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大企業軽すぎる税負担(「赤旗日曜版」)、岸田氏新総裁に 結局「永田町の論理」か(「東京新聞」)、自民党新役員人事―疑惑への無反省が露骨すぎる(「赤旗」)
2021年10月3日
【赤旗日曜版】10月3日号 経済これって何?―大企業軽すぎる税負担―巨額増益の一方で優遇税制拡大
 2021年3月期の大企業決算は、新型コロナウイルスの感染拡大で経済が縮小するなか、減収増益となりました。コロナ禍のもと、年度ベースで初の決算です。上期は大幅減益でしたが、下期は自動車やスマートフォンなど製造業を中心に利益が急回復し、純利益は26%増となりました。
 大企業はアベノミクスの恩恵を受け、12~20年に経常利益は30%増、内部留保は40%増となっています。
 巨額の利益を上げた大企業の税負担はどうなっているのか、利益上位20社(金融業は除く)の有価証券報告書を分析しました。各社の実際の税負担率は、分母に税引き前純利益を置き、分子に法人3税(法人税、法人事業税、法人住民税)の納税額を置いて計算しています。
 通常なら、税負担率と法定実効税率(約30%)はほぼ一致するはずです。ところが、多くの企業の税負担率は法定実効税率を大きく下回っています。
 トヨタ自動車の税負担率は15・3 %、三菱商事は1・2 %という具合です。 利益1・4兆円超のソフトバンクG(グループ)の法人3税は500万円(住民税均等割と推定)で、税負担率は0・0%となっています。
 大企業の実際の納税額が法定実効税率を大きく下回るのは、大企業優遇税制による大きな減税があるためです。
 ソフトバンクGは投資会社で自ら事業は行わず、グループ各社の株式を所有。その事業をコントロールすることを事業目的としている純粋持ち株会社です。受取配当益金不算入制度があるため、グループ各社から支払われた配当金が益金(収益)に計上されません。減税額は4863億円と推定されます。
 三菱商事は受取配当益金不算入制度で1295億円の減税。トヨタ自動車は受取配当益金不算入制度で2792億円、試験研究費の税額控除制度(研究開発減税)で528億円の減税を受けたと推定されます。
 大企業減税の総額は、国税庁の「会社標本調査」(19年度)などから計算すると、①受取配当益金不算入で2兆9032 億円②外国子会社配当益金不算入で1兆3662億円③連結納税で6382億円④研究開発減税などの租税特別措置法による減税で1兆1625億円、合計で6兆701億円にもなります。
 この30年間、消費税率引き上げと合わせて、法人税率、所得税率が大幅に引き下げられてきました。08年のリーマン・ショック後、法人の利益は激増しているのに、国の法人税収は全く停滞しています。法人税率引き下げと大企業優遇税制の拡大が原因です。消費税の増税収入は、そっくり法人税と所得税の減税の穴埋めに消えています。
 赤字でも納税しなければならない消費税に苦しむ中小企業がある一方、巨額の利益を上げているのにわずかな法人税しか払わない大企業が存在する現実は不公平です。菅隆徳(すが・たかのり 不公平な税制をただす会共同代表・税理士)

【東京新聞】9月30日<社説>岸田氏新総裁に 結局「永田町の論理」か
 新型コロナウイルス感染症対策が急務の中、憲法五三条に基づく臨時国会召集要求に応じず、長い「政治空白」の末に自民党総裁に選ばれたのが、党所属国会議員の多数の支持を得た岸田文雄前政調会長(64)=写真(右)=だった。
 より有権者に近い立場にある党員・党友の支持を最も集めた河野太郎行政改革担当相(58)を、国会議員らの決選投票で破った。党員らの切実な思いより、国会議員の事情を優先した「永田町の論理」による選択ではなかったか。
 岸田氏は十月四日に召集される臨時国会で、内閣総辞職する菅義偉首相=同(左)=の後任首相に指名される。ただ十一月までには衆院選、来年夏に参院選が行われる。これら選挙に勝利できなければ、短命内閣となる可能性がある。
 岸田氏は一回目の投票で二百五十六票を獲得して一位だったが、河野氏とは一票差で過半数に届かず上位二人の決選投票となった。
