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河井氏側に1億5000万円 石破元幹事長「説明できぬ使い方は許されない」
2020年6月6日
【中国新聞】6月2日 河井氏側に1億5000万円 石破元幹事長「説明できぬ使い方は許されない」
▽10倍の差、一存でできぬ
 自民党の河井克行前法相(広島3区)の妻案里氏(参院広島)が初当選した昨夏の参院選の公示前、党本部から夫妻の党支部に入金された1億5千万円について、関係者は口を閉ざしたままだ。かつて幹事長として選挙実務を担った石破茂氏(鳥取1区)は「納税者や党員に説明できない金の使い方は許されない」と指摘する。事件によってあらわになった問題点や同党の資金支援の仕組みなどを聞いた。(下久保聖司)
 ―参院選広島選挙区を舞台にした公選法違反事件を、どう見ていますか。
 秘書が起訴された段階で断定的なことは言えない。明らかなのは新人の案里氏に対する党本部の応援が、落選した現職の溝手顕正氏に比べて手厚かったことだ。私も多くの選挙を見てきたが、物心ともに今までにない態勢だった。
 昨年の参院選で自民党は秋田や新潟、滋賀などで議席を失った。その中で案里氏にここまで肩入れしたのが正しかったのか。党は検証するべきだろう。
 ―安倍晋三首相(総裁)の下で2012年から2年間、幹事長を務められました。選挙の資金支援で10倍の差をつけたことがありますか。
 ない。10倍の差は幹事長の一存ではできない。「なぜあの人だけ」と党内に不満が充満し、統制が効かなくなる。二階俊博幹事長ほどの老練な政治家がそんな判断をするかな。そうするともっと上か、推測だが。
 ―資金の分配はどのように決めるのですか。
 自民党の選挙調査は非常に精密で年代別や男女別、地域や職業、支持政党別に実施する。候補者の優劣評価はAからDまであり、例えばAなら「Aプラス」「A」「Aマイナス」まで判定する。それに基づき効率的に金を分配し、応援態勢を敷く。
 ―10倍とは言わないまでも差を付けるのですか。
 多少の差は当然つける。当落のボーダーラインの人には特に。ただ倍までにはならない。
 ―安倍首相は党本部からの資金の支出について「全て党執行部に任せている」と国会で述べて関与を否定しました。
 だったら、なぜ案里氏の応援に秘書が山口県から入ったのか。首相の許可なしで秘書がやるのか。それなら、すごい事務所だ。
 ―検察当局は1億5千万円の一部が、買収に使われたと見ています。
 わが党の会計は(税金から支出される)政党交付金と党員からいただく党費で成り立つ。党費は市町村ごとや小学校区の支部長が自分の足で歩いて集める。
 私は鳥取県連会長。党員から「俺たちの金をああいうふうに使っていたのか」「もう払いたくない」と言われる。最前線で党のために尽くしている人々に申し訳ない。納税者や党員に説明できる金の使い方をしないといかんのだ。
 ―河井夫妻は首相と近い一方、溝手氏は首相との確執が伝えられました。
 首相に物申せばポストや金がもらえず、政権に近いと10倍の金が入るとなれば、なびく人もいるでしょう。私に「後ろから弓を引くな」と怒る人もいるが、言いたいことが言えないなら何のために政治家になったのか分からない。

【法と経済のジャーナル】6月1日 政権と検察 「政界のドン」逮捕の元地検特捜部長は何を思ったか―検事長定年延長・検察庁法改正の迷走劇を元東京地検特捜部長が斬る① 五十嵐 紀男(いがらし・のりお)
 はじめに
 一連の検察を巡る問題の出発点は、1月31日に黒川弘務東京高検検事長の定年延長を閣議決定したことにある。この決定は、現職のみならずOBを含めた多くの検察関係者に大きな衝撃を与えた。
 検察官の身分の拠り所である検察庁法には検察官について定年延長の規定はなく、「検察官に定年延長はない」ということを誰もが信じて疑わなかったからだ。内閣が根拠としたのが国家公務員法の定年延長規定だ。「検事も国家公務員である以上国家公務員法の規定の適用を受けるのは当然」という論理である。
 前代未聞の定年延長までして黒川氏を検察に残すということは、次期検事総長に彼を据えようとする内閣の意図であることは誰の目にも明らかである。ということは、稲田伸夫現検事総長の人事案が内閣に受け入れられなかったということだ。内閣はそこまでやるか、一体この先どういう展開になるのかと案じていたところ、3月13日、内閣は国家公務員法の改正案に併せて検察庁法改正案を閣議決定し、そこに黒川人事を正当化するような定年延長の特例規定をもぐりこませた。
 内閣の判断によって、役職ポストのまま定年延長の恩恵を受ける者と平検事に降格して定年延長になる者との差別を設ける制度である。こんな人事制度の下で、公正妥当な検察権の行使ができるのか、検察が拠って立つ国民の信頼は得られるのか、断固阻止しなければいけない。私はそう思った。
 折しも、ネットを中心に、俳優や作家等著名人が相次いで検察庁法改正案反対の声を上げてこの運動が盛り上がりを見せ始めていたし、日弁連始め各地の弁護士会が法案反対の声明を出している。にもかかわらず、当の検察関係者が黙っていてよいはずがない。現役の検察官が動きにくいことは理解できるので、我々OBが動くしかない。
 しかし、個人の力は弱い。仲間の検察OBに連絡を取っていたら、かってロッキード事件の捜査公判に携わった検事が中心になり、黒川人事の白紙撤回と検察庁法改正案の廃案を求める意見書を法務大臣宛に提出する準備を進めていることを知った。その中心になって活動していた清水勇男元最高検検事に連絡を取り、仲間に加えていただいた。
 本来であれば、多くのOBに声をかけて賛同を求めるべきところ、5月19日(火曜日)に内閣委員会で法案の強行採決が予想されたことからとにかく急ぎ、当面の賛同者14名だけで5月15日(金曜日)に法務大臣宛に黒川弘務元東京高検検事長の定年延長と検察庁法改正案の特例規定についていずれも反対である旨の意見書を提出することとした。当日、松尾邦弘元検事総長と清水さんが法務省を訪れて意見書を提出し、都内で記者会見を開いて我々の主張を訴えた。すぐに後輩の特捜部勤務経験者ら多数の検察OBも我々に続いて行動を起こした。マスコミの多くは我々検察OBの行動を好意的に報道してくれ、幸いにも、内閣が今国会での法案成立を見送ったため、我々の目的の一つは達成することができた。また、黒川氏の定年延長問題も意外な形で同氏が辞任したことにより決着した。
 しかし、検察庁法改正案が廃案になったわけではないし、次期検事総長がどのような形で決まるのか、問題が完全に解決したとは言えない。「検察官も行政官だから内閣のコントロールに服するのは当然である」との建前論を固持し、内閣の提出した検察庁法改正案に理解を示す識者もいる。
 この一文は、この度の検事長定年延長と検察庁法改正の問題を検証することによって、検察権の独立の重要性と検察人事に内閣が介入することの危険性を理解していただくとともに、再び検察庁法改正案が国会審議の場に登場した際にとるべき行動を考える一助としてまとめたものである。(以下略)

