です。
◆闇が浮き彫り
 2020年初頭、突如として新型コロナウイルスが出現し、瞬く間に世界中に広がりました。人々の命は奪われ、生活は破壊されてしまいました。背景には、経済のグローバル化による人流の拡大があります。また、ウイルスは世界を破壊しただけでなく、貧困や格差など世界が抱える闇、そして社会体制の弱点をも浮き彫りにしました。
 そればかりではありません。ウイルスは、世界各国でくすぶっていた政治不信を助長し、社会体制までも揺さぶっています。しかも、今後世界各国はコロナ対策で膨らんだ巨額の債務問題への対応を余儀なくされます。今、世界は文字通り未曽有の危機に直面しているように思います。
 ウイルスによる経済的打撃は、即座に表れました。感染拡大直後の20年4~6月期、世界のほとんどの国のGDP(国内総生産)は先進国、新興国を間わず同時に大幅なマイナスに陥りました。このような現象は、1929年の米国発の世界恐慌以来のことです。打撃はけた違いだということです。
 実質GDPを見ると、米国では4~6月期に年率31・4%減、ユーロ圏では40・3%減、日本では28・1%減、中国では1~3月期に前年同期比で6・8%減を記録しました。その後欧米諸国は徐々に回復に向かいましたが、日本経済は停滞し続け20年度には4・5%減と08年度の8・6%減を超えて戦後最大の落ち込みを記録しました。
 とくに深刻なのは、個人消費の落ち込みで20年度には5・5%減となっています。21年度に入っても状況は変わりません。実質GDP(前期比)は、4~6月期には前期(l~3月期)の0・7%減の反動で0・5%増となったものの、7~9月期には個人消費の大幅な落ち込みで0・9%減と再び沈み込んでいます。
◆見通し厳しく
 問題はこれだけではありません。企業倒産件数はコロナ禍にもかかわらず、政府の金融支援措置で何とか抑え込まれていますが、対照的に休廃業件数が増大しています。休廃業件数は、16年に約3万件に達した後、徐々に増大し20年には約5万6千件に膨らんでいます。
 また、失業率は3%程度で推移していますが、これは求職を諦めた人々が失業統計から除かれたためで、失業者数は非正規労働者を中心に約200万人に達しています。さらに、欧米諸国の経済が20年中ごろから巨額の財政支出、個人消費の回復などで回復基調に向かったのとは対照的に、日本経済は立ち遅れ、低迷し続けています。
 OECD(経済協力開発機構)は21年12月1日、21年の実質GDP成長率の対前年比予測を発表しました。それによると、世界全体では5・6%増、米国5・6%増、ユーロ圏5・2%増に対して日本はわずか1・8%増となっています。日本経済だけが、一人取り残された感じです。(つづく)

=東京工科大名誉教授工藤昌宏さん(下)〝回復妨げる政治〟
 2020年後半以降、先進国経済は回復傾向を示しています。対照的に日本経済は停滞し続けています。雇用や所得環境は依然として悪く、消費も停滞し続けています。
 そのため、欧米の中央銀行が相次いで金融緩和策の終了に向かっている中で、日銀だけはいまだに大規模緩和から抜け出せないままです。
◆「日本化現象」
 日本経済が停滞し続けているのには理由があります。それは、日本経済がコロナ禍以前から停滞に陥り、またそのような状態が放置され続けてきたために停滞構造が定着しているからです。
 雇用と所得が低迷し、それを起点に消費、生産、投資が連鎖的に停滞し、そのため経済循環構造も破壊され続けてきました。1990年代以降の日本経済の長期停滞がそれを物語っています。しかも、このような状況の中で2013年以降はアベノミクスによる2度にわたる消費税率の引き上げや社会保険料の引き上げなど国民生活に重しが加えられてしまいました。
 当然、経済循環構造はさらに崩れ、消費は停滞し、物価も下落し続けています。その結果、日本経済は停滞から抜け出しにくい構造に陥ってしまいました。このような状況の中でコロナウイルスの直撃を受けたわけです。このことは、現在の日本経済の停滞がコロナ禍による一過性のものではないこと、コロナ収束後も停滞からの脱出は困難であることを意味しています。
 また、停滞構造が定着している中でお金の流れが悪くなっています。従来のような財政支出や金融緩和策などによるお金のバラマキは通用しません。2000年代に入って、政府と日銀はお金を流し続けましたが、目詰まりを起こしてお金が流れず一向に効果が出ません。
 政策が効かないうえに国民負担という重しが加えられれば停滞から抜け出せるはずはありません。欧米諸国とは対照的に、低金利、低インフレ、低成長から抜け出せないのはそのためです。欧米の中央銀行は、このような日本の状況を「日本化現象」と呼んでいます。このような状況にはなりたくないというわけです。
◆生活の安定を
 問題はそれだけではありません。コロナ禍が続く中で、日本経済の回復の前にはそれを妨げる要因がいくつも立ちはだかっています。
 第1は石油価格の高騰などによって物価が上昇傾向にあることです。物価上昇は国民生活や企業経営を圧迫します。
 第2は円安の進行です。石油価格の高騰、世界的なインフレ懸念から各国で金融引き締めの動きが強まっています。その結果、とくに日米金利差が拡大しドル高・円安傾向が強まっています。円安は石油価格の高騰と重なり輸入物価をつり上げることになります。
 第3は半導体などの部材不足が深刻化していることです。これによって、とくに自動車産業などが打撃を受けています。
 そして第4は失政への懸念です。昨年10月に発足した岸田内閣は、「成長と分配」の好循環を中身とする「新しい資本主義」を掲げました。12月6日の所信表明では「まずは成長戦略です」と切り出しました。つまり、成長を前提にした分配という論理です。これでは、「成長戦略」を繰り返し打ち出しながら、結局は大企業の利益優先、国民生活への負担強制を繰り返し、日本経済を停滞させ続けたアベノミクスの路線を踏襲することになりかねません。
 そもそも、成長と分配は区別しなければなりません。経済が成長したからといって分配につながるわけではありません。また、経済循環構造が崩れているもとでは、経済成長も期待できません。
 大事なことは、経済循環構造の起点となる国民生活を安定させることです。つまり、「まず成長」ではなく、「まず安定」が大事だということです。これこそが、「成長と分配の好循環」の土台だということです。(おわり)