“EU「コロナ復興基金」設立へ 「緊縮主導」から「連帯」への転換”と菅首相の所信表明批判
2020年10月31日
【赤旗日曜版】11月1日号 EU「コロナ復興基金」設立へ 「緊縮主導」から「連帯」への転換
欧州連合(EU)は7月、新型コロナウイルスによって深刻な打撃を受けた加盟国を支援する「コロナ復興基金」7500億ユーロ(93・5兆円)の設立で合意しました。現在、2021~27年の「中期予算」とともに欧州議会で審議が進められています。
同「基金」は、EUの執行機関である欧州委員会が債券を発行して金融市場から資金を調達し、多くの犠牲者を出したイタリア、スペインなどに財政支援を行います。
EUは、加盟国間の財政移転(ある国の赤字を他国の黒字で補てんすること)を禁じていますが、初めてEUが共同で債務を負い、加盟国支援に充てる道に踏み出しました。「欧州統合の70年の中で前例のない連帯の行動」(ロイター通信)といわれています。
ここまでの道のりは平たんではありませんでした。欧州で3月、感染の最初の「ホットスポツト」となったのはイタリア北部でした。その時、周辺国がイタリアとの国境を封鎖し、各国でマスクなどの医療資材の輸出を禁止する動きが出て、EUとしての支援は後手に回りました。イタリアは中国やキューバからの医師受け入れなどの手を打ち、EUの対応への不満が高まりました。
EUの存在理由が問われる事態に、マクロン仏大統領とメルケル独首相は、南欧諸国の要求にこたえて「復興基金」の設立を提唱。ドイツは伝統的に財政規律を重視し、欧州金融危機の際はギリシャなどへの緊縮政策の押し付けを強硬に推し進めただけに、大きな方針転換となりました。
「財政同盟の始まり」(ショルツ独財務相)、「外部のショックに対する制度的な政策対応の始まりとなるべきだ」(欧州中央銀行政策委員会のストゥルナラス・ギリシヤ中銀総裁)との声が出ており、復興基金が恒常的な制度へと発展する可能性もあります。
ただ7月のEU首脳会議は難航しました。オランダやオーストリアなど「倹約4カ国」が、共同債務を負うことや補助金による加盟国支援に強硬に反対したためです。結局、欧州委員会が提案した補助金(返済義務がない)5000億ユーロ、融資(返済義務がある)2500億ユーロの内訳は、補助金3900億ユーロ、融資3600億ユーロに変更されました。
欧州労連(ETUC)は10月6日発表の声明で、復興基金を「過去の破滅的な緊縮政策主導の対応からの変化」だと歓迎しました。同時に、コロナ危機にあたってへ欧州金融危機の際の「賃金や公共サービス、社会的保護制度の削減に基づく緊縮と新自由主義戦略の誤り」を繰り返してはならないと指摘しました。
予算承認の権限を持つ欧州議会は、「倹約4力国」との交渉の過程で削減された気候変動対策や教育・研究予算の復活、「法の支配」が脅かされている国への復興基金や予算支出差し止めなどを求めており、基金の発足にはなお曲折が予想されます。 伊藤寿庸(いとう・ひさのぶ)しんぶん赤旗外信部記者)
【スポーツ報知】10月27日 小沢一郎氏、菅首相初の所信表明演説を批判「官僚の作文を朗読するだけの総理大臣」
立憲民主党の小沢一郎衆院議員(78)が27日 までに自身のツイッターを更新。26日に召集された臨時国会で初の所信表明演説を行った菅義偉首相(71)の政治姿勢を批判した。
この日、「総理は、何ら明確な国家ビジョンや政 策を持ち合わせていないように感じる。結局は、ハンコ廃止とか携帯料金の話だけで、何の目新しさもない」と厳しくつづった小沢氏。
「肝心の年金や介護、新型コロナ対策、悪化する 近隣諸国との外交などで具体策も一切ない。官僚の作文を朗読するだけの総理大臣。引き続きしっかりと闘っていく」と続けていた。
【西日本新聞】10月27日 「のれんに腕押し、らしい演説」〝菅色〟前面 懸案素通りで政策羅列
菅義偉首相は26日の所信表明演説で、行政の押印廃止や不妊治療への保険適用といった個別の政策推進をひたすら訴えた。一方で日本学術会議の会員候補任命拒否や福島第1原発処理水の処分方針など、反発が予想される政治課題には言及しなかった。国民が変化を実感しやすいテーマを選び、実務重視の「働く内閣」をアピールしつつ、懸案に目が向かないよう狙ったようにも映る。
「国難のさなかに国のかじ取りという大変重い責任を担うこととなった」
午後2時すぎ、衆院本会議場。登壇した首相は、歓迎する与党議員の拍手が鳴りやまないうちに演説を始めた。最初に口にしたのは新型コロナウイルス対策。検査の充実やワクチン確保、持続化給付金…。第2次安倍政権からの事業を自賛しつつ「ウィズコロナ、ポストコロナの新しい社会をつくる」と訴え、デジタル庁新設に論を進めた。
「農産品の輸出戦略を年末までに策定する」「成果を実感いただきたい」。期限を区切り、数値目標を示し、実行力を強調した。個別政策の羅列で批判のしようもないのか、野党のやじは少なめ。「1億総活躍」などイメージ先行の看板を掲げ、歴史上の人物や市井の人のエピソードで持論を正当化した安倍晋三前首相の演説とは対照的だ。
全文は約7千字。平成以降の所信表明演説では平均水準だが、前政権の平均約5600字より大幅に増えた。政府高官らによると、前政権と同じく官邸主導で文案を作成。首相は推敲(すいこう)を重ね、外遊先のベトナム、インドネシアからも再三指示を飛ばしたという。
ただ、一連のコロナ対策で膨れ上がった国の借金をどうするか、財政再建に向けた具体的な言及はなし。2050年までの脱炭素社会を「宣言する」としたものの、両輪をなす原発政策は「安全最優先」としか記さなかった。目指す社会像も「自助・共助・公助」「絆」と言うだけで深入りしない。
批判を浴びそうなテーマを素通りした首相の国会初演説。自民党の中堅議員はこう評価した。「野党からすれば、のれんに腕押し。菅さんらしい演説だ」 (湯之前八州)