公的年金 運用で赤字―過大な積立金 ほぼ株価対策に利用
2020年8月9日
【赤旗日曜版】8月9日<経済 これって何>公的年金 運用で赤字―過大な積立金 ほぼ株価対策に利用
公的年金の積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF、厚生労働省所管)は、2019年度の運用実績が8兆2831億円の赤字になったと発表しました。(7月3日)。
赤字の規模は、リーマン・ショックが発生した08年度(9・3兆円)に次ぐ過去2番目。コロナウィルスの感染拡大に伴う内外株価の下落が原因です。
年金積立金は06年度から、厚労省所管の特殊法人「年金資金運用基金」を改組したGPIFで運用されています。19年度末の運用資産額は150・6兆円で、年金基金では世界最大の市場運用額です。GPIFは公的年金保険料のうち給付に回した残りを積み立て、内外の株式・債券に投資しています。
年金積立金の運用について、多くの人が「誤解」させられていることが二つあります。
一つは、国民の負担軽減のために積立金が運用されているという誤解です。政府は積立金を被保険者の利益のため、安全かつ効果的に運用すると説明しています。これは積立金の運用益が大きければ、国民の負担を軽減できると期待させることが狙いです。
積立金保有の真の狙いは政府の経済政策に利用することです。安倍内閣は14年、アベノミクス推進のためGPIFの運用方針を変更し、国内債券を60%から35%に減らし、よりの投機性の強い内外株式の割合を24%から50%に倍増させました。
10年度以降の運用実績を見ると、株式収益の変動が大きくなりました。
もうーつは積立年が年金支給の財源になっているという誤解です。
日本公的年富は賦課方式(毎年の年金支給を毎年の保険料でまかなう方式)で運営されています。財源は保険料と税金で、積立金はほとんど使われていません。
18年度の「公的年金財政状況報告」(3月発表)によると、公的年金財政の支出額は約53兆円で99%以上が年金給付です。財源は①現役世代から集めた保険料(約38兆円)②税金など(約13兆円)積立金など(約2兆円)―となっています。保険料と税金が95%以上を占め、積立金は数%です。
賦課方式の場合は給付の半年分程度の積立金があれば十分です。
国内総生産に占める公的年金積立金の割合は、経済協力開発機構(OECD)の平均で14・2%。日本はその2倍の28・8%にも達します。フランスは2・5%、ドイツは1・0%に次ぎません。アメリカは団塊の世代の退職に備えて積立金を増やしていますが、そrでも14・3%で日本の半分です。過大な積立金は取り崩して本件料の引き下げに充てるべきです。
GPIFと日銀が保有する株式は日本の株式時価総額の12%に上ります。安倍政権の株価対策最優先の政策を見直し、公的年金の積立金は安全資産中心の運用に変えるべきです。 河村健吉(かわむら・けんきち 年金コンサルタント)