【AERA dot.】10月29日 古賀茂明「安倍総理は憲法9条改正より米軍と交渉し、東京五輪で航空機増便すべき」
10月24日、臨時国会が開幕した。安倍晋三総理の所信表明演説は、ほとんどニュースにする価値がない内容だったが、あえて注目すべき点を挙げれば、これまで施政方針や所信表明の演説の最後に言及される慣わしになっている憲法改正について、今回は、過去に比べて、明らかに分量が多く前のめりになっていたことだろう。
その中で、安倍総理は、「制定から70年以上を経た今、国民の皆様と共に議論を深め、私たち国会議員の責任を、共に、果たしていこうではありませんか」と、憲法9条などの具体的内容には入らずに、70年経ったから、それを変えるのが国会議員の責任だという論理で改憲を主張した。
「70年改正がなかったから時代遅れ。したがって改正すべき」という主張は、改正の内容に入らずに、改憲を正当化する自民党改憲派お得意の論理展開だ。
下村博文自民党憲法改正推進本部長も、毎日新聞のインタビューで、「七十数年間、一度も改正されなかったことがどういう意味を持つのか、この際考えてみてはどうだろうか。今の憲法が絶対的なものなのか。時代の変化に対応して変えなければならない部分もあるのではないか」と同じ論理で改憲論を展開している(10月23日付)。
内容に入らずに改憲の必要性を主張する論理としては、もう一つ、「アメリカに押し付けられたものだから変えるべき」というものがある。
この二つの論理がセットで使われるとこのようになる。
「今の憲法は、アメリカに押し付けられたものだから日本人の憲法とは言えない。しかも70年以上前の古いものだから今日の情勢には適合していない。したがって、変えるのは当然だ」
このように言うことで、内容の議論の前に、改憲が当たり前だという先入観を植え付ける作戦である。改憲の議論は、ともすれば、難しくなりやすい。一般の国民は、日常生活のことなら関心を持って話を聞くが、直接生活に関わらなければ、具体的な細かい議論にはついてこられない。そう考えているのだろう。
一方、この安倍政権の作戦である、「押し付け」+「長期間改正なしで古い」=「改正が必要」という論法は、憲法だけにしか当てはまらないというわけではない。実は、それと全く同じ論法が通用する国政の大問題がある。
それは、日米地位協定だ。この協定は、憲法より歴史が浅いが、1960年にアメリカに「押し付けられ」て成立し、それから60年近くの長期にわたり、「改定されていない古い」協定である。当時は、沖縄はまだ本土復帰を果たしておらず、事実上米国の植民地だったが、今日、その状況は激変している。
憲法9条改正について、安倍総理は、現に存在する自衛隊を憲法に書きこむだけだから、改正しても何も変わらないと言っている。何も変わらないなら、改正の優先度は低いはずだ。
地位協定はどうか。これまで繰り返し指摘されているとおり、これにより、基地周辺の人々をはじめ多くの国民が被害を被っている。改定すれば、それを大幅に軽減できる可能性がある。ならば、こちらの方が優先度は高い。一日も早く「変えるべきだ」となるはずだ。
今回は、基地周辺住民の被害を中心に語られてきた日米地位協定について、少し視点を変えて、実は、安倍政権の看板政策「アベノミクス」にとっても、大きな足かせとなっているという観点から、一日も早く地位協定を改定すべきだということを論じてみたい。
■観光立国日本でインバウンド消費8兆円の夢
初めに、地位協定とアベノミクスがどう関係するのか、簡単に解説しよう。
東京五輪に向けて、政府は東京都心上空を飛行して羽田空港に発着する国際線向け新ルートを検討してきた。
