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課税新時代―横浜市立大学教授 上村雄彦さんに聞く 上、中、下 (「赤旗」)
2021年4月10日
【赤旗】4月6日 課税新時代(上)―横浜市立大学教授 上村雄彦さんに聞く
(聞き手の質問は―で、中見出しは=で表示しています)
 貧困と格差、気候危機、感染症の大流行。現代社会の課題は地球規模です。それらを解決していく手段の一つとして、地球規模で税制を敷くグローバル・タックス(国際連帯税)が議論されています。さまざまなグローバル・タックスを研究し、後押ししてきた横浜市立大学教授の上村雄彦さんに聞きました。(聞き手 杉本恒如)
 ―新型コロナウイルスの世界的大流行から1年以上。地球規模課題が全人類に襲いかかっているようです。まさに、地球規模の課題を自分事に感じざるをえな時代です。
 世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長はワクチン・ナショナリズム(国家主義)に懸念を示しています。とにかく自分の国が助かればいいと、先進国がワクチンを大量に購入して、お金のない途上国はワクチンが不足する状況です。命の格差が広がっています。
 経済が停滞しているのに、株価は高騰しています。中央銀行が発行した大量のお金がマネーゲームに流れ込んでいるからです。多くの人が経済的に困窮しているのに、富裕層や多国籍企業はどんどん利益を増やしています。
 =課税逃れる企業
 しかも、彼らはまともに税金を払っていません。タックスヘイブン(租税回避地)に資金を移して課税を逃れています。特に米国企業のGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)にマイクロソフトを加えたGAFAM(ガーファム)は国際税法の不備をついて攻撃的な租税回避を行い、ぼろもうけしています。
 コロナ危機のもとで世界の無情な政治経済機構が露呈しています。主権国家体制の限界、あるいは資本主義体制の限界といってもよいでしょう。 
 ―グローバル・タックスの役割が大きくなりそうです。
 各国の大規模な財政出勤による赤字をどう補てんするのか。途上国と先遥国の格差をどうするのかや気候危槻対策の財源をどうするのか。あるいはタックスへイプンにどう対処するのか。
 これらすべての地球規模課題を一網打尽にできるのがグローバル・タックスです。そうであるならば、なぜすぐにやらないのか、という感じですね。
 ―内外でグローバル・タックスへの注目が高まっています。
 そうですね。経済協力開発機構(OECD)は「デジタル経済への課税」に取り組み、国際税法を大転換させるような新万式(合算課税)の導入を検討しています。実現すれば、GAFAMなどのIT(情報技術)企業から税金をとって、彼らの独り勝ちを抑える道へ一歩踏み出せます。
 =金融取引に税を
 欧州連合(EU)も動いています。コロナ対策で96兆円規模の欧州復興基金をつくりました。EUで債券を発行するとか、加盟国の分担金を引き上げるとか、財源づくりに取り組節でいますが、全然足りまぜん。そこで金融取引税の導入が選択肢にあがっています。
 金融取引税は、株式、債券、通貨、デリバティプ(金融派生商品)などの金融商品を売買するたびに低率の税金がかかる仕組みです。1秒間に1000回以上売買するような投機的取引を抑え、マネーゲームに制限をかけられます。EUでは2011年以降ずっと検討され、停滞気味でしたが、コロナによって図らずも議萎論が再活性化している状況です。
 日本でもグローバル・タックスが注目されています。巨額の財政赤字をどうするか、感染症対策の財源をどうするか、という観点から論じられています。通貨取引に課税するトービン税をやろうという声が政府の会議のメンバーからもあがっています。 
 超党派の「国際連帯税の創設を求める議員連盟」は.議員立法で国際連帯税の実現をめざすことを3月9日の総会で決めました。画期的なことであり、犬いに期待しています。(つづく)

【赤旗】4月7日 課税新時代(中)
 ―グローパル・タックスは3本の柱に整理できているそうでね。
 第1の柱は、各国の課税当局が所得や資産などの課税情報を共有してタックスヘイプーン(租税回避地)をなくしていくことです。
 個人レベルでは、非居住者の金融口座情報を各国の課税当局が共有するための「自動的情報交換(AEOI)」制度ができています。2014年に経済開発機構(OECD)が国国際基準を公表し、日本では17年から実施されています。
 私もタックスヘイブンのスイスに半年間住んだときに経験しました。銀行口座をつくろうとしたら、「あなたの銀行口座の情報あなたの国の課税当局に知られます」という契約書にサインを求められました。応じないと口座をつくれません。
 AEQIにはぼとんどの国が加盟していますから、どこにいようとも日本人の、金融口座情報は国税庁に把握されるということです。
 =ルールを共通化
 多国籍企業に対してはOECDを中心に同様の取り組みが進んでいます。多国籍企業がどの国でどんな活動をしてどれだけの売り上げがあるか、すべて報告させています。さらに企業の所得の定義などのルールを世界で共通化じて適正な課税をしようどしています。
 これらはグローバル・タックス全体の土台をつくる作業とも位置付けられます。課税に必要な課税べースの情報を把握し、ルールを共通化して地球規模で謀税するための条件を整えるのです。そのうえで国境を越えた革新的な税制を導入していくわけです。
 ―さまざまなグローバール・タックスが第2の柱でず。現時点で重要な税制は?
