増税は「リーマンショック超え」の大災厄を招く
2019年9月28日
【赤旗】9月25日 大企業現金・預金66.6兆円―バブル期超え過去最高
資本金10億円以上の大企業(金融・保険業を除く)が保有する現金・預金が2018年度に66・6兆円となり、バブル期を超えて統計を比較できる1960年度以降で最高となりました。財務省の法人企業統計で分かりました。
大企業の現金・預金はバブル絶頂期の1989年度に65兆円でした。しかしバブル崩壊後、取り崩しが進み、2007年度には31・5兆円まで減らしています。第2次安倍晋三政権が発足した12年度からは一路増加に転じました。
大企業における現金・預金の増加は、内部留保の増加に歩調を合わせたものです。大企業の内部留保は07年度の228・4兆円から18年度は368・6兆円と、1・6倍にふくれあがっています。
大企業の現金・預金と内部留保が増える一方で、労働者の賃金は低迷しています。07年度に593・2万円だった大企業の労働者1人当たりの年間賃金は、18年度は578万円へと15万円以上も減少しました。1989年の賃金、525・8万円と比較しても1割未満しか賃金は上昇していません。
大企業が利益を上げても、有効な投資先を見つけられず、社内にためこんでいることを反映しています。大企業がそのもうけを賃金や設備投資に回してこそ、日本経済の健全な発展につながります。
資本金10億円以上の大企業(金融・保険業を除く)が保有する現金・預金が2018年度に66・6兆円となり、バブル期を超えて統計を比較できる1960年度以降で最高となりました。財務省の法人企業統計で分かりました。
大企業の現金・預金はバブル絶頂期の1989年度に65兆円でした。しかしバブル崩壊後、取り崩しが進み、2007年度には31・5兆円まで減らしています。第2次安倍晋三政権が発足した12年度からは一路増加に転じました。
大企業における現金・預金の増加は、内部留保の増加に歩調を合わせたものです。大企業の内部留保は07年度の228・4兆円から18年度は368・6兆円と、1・6倍にふくれあがっています。
大企業の現金・預金と内部留保が増える一方で、労働者の賃金は低迷しています。07年度に593・2万円だった大企業の労働者1人当たりの年間賃金は、18年度は578万円へと15万円以上も減少しました。1989年の賃金、525・8万円と比較しても1割未満しか賃金は上昇していません。
大企業が利益を上げても、有効な投資先を見つけられず、社内にためこんでいることを反映しています。大企業がそのもうけを賃金や設備投資に回してこそ、日本経済の健全な発展につながります。
【PRESIDENT Online】9月28日 増税は「リーマンショック超え」の大災厄を招く ―時間が経つほど「消費の減少」が進む(藤井 聡元内閣官房参与)
▼97年3%→5%から始まった日本の凋落
消費増税で何が起こるかが、知られていない
2018年末まで6年間、内閣官房参与として内閣府に在籍していましたが、消費増税を推し進める財務省の大変な強さを感じました。政府、国会、野党、学会とあらゆる領域に増税推進派が多数を占めているんですが、そういう状況をつくり出したのは明らかに財務省。マスメディアにも大きな影響力を持ち、財界に対しても、社会保険料の負担を軽減したり法人税を減らしたりするのとバーターで増税に賛成させるという形で影響力を使っています。
財務省の勝利の最大のポイントは、経済学者を押さえたことです。
学者が真実を語れば、それがメディアを通じて政治家と世論に伝わり、増税を止める状況をつくれたかもしれませんが、吉川洋(東京大学名 誉教授)、土居丈朗(慶應義塾大学教授)、伊藤隆敏(東大・一橋大学名誉教授)といった主流派の経済学者がほぼ全員財務省の意向を汲んでいますから、その意向に反するような情報はメディア上ではごく少ないという状況が長く続きました。データそのものは政府が隠さずに公表していましたが、それをちゃんと加工してメッセージを伝えるという作業を、経済学者、エコノミスト、ジャーナリストがほとんど行ってこなかったのです。
それゆえか、実際に消費税率を上げたときに何が起こるのか、あるいは起きたのかについての基本的な事実が、世間にまったく知られていないのです。
実際に私の研究室で、エコノミストの島倉原さんとデータをさまざまに分析していく中で、「学者を押さえる」ということが、長期的にどれほど恐ろしい影響をもたらすかをまざまざと思い知りました。
まず、増税した瞬間に個人消費がほぼ増税分だけ減ります。なぜなら、家計の出費額はモノの購入と税金とに分けられますが、今どき国民の可処分所得の金額は増税する前でも後でも別に変わりませんから、家計の出費額もそのまま。だから、税金が増えればモノの購入額は必然的に減ります。単純な話です。すると、実質的な需要が減って、必然的に売れるモノが減るわけです。
この短期的な影響以上に恐ろしいのは、消費の伸び率への影響です。ご存じのように日本のGDP(国内総生産)の半分から6割程度を個人消費が占めるわけですが、その消費の「伸び率」は、税率が3%から5%に、5%から8%に上がった際、増税前の半分になっているのです。
