コロナとメディアの責任
2020年5月2日
【赤旗 日曜版】4月26日<メディアをよむ>審議入りは火事場泥棒(臺 宏士)
新型コロナウイルスの感染拡大をどう防ぐかが問われている中、国会では問題法案が相次いで審議入りしました。検察官の定年を63歳から65歳に引き上げる検察庁法改定案と、公的年金制度の受け取り開始時期を75歳に広げることなどを柱とした年金制度改革関連法案です。
前者は、安倍政権に近いとされる黒川広務・東京高検検事長の定年延長問題が発端です。安倍政権は検察庁法でなく国家公務員ほうによる解釈で63歳を迎える前に黒川氏の定年延長を閣議決定。憲法が定める三権分立の原則を壊すと指摘されていました。今回の改訂は解釈変更につじつまを合わせるものです。
いずれも国民の前で徹底審議すべきですが、メディアはコロナ報道に追われる中で十分な誌面と放送時間を割けなかったのでしょうか。
検察庁法改定案が審議入りした16日、阿部首相は緊急事態宣言を7都府県から全都道府県に広げました。改正案は本来なら(各紙の)1面に掲載される価値あるニュースです。ところが17日付朝刊は、比較的扱いが大きかった「朝日」でも4面トップ。「東京」は7面トップ。「毎日」は5面で2段見出し。「読売」も4面で3段見出しでした。
「朝日」は「コロナ感染症対策に全力を尽くすべきさなかに、火事場泥棒的に押し通そうなど断じてゆるされない」と塩川鉄也氏(共産)の衆院本会議での批判を引用しました。同日夜の主な報道番組で唯一、取り上げたのはTBSの「NEWS23」。約5分にわたり経緯を振り返り、星浩氏は「検察中立性が損なわれるし、緊急性は全くない。成立を断念すべきだ」と断じていました。
一方、14日に審議入りした年金関連法案の扱いは各紙とも地位s区これでは審議入りしたことさえ知らない読者は多いのではないでしょうか。メディアにはコロナ収束まで審議の凍結を呼び掛けてほしいです。(だい・ひろし=ジャーナリスト)
新型コロナウイルスの感染拡大をどう防ぐかが問われている中、国会では問題法案が相次いで審議入りしました。検察官の定年を63歳から65歳に引き上げる検察庁法改定案と、公的年金制度の受け取り開始時期を75歳に広げることなどを柱とした年金制度改革関連法案です。
前者は、安倍政権に近いとされる黒川広務・東京高検検事長の定年延長問題が発端です。安倍政権は検察庁法でなく国家公務員ほうによる解釈で63歳を迎える前に黒川氏の定年延長を閣議決定。憲法が定める三権分立の原則を壊すと指摘されていました。今回の改訂は解釈変更につじつまを合わせるものです。
いずれも国民の前で徹底審議すべきですが、メディアはコロナ報道に追われる中で十分な誌面と放送時間を割けなかったのでしょうか。
検察庁法改定案が審議入りした16日、阿部首相は緊急事態宣言を7都府県から全都道府県に広げました。改正案は本来なら(各紙の)1面に掲載される価値あるニュースです。ところが17日付朝刊は、比較的扱いが大きかった「朝日」でも4面トップ。「東京」は7面トップ。「毎日」は5面で2段見出し。「読売」も4面で3段見出しでした。
「朝日」は「コロナ感染症対策に全力を尽くすべきさなかに、火事場泥棒的に押し通そうなど断じてゆるされない」と塩川鉄也氏(共産)の衆院本会議での批判を引用しました。同日夜の主な報道番組で唯一、取り上げたのはTBSの「NEWS23」。約5分にわたり経緯を振り返り、星浩氏は「検察中立性が損なわれるし、緊急性は全くない。成立を断念すべきだ」と断じていました。
一方、14日に審議入りした年金関連法案の扱いは各紙とも地位s区これでは審議入りしたことさえ知らない読者は多いのではないでしょうか。メディアにはコロナ収束まで審議の凍結を呼び掛けてほしいです。(だい・ひろし=ジャーナリスト)
【東洋経済ONLINE】4月26日 新聞・TV「政府の言いなり」の何とも呆れる実態―まるで大本営発表、コロナ禍で露呈した歪み
「お上のお墨付きがないと、今がどういう状態なのか、判断できない」「感染が確認された事業者自身がサイトで発表しているのに、行政が発表していないと掲載しない」――。
新型コロナウイルス感染拡大に関するニュースが大量に飛び交うなか、報道機関の働き手からこんな声が続出している。日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)が実施したアンケートで判明した実態だが、まるで第2次世界大戦の時代を彷彿とさせる“令和の大本営発表”とも呼べる事態ではないか。研究者らの厳しい見方も交えつつ、大メディアがほとんど報じなかったMICアンケートの内容を伝える。
「上から下まで忖度と自主規制。事なかれ主義」
MICは新聞労連や民放労連などを束ねた組織で、マスコミ系の労働関係団体として日本最大規模になる。今回は2月下旬から「報道の危機アンケート」を実施し、214人から有効回答を得た。このうちネットメディアやフリーランスなどは15人しかおらず、回答者の多くは新聞や放送の現場で取材・報道に携わる人たちだ。