【赤旗】6月1日 黒川氏の定年延長問題―濱田邦夫元最高裁判事に聞く
 この数日は黒川氏への訓告処分を決めたのが首相官邸かどうかという点に議論が集中しています。しかし、そもそも彼の定年延長を決めた閣議決定そのものが検察庁法違反であり、無効です。処分の日まで検事長の職にとどまっていたこと自体が違法なのです。
 ここには安倍晋三政権の物事の進め方の問題がよく表れています。「閣議決定すれば何でもできる」という姿勢です。
 検察庁法が定める定年を解釈の変更で変えてしまう。安保 (戦争) 前に先立っては、集団的自衛権の行使まで「可能だ」としました。閣議決定で憲法大原則まで変えようとする。
 国会による立法でしかできないことを閣議だけで決めてしまうのでは、法治国家とは言えせん。立法府の権限にまで踏み込んだ 三権分立の構造そのものを理解していないようです。日本の民主主義にとって危機的状況です。首相には交代してもらったほうがいいと思います。
 安倍首相は黒川氏の定年延長が「法務省の要請だった」と主張しますが、うそだと思います。本当だったら、元検事総長や東京地検特捜部OBが相次いで反対意見を表明することはなかったでしょう。
 首相は言葉に責任を持たないようです。自分のしたことを「検察庁が「法務省が」と他人のせいにする。私は、政治家には理性・知性・品性が求められると思っています。
 朝鮮戦争時に核攻撃を構想したマッカーサー氏を解任したトルーマン元米大統領は、「最終責任は大統領たる自分が負う」という意味の格言を座右の銘としていたそうです。
 メルケル独首相は新型コロナウイルス対策で演説し、国民から高い評価を得ました。心からの思が伝わる内容でした。一国の長には人間としての誠実さが必要です。
 コロウイルスの影響で世界全体が元の状態には戻らないような変化を強いられるかもしれません。労働のあり方だけでなく、人間の生き方や政府の役割などに根本的な再考を迫られかねない状況です。
 この社会不安がある中で安倍首相は、自身の都合ばかり考えて責任をとならい。信頼できません。(以下略)

【赤旗】6月6日 官房機密費 78億円の闇―安倍政権7年 返納たった37万円
 第2次安倍内閣が発足してからの7年間で使った「内閣官房機密費(報償費)」86億円余のうち領収書不要の“つかみ金”である「政策推進費」に78億円も使われたことが5日、本紙が情報公開で入手した資料で判明しました。新型コロナウイルス対策として、260億円をかけるアベノマスクや「桜を見る会」など、税金の不可解な使い方が次々と明らかになる安倍内閣。使い道を明かす必要すらない官房機密費ではどうなっているのか―。(矢野昌弘)
 2012年12月に発足した第2次安倍内閣が昨年12月末までに支出した官房機密費は計86億3100万円余となっています。
 官房機密費は、会計検査院に対しても領収書や支払先を明らかにする必要がありません。中でも「政策推進費」と呼ばれるお金は、菅義偉官房長官自身が管理し、菅氏に渡った時点で支出が“完了”したものと扱われます。
 そのため、「政策推進費」の使い道は菅氏や安倍首相官邸の裁量で決まり、領収書も不要。官房機密費の中で最も“ヤミ金”の性格が強いお金です。
 安倍内閣が19年に使った「政策推進費」は11億650万円。7年間で計78億6730万円を使っていました。官房機密費全体の91%が「政策推進費」だったことになります。
 また、19年3月の年度末までに使い切れず国庫に返納した機密費は4万3268円でした。ほとんどを使い切っていました。国庫に返納した機密費は7年度分をすべてあわせても37万円余でしかありません。
 税金の使い方がますます乱脈を極める安倍政権のさらなる監視が求められます。