 3種類あります。金融取引税、デジタル課税、地球炭素税です。 
 欧州連合(EU)ではフランスとイタリアがすでに金融取引税を導入し、10ヵ国が導入のための交渉を続けています。1月からポルトガルがEUの議長国になり、EU全体で実施しようと積極的に動き始めています。
 フランスとイタリアの金融取引税は株式の取引に絞って課税するものです。ボルトガルはデリバティプ(金融派生商品)取引にも課税できないかと提案しています。これには欧州のNG○が「ナウ・アンド・ネバー(いましかない)」という言葉で支持を表明しいます。償券や通貨を含むあらゆる金融商品の取引に課税する包括的な金融取引税を求めるものの、第一歩としてポルトガル案を後押しするといっています。
 EUは2024年までに欧州復興基金の財源案をつくって26年から導入するという計画を示しています。金融取引税が浮上する可能性はあります。 
 =よいアイデアも
 金融取引税の一種である通貨取引税〈トービン税〉は日本でも議論されています。ただし東京だけで諜税したら資本が海外に逃げるから世界で一斉にやらなければ実施できないとの批判があります。この点でよいアイデアがあります。フランス主導で開発資金の創出のあり方を検討しだ「革新的開発資金に関するリーディング・グループ」の専門家会議の案です。
 現在ほとんど通貨取引は多通貨同時決済銀行を通して行われています。時差のせいで決済価格が変動するリスクを避けるだめ、どんな通貨の取引でも同時に決済する銀行をつくったのです。そこでは通貨取引のたびに手数料をとるので、同時に税金を徴収すれば、資本逃避の可能性は消えてなくなります。改めて検討する価値があるアイデアです。
 デジタル経済への課税については、多国籍企業が世界であげた利益を合算し、全体利益を把握すまる方式(合算課税)が検討されています。その税収の一部を感染症対策などの地球規模課題に回せば、新しいグローバル・タックヌになります。
 二酸化炭素の排出に課税する地球炭素税は各国レベルですでに導入されています。新たに共通の国際課税ルールをつくり、気候危機対策のために活動している緑の気候基金の財源施したらよいと考えます。(つづく)

【赤旗】4月8日 課税新時代(下)
 ―グローバル・タックズを崇施すれば巨額の税収が生じると試算されています。
 金融取引税や地球炭素税のほかにも、さまざまなグローバル・タックスが世界で検討されています。多国籍企業利潤税、富裕税、武器取引税などがあります。税収についても多くの誠算があります。
 それらすべてのグローバル・タックスの税収試算を合計すると、およそ2.5兆㌦(272兆円)になります。国連買易開発会議(UNCTAD)は持続可能な開発目標(SDGs)を途上国全体で達成するためには年2・5兆㌦の資金が不足すると試算しています。理論上この資金不足をほぼ埋める額がグローバル・タックスによって生み出されます。
 ―グローバル・タックスの第3の柱は新たな意思決定の仕組みを創造することですね。
 グローバル・タックスを実現する過程では、グローバル・ガバナンス(国際問題に関わる意思決定の仕組み)が変革されて民主化されます。国際機関が大きく変わります。
 =国益に縛られず
 現在の国際機関は各国の分担金や拠出金によって成り立っています。理事会のメンバーは基本的に政府代表のみです。政府代表の第一の目的は国益ですから、国益同士の妥協で物事が決まります。
 太国が一番大口の資金を出すので、往々にして大国の意向が反映されます。少数の富める人々が運営し、大多数の貧しい人々の意見をあまり反映しない仕組みです。「1%の、1%による、1%のためのガバナンス」と呼ばれます。地球益をめざして行動したくても、現在の国際機関ではできないのです。 
 グローバル・タックスが財源になると状況が一変します。国際機関が自主財源を持つので、各国の国益に縛られず、地球益をまっすぐ遣求できます。納税者は多数で多糠ですから、情報を公開して説明責任を果たすことが中心課題になります。資金の流れを透明にし、可能な限り多様な立場の人が入って民主的に使い道を決めなくてはいけなくなります。国際機関の意思決定の仕組みに大きな構造変化が起こるわけです。
 ―すでに実施されているグローバル・タックスもあります。
 主に国際線の航空券に税金を課す航空券連帯税がそうです。フランスや韓国、アフリカ諸国などが導入しています。その税収を財源としてユニットエイド(UⅣITAID)という国際機関が創設されされました。感染症で苦しむ途上国の人々に医療品と診断技術を供給する機関です。
 ユニットエイドの理事会13人中9人は政府代表ですが、市民社会からも2人の代表が入っています。ほかの1人は財団、1人は国際機関の代表です。市民社会が政策決定の中核に入り、現場の思いを持ち込めるのです。
 透明性や民主性を欠く現在のグローバル・ガパナンスを変革する核に、グローバル・タックスはなりえまます.
 =生存危機の時代
 主権国家が国益に固執している間に人類は生存危機の時代に入ってしまいました。自国だけがワクチンを確保しても、コロナ危機は他国から舞い戻ってきて共滅します。自国経済のために二酸化炭素を排出し続ければ、気候危機が進んで共滅します。体制を変えない限り、生存危機は深まっていくでしょう。 
 ―市民社会の役割が犬きいのでは。
 市民社会ががんばらないと、まずはグローバル・タックスが実現しません。国家は国益第一、企業は利潤第一ですから。国家の利益にも経済の利益にもとらわれない市民社会が主役になるでしょう。
 市民社会の成功例はあります。対人地雷全面禁止条約やクラスター爆弾禁止条約、核兵器禁止条約を実現させました。金融取引税を政治課題に押し上げてきたのも市民社会のがんばりでした。鍵はネットワークとパートナーシップです。世界のNGOが網状につながりつつ、同じ志をもつ国家や政治家、企業と連携することです。
 そうした変革を主導できるのが市民社会なのです。(おわり)