「あなたが現在の報道現場で感じている『危機』について教えてください」
その問いに対する自由記述での回答からは、さまざまな“危機”が見える。(以下、自由記述の回答のみ抜粋)
・国会論戦を放送しなかったり、あるいはやっても短い。官邸記者が政権に都合の悪いニュースを潰したり、番組にクレームをつける。これは日常茶飯事。官邸記者が政権のインナーになっている
・ニュースソースが官邸や政権であること。その結果、番組内容が官邸や政権寄りにしかならない。彼らを批判し正していく姿勢がまったくない。というか、たとえあったとしても幹部が握られているので放送されない
・上から下まで、忖度と自主規制。事なかれ主義。サラリーマンばかりで、ジャーナリストはいない
・「過剰な忖度」であると現場の制作者も中間管理職もわかっていながら、面倒に巻き込まれたくないとの「事なかれ主義」が蔓延している
・コロナとの関連で会見がかなり制限され、入ることさえできなくなったものもある。不都合な質問を受けて、できるだけ答えを出したくないという意図も感じる
・記者勉強会で政府側から「医療崩壊と書かないでほしい」という要請が行われている。医療現場からさまざまな悲鳴が聞こえてきているので、報道が止まるところまでは行っていないが、「感染防止」を理由に対面取材も難しくなっており、当局の発信に報道が流されていく恐れがある
・医療崩壊という言葉についても、政府や自治体の長が「ギリギリ持ちこたえている」と表現すると、それをそのまま検証もせずに垂れ流してしまっている。実際の現場の声よりも、政治家の声を優先して伝えてしまっていることに危機感を持っている。お上のお墨付きがないと、今がどういう状態なのか、判断できない
「お上のお墨付きがないと、今がどういう状態なのか、判断できない」「感染が確認された事業者自身がサイトで発表しているのに、行政が発表していないと掲載しない」――。
新型コロナウイルス感染拡大に関するニュースが大量に飛び交うなか、報道機関の働き手からこんな声が続出している。日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)が実施したアンケートで判明した実態だが、まるで第2次世界大戦の時代を彷彿とさせる“令和の大本営発表”とも呼べる事態ではないか。研究者らの厳しい見方も交えつつ、大メディアがほとんど報じなかったMICアンケートの内容を伝える。
「上から下まで忖度と自主規制。事なかれ主義」
MICは新聞労連や民放労連などを束ねた組織で、マスコミ系の労働関係団体として日本最大規模になる。今回は2月下旬から「報道の危機アンケート」を実施し、214人から有効回答を得た。このうちネットメディアやフリーランスなどは15人しかおらず、回答者の多くは新聞や放送の現場で取材・報道に携わる人たちだ。
「あなたが現在の報道現場で感じている『危機』について教えてください」
その問いに対する自由記述での回答からは、さまざまな“危機”が見える。(以下、自由記述の回答のみ抜粋)
・国会論戦を放送しなかったり、あるいはやっても短い。官邸記者が政権に都合の悪いニュースを潰したり、番組にクレームをつける。これは日常茶飯事。官邸記者が政権のインナーになっている
・ニュースソースが官邸や政権であること。その結果、番組内容が官邸や政権寄りにしかならない。彼らを批判し正していく姿勢がまったくない。というか、たとえあったとしても幹部が握られているので放送されない
・上から下まで、忖度と自主規制。事なかれ主義。サラリーマンばかりで、ジャーナリストはいない
・「過剰な忖度」であると現場の制作者も中間管理職もわかっていながら、面倒に巻き込まれたくないとの「事なかれ主義」が蔓延している
・コロナとの関連で会見がかなり制限され、入ることさえできなくなったものもある。不都合な質問を受けて、できるだけ答えを出したくないという意図も感じる
・記者勉強会で政府側から「医療崩壊と書かないでほしい」という要請が行われている。医療現場からさまざまな悲鳴が聞こえてきているので、報道が止まるところまでは行っていないが、「感染防止」を理由に対面取材も難しくなっており、当局の発信に報道が流されていく恐れがある
・医療崩壊という言葉についても、政府や自治体の長が「ギリギリ持ちこたえている」と表現すると、それをそのまま検証もせずに垂れ流してしまっている。実際の現場の声よりも、政治家の声を優先して伝えてしまっていることに危機感を持っている。お上のお墨付きがないと、今がどういう状態なのか、判断できない
・感染が確認された事業者自身が貼り紙やサイトで公表しているのに、行政が発表していないと(うちの新聞は)掲載しない
(以下略)