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成長率鈍化の中で増税は無謀
2019年8月17日

【赤旗】8月11日<主張>4~6月期GDP―成長率鈍化の中で増税は無謀
 内閣府が発表した今年4~6月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価上昇分を差し引いた実質成長率が、前期(1~3月期)に比べ0・4%のプラスにとどまりました。前期の確定値0・7%よりも大幅な鈍化です。安倍晋三政権が強行した2014年4月の消費税増税以来の消費の不振が続くうえに、米中貿易紛争などの影響を受けた輸出の低迷によるものです。経済情勢の悪化は隠しようがありません。このような中で、今年10月からの消費税率の10%への引き上げは許されません。
▼貿易紛争で輸出が減少
 実質経済成長率の0・4%は、この伸びが1年間続くと仮定した年率換算でも1・8%にしかなりません。1~3月期の年率換算2・4%よりかなり鈍い伸びです。事前の予測では一部で「マイナス」になるとの見方すらありました。鈍化はしたものの、かろうじて「プラス」になったのは、4月末から5月初めにかけての「10連休」があり、個人消費が思ったより堅調だったためと言われます。
 主な費目別では、GDPの約6割を占める個人消費(民間最終消費支出)が前期のプラス0・1%からプラス0・6%になったとはいえ、引き続き低迷している実態は変わりません。民間企業設備投資は前期のプラス0・4%からプラス1・5%となりました。期間中に発表された大企業の決算が好調だったことなどが背景です。
 一方、米中貿易紛争などの影響を受けた輸出は前期の2・0%減に続く0・1%のマイナスでした。輸入圧力が強まっていることや設備投資が伸びたことから輸入は前期のマイナス4・3%から一転して1・6%のプラスです。その結果、輸出から輸入を差し引いた純輸出は前期のプラス0・4%からマイナス0・3%になりました。
 個人消費は14年4月に消費税の税率を8%に増税してからの低迷が打開できていません。家計の年間の消費支出は、増税前に比べ、25万円も落ち込んでいます。6日発表された6月の家計調査報告でも、実質消費支出は5月の前月比5・5%増から一転して2・8%の減です。同日発表の毎月勤労統計調査でも、実質賃金は5月の前年同月比1・3%減に続き、6カ月連続で0・5%の減でした。
 所得が増えず、消費が上向かないのは、安倍政権の経済政策では、大企業や富裕層がうるおうだけで、庶民の暮らしにその“恩恵”が回らないからです。安倍政権下での、貧困と格差の拡大は深刻です。いま必要なのは、10月からの消費税増税を中止し、消費税に頼らず国民の暮らしを応援する道に転換することです。
▼強行すれば混乱は必至
 安倍首相は、消費税の増税に伴う消費の落ち込みには「十二分の対策」を取り、「海外発の下方リスク」が顕在化する場合は、「機動的なマクロ経済政策を躊躇(ちゅうちょ)なく実行していく」としています。経済情勢の悪化を認めたものです。「対策」に巨費を投じるなら最初から増税しなければいいだけです。
 政府が売り物にしている増税と同時に実施するキャッシュレス決済でのポイント還元に必要な登録をした中小商店は、数百万ある対象商店のうち先月末でわずか約24万店にすぎません。これで増税を強行すれば、混乱拡大は必至です。増税の中止は待ったなしです。

【税理士ドットコム】8月12日消費税の軽減税率「インボイス導入」で零細業者がバタバタ倒れるってホント?
今年10月の消費税増税に伴い、軽減税率が導入されることで、消費者や事業者の間で「どういう線引きになるのか」と困惑の声が広がっているが、これとは異なる大きな変化が事業者側に訪れる。
2023年10月から、複数税率に対応した課税方式として、「インボイス制度」(適格請求書等保存方式)が導入される。これは、課税業者が税務署に納めるための消費税額を算出するための書類で、仕入業者から企業に交付される。
このインボイスの導入で、零細業者の廃業が増えるのではないかと懸念されている。たとえば、しんぶん赤旗は、財務省の影響試算で、約161万の小規模事業者が新たに年15.4万円の負担を負うことになると報じている。
なぜこのような懸念が出てくるのか。佐原三枝子税理士に聞いた。
●小規模事業者が免税事業者として、納税せずに済んでいた
「消費税率アップと軽減税率の導入は前哨戦にすぎません。おそらく消費税法改正の本丸は、4年後に迫ったインボイス制度の導入です」
なぜ本丸といえるほどの影響があるのか。
「これまで、課税売上1000万円以下の事業者は免税事業者となることができました。
病院や学校法人といった消費税の非課税売上が大きな特殊な事業者を除くと、免税事業者には、町の小さな店舗や一人で起業したばかり人といった方が該当するでしょう。
例えば、起業したばかりのコンサルタントの方が大企業と取引できたとしましょう。売上は108万円で振り込まれますが、ここには8%の消費税が乗っています。ですが、このコンサルタントが消費税の免税事業者であれば、この消費税8万円を納税することはなく、単なる売上として頂戴することができます。
一方、コンサルタント料を支払った大企業は、自社の売上にかかった消費税(仮受消費税)から、この払った8万円の消費税(仮払消費税)を引いて納税額を計算します。
大企業は8万円の消費税を差し引いたのに、免税事業者(今回の場合、コンサルタント)は納税しないため、その消費税は国庫に入りません。このように、消費税が免税事業者の手元に残ってしまうことを益税問題と言い、ある試算によるとその額は数千億円にもなるともいわれています。
インボイス制度の導入によって、この益税を一掃しようというのが政府の狙いです」
●免税事業者が課税事業者に移行せざるとえなくなる
インボイスの導入によって、なぜ益税がなくなるのか。
「インボイスには取引年月日や取引内容に加えて、対価の額、消費税の税率、消費税額が明記されており、さらに事業者登録番号を記載します。インボイスが無ければ、購入側の会社は消費税を差し引くすることができませんし、この事業者登録番号を持っていない事業者はインボイスを発行できません。
先ほど説明したコンサルタントを例にすると、コンサルタントが事業者登録番号を持っていないと大企業は消費税を控除できないので『あなたとは取引しません』といってくるかもしれません。そしてコンサルタントは、番号取得のために、売上が1000万以下でも課税事業者になる必要があるのです。そうすると、納税することになり、今までより負担が増すことになります」
●免税事業者のままだと、小さく生きていくしかなくなる
大企業と取引せず、免税事業者のままでいられないのか。
「『大企業とは取引しないから大丈夫』とは思わないでください。例えば、町の小さなお花屋さんでも、会社から『お祝いのお花をお願いしたい』と言われた時に『うちはインボイスが発行できない』と伝えると、『じゃあ他で買うわ~』となるかもしれないのです。
番号を取得して消費税を払う事業者になるのか、それとも免税事業者のままで個人客のみを相手にして小さく生きていくのか、小規模事業者としては大きな決断が必要になります。
また、インボイスには非常に事細かな内容を記載する上に、税率が2種類あるため、その事務量の負担感は倍以上のものがあります。『当社は食品は扱わないので大丈夫』とはいきません。食品を売らなくても、食品を買うことはどんな会社でも必ずあります。そのインボイスを正確に会計ソフトに入力していく必要があります。とても手で集計できるものではありませんし、ソフトへの入力であってもかなりの手間がかかります。
レジシステムの入れ替えのみならず、経理も自動化を推進するなどの取り組みが必要です。中小零細企業ではITに詳しい人材に恵まれていないことも多く、この点でも小規模事業者が取り残されていくのではないかと心配です。
とはいえ、消費税はリレーして最後は国庫に納める性質の税金です。消費税が誕生して30年以上が経過しました。このあたりでインボイス方式が導入され消費税の原則に立ち返るべきでしょう。
軽減税率の導入をタイミングに自動化を含めた経理のやり方を見直していただき、インボイス導入の時を期限として、事業の方向性を決める準備を今からしていただきたいと思います」

