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政権に翻弄された日銀(上)(下)「赤旗」
2021年4月3日
【赤旗】3月26日 政権に翻弄された日銀(上)
 アベノミクス(安倍晋三前政権の経済政策)を支えた『異次元金融緩和が行き詰まり、出口さえ見えない事態に陥っているこの時期、前日銀総裁の白川方明(まさあき)氏が「中央銀行は漂流しているのか?」という寄稿文を『世界』4月号に載せ、注目されています。白川氏と国会で論戦した経験を持つ日本共産党の佐々木憲昭元衆院議員に、この寄稿文を読んでの感想文を寄せてもらいました。

 元衆院議員佐々木憲昭さん

 白川氏は、西野智彦著《『日銀漂流(2020年』11月、岩波書店)に触発され、「中央銀行で長く働いた人間の立場から見える光景を説明」するのは、「義務かもしれない」とし、黒田東彦日銀総裁のもとですすめられた金融緩和政策を批判しつつ、自身の見解を明らかにしてます。
 安倍首相と対立
 白川氏が日銀総裁を務めたのは、08年3月から13年3月までの5年間でした。リーマンショック、ユーロ危機、東日本大震災が勃発し、2度も政権交代が起こる激動の時代でした。政府与党から「大胆な金融緩和」を求められ、日銀は「激しい批判に晒(さら)された」(寄稿文)と述べています。 
 白川氏は、政府との対立を国民の前にさらけ出さないよう苦闘しながら妥協を繰り返してきました。しかし次第に追い詰められ、ついに安倍首相(当時)と決定的に対立し、13年3月に辞職に追い込まれました。
 退任のとき、議員会館の私の事務所にあいさつに来られた白川氏が「いまの動きは危険だと思います」と、心配そうに話していたのを覚えています。
 「リフレ派」とは
 白川氏を攻撃し「大胆な金融緩和」を求めた人々は「リフレ派」と呼ばれています。
 リフレとはリフレーションの略で、意図的にインフレーション(物価上昇)を引き起こすことをいいます。
 彼らはこう主張しました。
 「デフレは貨幣現象」だから、大胆な金融綴和おこないインフレにすれば「デフレ脱却」は可能だ。日銀は2%の「物価目標」をかかげ、人々の心理に働きかけるべきだ。これから物価が上がると思えば、いま買ったほうが徳だと考えて製品購入を急ぐ。その結果、景気がよくなり企業は値上げをやりやすくなり、物価が全般に上昇するのだ、と。
 このリフレ派の主張に「違和感」を覚えた白川氏は、寄稿文で「そうしたことを今でも信じる人は少ないと思う」と指摘。日本の実態は「以前は公理として扱われていたことが実は間違いであったことを示唆している」という米国の経済学者ローレンス・サマーズ氏の言葉を引用していまず。
 大企業力ネ余り
 私は、家計収入が低迷し社会に資金需要がないのに、日銀が大胆な金融緩和をおこなっても。日銀と銀行の間にジャブジャブお金がたまるだけだと考え、10年9月8日の衆院財務金融委員会で、日銀総裁の白川氏にききました。
 「売り上げも設備投資も低迷しているのに、大企業の内部留保だけが増えている」「GDP(国内総生産)の6割を占める家計を活性化しなければ資金は流れないのではない」
 これに対して白川総裁は「効果を上げるにば末端部分の政策との関連がたいへん大事だ。金融だけでは限界がある」と答えました。そのうえで「ご指摘のように特に大企業については手元資金が非常に潤沢だ。これは各種の統計でも確認できるし、わたしどもが企業経営者と会うど、『手元に資金は潤沢にある。問題はこの資金を使う場所がなかなかないのだ』ということを、金融界の経営者からも企業経営者からもしょっちゅうお聞きする」と述べたのです。
 なかなか面白い答弁でしたので、その後、私は演説会でこの話を何度も紹介しました。白川氏が退任のあいさつにこられだとき、その話をしたら、「そればうれしいですね」といってくれたのが印象的でした。(つづく)
 
【赤旗】3月27日 政権に翻弄された日銀(下)
 自民党が野党に転落していた時期、安倍晋三氏はリフレ派にすっかり心酔し、衆織院解散(2012年11月10日)の翌目、「建股国債をできれば日銀に全部買ってもらう」「輪転機をぐるぐる回して、日本銀行に無制限にお札を刷ってもらう」などと発言しました。
 これには、経団連会長の米倉弘昌氏も驚き、「大規模というより無鉄砲。世界各国の禁じ手のような政策をやるのは無謀に過ぎる」と批判しました。これで2人の仲は冷え込み、再開された経済財政諮問会議のメンバーに米倉氏の名前はありませんでした
 安倍前首相は2%の「物価目標」にごだわり、政府と日銀の間の「共同声明」に強引に盛り込みました。しかし、白川氏は「私自身はそうした政策提案が有効だとは思っていなかった」(寄稿文)と述べています。
 安倍氏が「私ど同じ考え方を有する人物と評価し、日銀総裁候補としで推したのが黒田東彦氏でした。黒田氏は、衆院議院運営委員会の聴聞会(13年3月4)に出席し、「2%の物価目標」を「2年程度」で達成すると意歓満凝でした。それに輪をかけたのが副総裁候補の岩田規久男氏で、他の野党議員のその達成に「職をかけるか」と問われ、「それで結構でございます」と答えたのです(同3月5日)。出席していた私は、この答弁にあぜんとしました。 
 結果はどうでしょう。白川氏も述べているように、「結局、物価は上がらず、直近の消費者物価の前年比上昇率はマイナス」(寄稿文)でした。2%目標の達成は6回も先送りされ、あげくの果てに18年には目標から消されてしまいました。しかし、誰一人、責任をとって辞職した人はいません。
 膨らむ・日銀資産
 異次元緩和のもとで、日銀の総資産は膨らみ続け、13年3月末の164兆円から20年12月末の702兆円へと4・3倍、国内総生(GDP)を超えました。
 国債の目銀保有率は、13年3月末の13%から昨年末に45%まで高まり、その額は535兆円にのぼっていまず。財政法第5条が禁じてる「国債引き受け」とほとんど変わりありません。しかも、株式保有につながる上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(REIT)、社債など、さまざまな資産を買いまくりました。
 このような「爆買い」は、市場をゆがめるだけではありません。白川氏は「大量に購入した資産が値下がりし損失を計上した場合、損失は最終的には国民の負担になる」「こうした状況は、いつかは混乱なく『正常』な世界に戻せるのだろうか」(寄稿文)と疑問を呈しています。
 最終的な拠り所
 日銀のあり方について、白川氏は「最終的な拠(よ)り所は中央銀行に対する国民の支持や共感である」と述べています。それは、「自分たちの暮しを守ってくれる」「専門家として高い判断能力を有している」という「信頼感に根差すものである」と(寄稿文)。  
 私たちは、白川氏が総裁になる以前から、日銀が不当な「金融緩和」圧力にずるずると妥協してきたことを手厳しく批判してきました。
 白川氏の著『中央銀行』では、日本共産党の大門みきし参院議員が「日銀は一線を越えてしまった」と批判したと紹介しています。白川氏は反論はしたが「主張の一部分については共感していた」と書いています。そしてこのような「議員がいなければ、金融政策に関する論議はバランスを欠き、一方向に偏ったものになった」と述べています。
 伝統的なセントラルバンカーであった白川方明氏は、政権と厳しく対峙し(たいじ)する日本共産党の議員に、どこか心を許す部分があったのかもしれません。