グラフにして見れば、消費税というものが実質消費の伸び率をほぼほぼ規定していることがクッキリとわかります。1997年に3%から5%、2014年に5%から8%に税率を上げたときの実質消費の伸び率が、ガクンと下がっていることがおわかりだと思います。08年のリーマンショックや11年の東日本大震災のときでも、そうした「伸び率の下落」はまったく見られません。消費増税が、GDP成長率に対する直接の大きな障害となっていることがよくわかります。
消費増税の一番の懸念は、私はここだと思っています。消費の伸び率が下がるということは、単に目先の消費の減少にとどまらず、10年、20年と、時間が経てば経つほど消費の減少という被害が拡大していくことを意味するのです。
財務省は、国の経済運営に責任を持たない
97年に消費税率を3%から5%に上げた場合(実測値)と上げなかった場合(推計値)の実質消費を比較すと明瞭です。ここ20年超の間に推計とはいえ実質消費がトータルで約6468兆円!もの減少。リーマンショック時の落ち込みによる推計被害総額約92兆円が可愛いものに見えますよね。
バブル崩壊後、日本経済は鈍化しつつも成長じたいは続けていました。しかし、消費税率を3%から5%に上げたこのとき、日本は右肩上がりのインフレ経済からデフレ経済に突入したのです。今にいたる日本の凋落は、このとき始まったのです。(以下略―一部表現を改変しています)
▼97年3%→5%から始まった日本の凋落
消費増税で何が起こるかが、知られていない
2018年末まで6年間、内閣官房参与として内閣府に在籍していましたが、消費増税を推し進める財務省の大変な強さを感じました。政府、国会、野党、学会とあらゆる領域に増税推進派が多数を占めているんですが、そういう状況をつくり出したのは明らかに財務省。マスメディアにも大きな影響力を持ち、財界に対しても、社会保険料の負担を軽減したり法人税を減らしたりするのとバーターで増税に賛成させるという形で影響力を使っています。
財務省の勝利の最大のポイントは、経済学者を押さえたことです。
学者が真実を語れば、それがメディアを通じて政治家と世論に伝わり、増税を止める状況をつくれたかもしれませんが、吉川洋(東京大学名 誉教授)、土居丈朗(慶應義塾大学教授)、伊藤隆敏(東大・一橋大学名誉教授)といった主流派の経済学者がほぼ全員財務省の意向を汲んでいますから、その意向に反するような情報はメディア上ではごく少ないという状況が長く続きました。データそのものは政府が隠さずに公表していましたが、それをちゃんと加工してメッセージを伝えるという作業を、経済学者、エコノミスト、ジャーナリストがほとんど行ってこなかったのです。
それゆえか、実際に消費税率を上げたときに何が起こるのか、あるいは起きたのかについての基本的な事実が、世間にまったく知られていないのです。
実際に私の研究室で、エコノミストの島倉原さんとデータをさまざまに分析していく中で、「学者を押さえる」ということが、長期的にどれほど恐ろしい影響をもたらすかをまざまざと思い知りました。
まず、増税した瞬間に個人消費がほぼ増税分だけ減ります。なぜなら、家計の出費額はモノの購入と税金とに分けられますが、今どき国民の可処分所得の金額は増税する前でも後でも別に変わりませんから、家計の出費額もそのまま。だから、税金が増えればモノの購入額は必然的に減ります。単純な話です。すると、実質的な需要が減って、必然的に売れるモノが減るわけです。
この短期的な影響以上に恐ろしいのは、消費の伸び率への影響です。ご存じのように日本のGDP(国内総生産)の半分から6割程度を個人消費が占めるわけですが、その消費の「伸び率」は、税率が3%から5%に、5%から8%に上がった際、増税前の半分になっているのです。
グラフにして見れば、消費税というものが実質消費の伸び率をほぼほぼ規定していることがクッキリとわかります。1997年に3%から5%、2014年に5%から8%に税率を上げたときの実質消費の伸び率が、ガクンと下がっていることがおわかりだと思います。08年のリーマンショックや11年の東日本大震災のときでも、そうした「伸び率の下落」はまったく見られません。消費増税が、GDP成長率に対する直接の大きな障害となっていることがよくわかります。
消費増税の一番の懸念は、私はここだと思っています。消費の伸び率が下がるということは、単に目先の消費の減少にとどまらず、10年、20年と、時間が経てば経つほど消費の減少という被害が拡大していくことを意味するのです。
財務省は、国の経済運営に責任を持たない
97年に消費税率を3%から5%に上げた場合(実測値)と上げなかった場合(推計値)の実質消費を比較すと明瞭です。ここ20年超の間に推計とはいえ実質消費がトータルで約6468兆円!もの減少。リーマンショック時の落ち込みによる推計被害総額約92兆円が可愛いものに見えますよね。
バブル崩壊後、日本経済は鈍化しつつも成長じたいは続けていました。しかし、消費税率を3%から5%に上げたこのとき、日本は右肩上がりのインフレ経済からデフレ経済に突入したのです。今にいたる日本の凋落は、このとき始まったのです。(以下略―一部表現を改変しています)