【LIMO(LIFE&MONEY)】8月10日消費税廃止も選択肢。代わりの財源は相続税などの増税で
消費税をいきなり廃止するのは弊害が大きいが、少しずつ税率を下げるなら選択肢だ、と久留米大学商学部の塚崎公義教授は説きます。
●消費税を廃止しても景気や所得への影響は小
消費税の増税が近づいていますが、「消費税なんて廃止してしまえば良い」と考えている読者も多いでしょう。そこで今回は、消費税を廃止したら何が起きるのかを考えてみることにします。
まずは、一気に消費税を廃止したら何が起きるのでしょうか。「我々の買い物が消費税抜きで行えるようになるので、我々の懐が暖かくなり、消費が増え、景気が良くなる」と考える読者も多いでしょう。しかし、そう簡単なものではなさそうです。
消費税は年間18兆円程度ありますから、これを一気に廃止するとなると、巨額の減税で景気が過熱してインフレになります。そうなると、日銀が金融の引き締めを行って景気をわざと悪化させ、インフレを押さえ込もうとします。
つまり、本来であれば税金が減って景気が良くなるはずのところ、その効果の多くを日銀が消し去ってしまうわけです。
これを避けるためには、何回かに分けて少しずつ税率を下げていき、最後にゼロにする、ということが必要でしょう。それならば、景気の過熱を招くことなく、日銀の引き締めを招くことなく、消費税を廃止することができるはずです。
●消費税を廃止して財政赤字を放置するのか
消費税を廃止して、そのまま他の税を増税しなければ、財政赤字が拡大します。最近はMMTという新理論(財政赤字は気にしなくて良い)が話題となっていますが、やはり財政赤字は問題です。
景気の好調を維持できるのであれば、財政赤字は小さい方が良いに決まっています。不況期には景気対策の減税は必要でしょうし、増税は景気を悪化させないように慎重に行われる必要がありますが。
というわけで、消費税を廃止するならば、景気に配慮しながらも他の税を引き上げる必要があるでしょう。
●そもそも、なぜ消費税なのか
財務省のホームページ によると、消費税率を引き上げる理由としては、現役世代のみならず高齢者世代にも広く負担してもらえるから、景気に左右されずに安定的な税収が見込めるから、という理由が記されています。しかし、これはいずれも疑問です。
消費税率が上がると消費者物価が上がるので、年金の物価スライド(物価が上がると高齢者が受け取る年金額が増える制度)によって年金額も増えます。したがって、高齢者は消費増税による支出増の一定部分を年金受取額の増加でカバーされることになり、やはり消費税は主に現役世代に実質的に負担される税だということになるわけです。
今ひとつの、消費税は税収が景気に影響されにくいという点は、その通りでしょうが、それは良いことなのでしょうか。むしろ所得税は「累進課税なので、景気が良くなって人々の所得が増えると所得税が大幅に増えて景気の過熱を防ぎ、景気が悪化すると所得税が大幅に減って消費の落ち込みを和らげてくれる」という長所を持っていて、消費税にはそれがない、ということではないでしょうか。
メリットが特に認められない一方で、貧しい人も金持ちと同率で負担させられて負担感がある、等々の問題を指摘する声もあります。
それなら、消費税を廃止して、他の税を増税しよう、というのも一つの選択肢だと、筆者は考えています。(以下略)