消費税の「総額表示」―負担感薄め、次の増税へ「地ならし」(「赤旗日曜版」)
2021年4月18日
【赤旗日曜版】4月48日 消費税の「総額表示」―負担感薄め、次の増税へ「地ならし」
4月1日から消費税の「総額表示方式」が義務化されました。
これまで商品やサービスの価格表示は、主として本体価格と消費税を別に表示する「外税方式」が取られていました。
本体価格が500円の場合、外税方式の価格表示は「500円プラス消費税」となります。総額表示方式では、税率8%の食料品は価格と消費税の総額の「540円」税率10%のものは「550円」と表示されます。総額が明示されていれば「550円(税抜き価格500円)」「500円(税込み550円)」などの表示も認められます。
消費者からは「支払う額が分かりやすい」という声がある一方、「値上がりした」という反応が少なくないと報道されています。
事業者には、ラベルの貼りかえなど煩雑な手間がかかりました。
大企業では従来の本体価格をそのまま消費税込みの「総額」とし、実質約9%の値下げをしたところもあります。しかし、中小事業者は「総額表示」を受け入れざるを得ませんでした。
小売り・卸売り・製造・外食の28事業者団体は昨年8月、「消費税の本体価格表示の恒久化に関する要望」を政府に提出。「価格表示の方法はそれぞれの業界の適性にあわせて事業者の選択に任せていただくこと」を求めました。全国商工団体連合会は今年1月、「消費税『総額表示』の押し付けに反対し当価格表示は自由』の声を大きく広げましょう」と呼びかけるアピールを発表して運動を進めてきました。
「価格表示は自由(に)」「事業者の選択に」という要求は、税率変更のたびに表示替えの煩雑な負担を迫られる事業者にとっては当然の要求です。
商品・サービス価格に消費税が含まれる総額表示は、消費者がいくら消費税を払ったのかが分かりにくく、痛税感が薄れます。増税されても価格に埋もれ、「物価が上がった」という感覚になりがちです。総額表示は消費税増税の「地ならし」と言われるゆえんです。
菅義偉首相は昨年9月の自民党総裁選で「行政改革を徹底して行った上で消費税は引き上げざるを得ない」と発言。後で「将来的な話』と修正しましたが、財源といえば消費税という姿勢です。コロナ禍の復興財源を名目に消費税15%への増税論も出ています。
消費税をなくす全国の会の調査(昨年5月発表)では、消費税10%で生活が苦しくなった人は8割を超えます。
世界ではコロナ対策として、56ヵ国・地域で付加価値税(消費税)減税を実施しています。日本でも野党共闘の共通政策に消費税5%を掲げるよう声を届け、野党連合政権の樹立で減税を実現しましょう。
もともと消費税は富裕層や大企業に軽く庶民に重い、格差を拡大する最悪の不公平税制です。応能負担で財源を確保し、消費税を廃止すれば暮らしの大きな支援となり、総額表示など事業者の負担も一気に解決します。
木口力(きぐち・りき 消費税をなくす全国の会常任世話人)