 一回目の投票で岸田氏が得た党員・党友票は百十票で、河野氏の百六十九票に差をつけられた。決選投票では党員・党友票の比重は軽くなるため、党員らの支持を、国会議員が覆したことになる。
 総裁選で決選投票に持ち込まれたのは五回目、安倍晋三前首相が勝利した二〇一二年以来だ。
 このときは一回目の投票で二位だった安倍氏が、党員・党友票を最も多く得た石破茂氏を、国会議員だけの決選投票で破った。
 その後、九年近く続くのが「安倍・菅政治」である。政権中枢の意向に沿う者を重用し、国会での議論を軽んじ、国民を分断し、説明責任を果たさない独善的な政権運営は、有権者により近い意思を退け、議員の事情を優先した「永田町の論理」の帰結ではないか。
 岸田氏は「国民の信頼を回復する」として、党役員への中堅・若手登用などの党改革案を掲げた。ならば、自らも関わった「安倍・菅政治」をどう総括し、何を引き継いで、何を引き継がないのか、まず明確にする必要がある。
 その評価は、自民党内の主導権争いに終始した総裁選の在り方と合わせ、衆院選での有権者の判断に委ねられることになる。

【赤旗】10月3日<主張>自民党新役員人事―疑惑への無反省が露骨すぎる
 菅義偉首相を引き継ぐ岸田文雄自民党総裁が新しい党役員人事を決めました。安倍晋三政権時代に口利き・金銭授受疑惑で閣僚辞任に追い込まれた甘利明氏が幹事長に就きました。「森友学園」問題の公文書改ざん事件の解明に背を向ける麻生太郎財務相は副総裁になります。安倍・菅政権下で噴き出した数々の金権腐敗・疑惑問題に全く反省のない布陣です。「政治とカネ」疑惑の解明と一掃を求める世論に真っ向から逆らう岸田・自民党には、国民が願う新しい政治は期待できません。
◆「説明しない」も継承か
 甘利氏は、今度の総裁選で岸田氏支持をいち早く打ち出し、熱心に支援しました。甘利氏は安倍、麻生両氏の盟友で「3A」とも呼ばれる結束ぶりです。2012年末の安倍政権復活を推進した有力メンバーでもあり、文字通り「安倍・菅政治」を支えた中心の一人です。甘利氏の幹事長就任は、麻生副総裁と合わせ、岸田新体制が人的にも「安倍直系」であることを改めて示しました。岸田氏が売り物にする「生まれ変わった自民党」とはかけ離れた姿です。
 なにより甘利氏は、自らの金銭疑惑への説明責任を果たしていません。同氏は、都市再生機構(UR)とトラブルがあった建設業者からの依頼で補償交渉の口利きをし、見返りに大臣室などで現金を受け取った疑惑が16年に発覚し、経済再生相を辞任しました。その時は、国会で一切説明しないまま、健康問題を理由に国会を長期間欠席しました。検察当局は甘利氏と秘書を不起訴にしましたが、同氏は説明から逃げています。
 甘利氏は1日の幹事長就任会見で疑惑について、秘書がやったことで寝耳に水などと責任逃れに躍起となりました。十分説明したなどと言い張りましたが、不起訴後の記者会見はわずか10分ほどで終わり、当時から「不誠実」と厳しく批判されていました。絶対にあいまいにできません。野党が求めている、甘利幹事長の国会での説明に与党は応じるべきです。
 幹事長は資金などを差配できる党の中枢ポストです。河井克行元法相・案里元参院議員の大型買収事件をめぐる党本部からの1・5億円の資金提供も安倍前首相とともに当時の二階俊博幹事長の責任が問われています。自分の疑惑についてフタをしたままの甘利幹事長に、資金提供問題の徹底調査ができるとは思えません。
 また党人事では、安倍政権時の14年、支持者らが参加した観劇ツアーの収支をめぐる政治資金規正法違反が明らかになり経済産業相を辞任した小渕優子氏が組織運動本部長として要職に復権しました。安倍・菅政権で怒りを買ったのは続発した疑惑隠しです。不信を招いた「説明しない政治」を継承する岸田氏の姿勢は重大です。
◆改憲姿勢もあらわに
 総裁選で安倍前首相が強力に支援したタカ派の高市早苗氏の政調会長就任は、あからさまな改憲シフトです。高市氏は1日の会見で、さっそく党の総選挙公約集に「憲法改正の実現に向けた項目は柱としてしっかりと立てさせてもらう」と表明しました。安倍改憲路線を引き継ぎ、任期中の改憲を目指す岸田体制の危険を浮き彫りにしています。「安倍・菅直系体制」を終わらせ、政権交代を実現することがいよいよ重要です。