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【赤旗】デジタル法案 監視国家と治安体制(上),(下)
2021年4月28日
【赤旗】4月23日《デジタル法案》監視国家と治安体制(上)―経済研究者 友寄英隆さん
 デジタル法案の危険性について、経済研究者の友寄英隆さんに寄稿をお願いしました。

 菅義偉内閣のデジタル関連法案は、これまでの国会での質疑を通じて、その危険な性格がしだいに明らかになってきました。菅内閣のデジタル改革は、安倍晋三前内閣のときから強化されてきた治安体制を情報基盤の面から支えるものでもあり、その危険性を決して軽視してはなりません。
 菅内閣のデジタル改革の危険性は、デジタル技術が原理的に持っている特徴(情報処理の集積・流通・検索の容易さ、不可視性など)を背景としています。それは、デジタル技術の利便性を前提としているために、その危険性が隠されてしまうのです。
 例えば、今では多くの人がスマホを使って、移動中も日常的に連絡を取り合っています。また、スマホにはデジタルカメラも搭載されているので、フィルムを入れて、暗室で現像しなくても、いとも簡単に写真や動画を撮って保存できるようになりました。 
 スマートフォン、インターネット、コンピューター、メール、デジタルカメラ、デジタルテレビなどなど、すべてデジタル化の最先端の技術の応用によるものです。こうしたデジタル技術の発展は、人間社会のさまざまな分野での利便性を高めることになりました。
◆情報処理が容易
 しかし、情報のデジタル化は、アナログ時代にはなかった新たな危険性を拡大しています。
 デジタル化の情報処理は、コンピューターを利用して、きわめて簡単に膨大な情報の集中・集積・流通、検索を行うごとができます。スマホの個人情報は、ネットを通じてIT(情報技術)大企業に吸い上げられてビッグデータとして集積しています。地方自治体の個人データを政府に集中したり、何千何百万の個人情報を小さなUSBメモリーにコピーしてかばんに入れて持ち運んだり、パソコンでワンクリックして必要なデータを瞬時に検索して引き出すことができます。 
 デジタル化による利便性は、同時に、その情報処理の管理の方法を少しでも誤ると、きわめて危険なものになります。国家が住民データをもと個人の活動を監視したり、数百万人の個人情報が簡単に大企業に流出したりします。
◆不可視の「空間」
 コンピューターでは、徹底的にデジタル化された情報が電子的に高速処理されるために、その過程は、人間にはまったく不可視的な(目に見えない)ものとなります。
 サイバー空間(デジタル情報の世界)は、コンピューターが日常的な情報処理の結果として生成・収集・累積するビッグデータがネットワークを通じてグローバルに拡大した仮想的な空間です。つまり、サイバー空間は、情報処理の「不可視性」をグローバルに拡大した世界であり、そのなかで個人情報がどのように処理されるかもまったく「不可視」になります。
 菅内閣の「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針(2020年12月)では、「基本原則」として、「ベース・レジストリ」による「データ共通基盤の構築」を強調しています。「ベース・レジストリ」とは、「人、法人、土地、建物、資格等の社会の基本データ」「社会の基盤となるタベース」のことです。菅内閣が決定した「デジダル・ガバメント実行計の計画」(20年12月)では、「デジタル社会においては行政機関が最大のデー夕保有者であり行政自身が国全体の最大のプラットフォーム」になる、と強調しています。(つづく〉

【赤旗】4月24日《デジタル法案》漢詩国家と治安体制(下)
 菅義偉内閣の「デジタル庁設置法案」では、「第6条 デジダル庁の長は、内閣総理大臣とする」となっています。
 つまり、デジタル庁は、単に一つの庁が増えるということではないのです。内閣総理大臣のもとにあらゆる情報の指揮権を集中して、国家が「最大のプラットホーム」になるということです。行政のあり方、国家の基本的な構造にもかかわる問題です。
 行政のデジタル化の法制化によって住民のマイナンバーやプロファイル(人物記録・履歴)などの個人情報が累積・流通する過程は、デジタル技術の「不可視性」のために、ブラックボックス化します。予算の計上や執行などの指揮命令権を持つデジタル庁の指揮のもとに国家に個人情報が集中すると、知らない間に国民の民主的な櫓利が踏みにじられ、自由を抑制する監視国家になる危険があります。 
◆国家による監視
 菅内閣の「デジタル社会形成基本法案」が示す基本理念には、「個人情報保護」の文言がありません。プライバシー権なきどの人権保障をないがしろにしたまま、個人データの利活用を推進する内容です。 
 日本の個人情報保護の現行法は、諸外国と比べても、きわめて不十分です。むしろ抜奉的な改善・強化こそが求められます。例えば、個人情報委員会の権限を強化して、行政機関や警察機構などに対して厳しい監視を行えるようにすべきです。
 現行の個人情報保護法では、民間事業者、行政機関、独立行政法人のそれぞれ別の3本の法律にして、個入情報を分散管理して、なるぺく集約できないようにして保護を図ってきました。しかし、菅内閣は3法を統合して、関係機関が個人情報を容易に共有できるようにします。その結果、所得や資産、医療、教育など膨大なデータが政府に集中し、国家による個人情報の監理が進むことになります。
 菅内閣は、デジタル改革の目標を「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」としていますが、これは、「監視の網の目から誰一人取り残さない」ということでもあるのです。
 日本では、安倍晋三前政権のもとで、反動的な治安立法が次々強行されてきました。例えば、2013年の特定機密保護法、15年の憲法違反の安保法制(戦争法)、17年の組織犯罪処罰法改正(共謀罪:現代版の治安維持法)などなど、いずれも国民の強い反対を押し切って成立しました。
 菅内閣のデジタル改革は、デジタル技術そのもののもつ危険性と「新自由主義」という反民主主義的な政治・行政が結びつくことによって、こうした「治安体制」を情報体制の面から支える「監視国家」を実現するものです。すでに、警察などへの「捜査照会」の名目で利用される懸念が指摘されています。
 菅内閣のデジタル関連法案は、それ自体は治安立法ではありません。しかし、個人情報を国家が一元管理して、マイナンバー機能と一体化すれば、「治安体制」にとって不可欠な「国民監視」の技術的基盤となりまず。
◆コロナ禍に乗じ
 コロナ禍を利用した新たな「治安体制」強化の策略にも警戒が必要です。
 すでに、昨年4月、最初のコロナ対策の「緊急事態宣言」を発令するさいの国会での質疑の中で、安倍首相(当時)は、「今般の新型ウイルス感染症への対応を踏まえつつ」、「(憲法改正において緊急事態条項を検討することは)極めて重く大きな課題だ」(20年4月7日、衆院議院運営委員会)と強調しました。
 こうしたコロナ対策に乗じた「治安体制」強化の新たな策動も念頭において、菅内閣のデジタル改革の危険性をしっかりとらえることが必要です。