2021年の世界経済―不公正な社会を転換する年に 他に「日刊ゲンダイ」の首相会見批判
2021年1月9日
【赤旗】1月4日<主張>2021年の世界経済―不公正な社会を転換する年に
新型コロナウイルス感染症の大流行は、世界が抱える矛盾を浮き彫りにしました。打撃は貧困層ほど大きく、超富裕層は危機に乗じて富を増やしています。一方で、大企業の利益を至上のものとする新自由主義が悲惨な社会を生み出したことへの批判が高まりを見せています。2021年、危機を乗り越えてどのような新しい世界を築くかが問われます。
▼コロナの打撃は貧困層に
昨年末、国際機関が相次いで、格差の新たな拡大を警告する報告書を発表しました。国際通貨基金(IMF)は、貧困世帯がコロナに感染する比率は富裕世帯の5倍、死亡率は4倍にのぼると推計しました。貧しい人々にはテレワークを選ぶ余地が限られ、貯蓄がないため仕事を減らして感染リスクを抑えることも困難です。
世界銀行によると、1日1・9ドル(約200円)未満で暮らす極貧人口は20年に8800万~1億1500万人増え、世界人口の9%を超えました。コロナ危機で増えた「新たな貧困層」は南アジアとサハラ以南のアフリカ諸国で最も多く、貧困層は感染とともに感染対策の外出制限によって二重に打撃を受けているといいます。30年までに極貧層を世界人口の3%に減らす長期目標の達成は困難になったとしています。
超富裕層の資産は途方もなく膨らんでいます。格差について研究している、米国の政策研究所によると、同国のビリオネア(資産10億ドル以上の大富豪)600人超の総資産は20年3月以降、9カ月間で1兆ドル以上増えて4兆ドルを超えました。世界の代表的資産家であるジェフ・ベゾス氏らトップ5人の総資産は1・8倍です。経済危機対策の金融緩和が株価を押し上げたことなどが効きました。
不公正な社会への批判が政治を変えつつあります。20日に就任する米国のバイデン次期大統領は民主党の選挙公約で大企業・富裕層への課税や公的医療保険の拡充を掲げました。実現に動けば世界に影響を与える可能性があります。
欧州連合(EU)は年末の首脳会議で、コロナ危機によって打撃を受けた加盟国を支援する復興基金の創設を承認しました。規模は約95兆円です。長年の緊縮政策で傷ついた医療、社会保障の底上げに使われることが期待されます。法人税、資本利得税の増税も英国などで検討されています。
20カ国・地域(G20)では昨年、巨大IT(情報技術)企業の税逃れや法人税率の引き下げ競争を防ぐ国際的ルールづくりが進められました。今年に持ち越された合意の達成が注目されます。
▼よりよい再建に向けて
コロナ後のよりよい社会に向けた模索も始まっています。ローマ教皇は昨年10月、世界のカトリック教会に向けて自らの立場を示した回勅で新自由主義を批判し、人間の尊厳を中心に据えた社会の構築を呼びかけました。米国では資本主義批判とともに「社会主義」に希望を託す声が起きています。
日本共産党は綱領で、搾取を廃止し利潤第一主義の資本主義を乗り越えて、人間が真に社会の主人公となる社会主義・共産主義に進む展望を明らかにしています。コロナ危機から国民の命と暮らしを守るために奮闘するとともに、希望ある社会をどう築くのか、大いに語りましょう。
【日刊ゲンダイ】1月8日 危機感なき菅首相に尾身会長“ブチ切れ” 会見でアテこすり
やっぱり中身スカスカの棒読みだった。緊急事態宣言の再発令を受けた7日の菅首相の会見。その言葉からは感染爆発と医療崩壊への危機感が全く伝わってこなかった。
日刊ゲンダイは今回、所属する「日本雑誌協会」を通じて会見への参加を申請。抽選に当たり、出席することができた。
会見室に登場した菅首相は冒頭で宣言の内容を説明した後、珍しく「国民の皆さまへのお願い」とメッセージを発信。感染対策の徹底を呼びかけ「いま一度、ご協力を」と神妙な面持ちだったが、最後に「これで私からの『あいさつ』を終わります」と締めた。菅にとって、国民への重要なメッセージは「あいさつ」程度らしい。
さらに危機感の薄さを露呈したのが、東京五輪を巡る発言だ。ロイター通信の記者が「開催の決意は変わらないか」「国民の3分の2程度が開催に懐疑的だ」とただすと、菅首相は「ワクチン接種が進めば、国民の雰囲気も変わると思う」と放言。効果がまだ不透明なワクチンで、国民の感情がガラッと変わるものか。終始、手元のペーパーに目を落としていたが、この時だけは記者を見据えていたから、この程度が菅首相の本音なのだろう。
▼隣であからさまなアテこすり
深刻なのは、菅首相の隣に登壇した政府コロナ対策分科会の尾身会長との“深い溝”だ。険しい表情の尾身会長は感染抑制への4条件を提示。「国と自治体が一体感を持って明確なメッセージを国民に伝えること」と強調した。メッセージを発信したばかりの菅首相に、<あんたのメッセージは弱い><小池都知事といがみ合っている場合か>と当てこすった格好だ。
実は尾身会長、「経済を回す」ことにこだわってきた菅首相が気に入らないようなのだ。昨年10月に「新型コロナ対応・民間臨時調査会」がまとめた報告書に掲載された尾身会長のインタビューには、菅首相への怒りがにじみ出ている。菅首相が主導した「Go To キャンペーン」について、事前の相談がなかったことを指摘。〈ずっと一緒にやってきたのに、単にハンコを押すだけのような役割ではかなり不満がありました〉〈中途半端に、(相談を)あるときはして、あるときはしないというのはやめてほしい〉とぶちまけた。
「安倍政権時に“御用学者”だった尾身会長は、菅政権でガラッと豹変。苦言を呈す場面が目立ちます。安倍前首相は事あるごとに専門家に意見を求めていたが、菅首相は耳を貸さない。相当な不満を抱えているといいます」(官邸事情通)
専門家軽視が「政治決断」なら、コロナ終息は遠のくばかりだ。