著者:古賀茂明(こが・しげあき)/1955年、長崎県生まれ。東京大学法学部卒業後、旧通産省(経済産業省)入省。国家公務員制度改革推進本部審議官、中小企業庁経営支援部長などを経て2011年退官、改革派官僚で「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。元報道ステーションコメンテーター。最新刊『日本中枢の狂謀』(講談社)、『国家の共謀』(角川新書)。「シナプス 古賀茂明サロン」主催© Asahi Shimbun Publications Inc. 提供 著者:古賀茂明(こが・しげあき)/1955年、長崎県生まれ。東京大学法学部卒業後、旧通産省(経済産業省)入省。国家公務員制度改革推進本部審議官、中小企業庁経営支援部長などを経て2011年退官、改革派官僚で「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。元報道ステーションコメンテーター。最新刊『日本中枢の狂謀』(講談社)、『国家の共謀』(角川新書)。「シナプス 古賀茂明サロン」主催
羽田空港は、成田空港との棲み分け問題もあり、国際線には十分なルートが確保されていなかった。国交省によると、海上から着陸する従来ルートでは滑走路の使用が制限され、1時間の発着数は約80回が限界。今もフル稼働の状態だ。新ルートが実現すれば1時間90回に増発でき、昼間時間帯の国際便の発着数を年間約6万回から最大約9万9千回に増やせる計算になるという(日経新聞報道)。
これは、日本政府にとって、非常に大きな意味がある。その新ルートを活用して東京オリンピック・パラリンピックのために来日する外国人観光客を円滑に受け入れることができるからだ。また、「観光立国日本」を掲げた政府の目標では、2020年に訪日外国人数4000万人、インバウンド消費額8兆円実現という青写真を描いているが、そのためにも羽田の国際線発着枠拡大は急がなければならない。
■独立国なのに首都上空の管制権がない
ところが、その新ルートが在日米軍の管轄する「横田空域」の一部を横切るルートであるため、アメリカ側が「米軍の運用上支障が出る」という理由でその利用を拒否しているために、発着枠拡大の実現に黄信号が灯っているのだ。
横田空域、あるいは、「横田ラプコン」という言葉を一度は聞いたことがある人が多いだろう。横田空域というから、米軍横田基地(東京都福生市など)の上の空域のことだと思いがちだが、実は、そんな狭いエリアではない。実際には1都9県(東京、神奈川、埼玉、群馬、栃木、静岡、長野、山梨、新潟、福島)にまたがり、しかも、最大高度7000メートルに及ぶ巨大な空域だ。この横田空域が、アメリカ空軍の完全管制下にあるため、日本は独立国でありながら、首都圏上空という自国の心臓部の飛行ルートを自由に使うことが許されていない。
今日でも民間の飛行機は、この空域を米軍の許可なく飛べないため、羽田から西に向かう飛行機は、いったん千葉の方に出て、そこから大きく南に迂回したり、北陸方面に向かう場合は、千葉の方に出てから、急旋回しながら高度5000メートル以上に急上昇してこの空域を避けて飛んでいる。そのための燃料費と時間を考えれば、壮大な無駄を強いられているわけだ。
こんなバカな話はない。いくら安全保障をアメリカに頼っているとはいえ、これではまるで植民地ではないか? と、誰もが思うだろう。
■敗戦国だから仕方ない?
この不条理をもたらしているのが、1960年に結ばれた日米地位協定だ。ふつうの独立国なら過度に主権が侵害されているとして、アメリカと交渉し、協定の改訂に乗り出すものだが、第2次世界大戦の敗戦国だから仕方ないと、諦めてきたのが歴代自民党内閣だった。
しかし、同じ敗戦国でありながら、日本同様、米軍基地を受け入れているドイツ、イタリアはもっと毅然としている。米国に地位協定の改定を働きかけ、難しい交渉の結果、大きな改定を勝ち取った。例えば、国内での米軍訓練にはドイツ、イタリア政府の同意(承認)が必要だし、日本のように在留米軍に国内法が適用されないということもなくなった。基本的に自分の国の空は、自分たちで管制権を持ち、米軍といえども、自国の法律に従ってもらうという内容に変えたのだ。
これらの例を見てわかるとおり、本気で交渉すれば、横田空域の管制権を日本に取り戻すことは可能なはずだ。
こうした考え方に対しては、日本はアメリカに守ってもらうのに、日本はアメリカを守らないんだから大きなことは言えないという反論もあった。しかし、安倍政権は、自ら何の見返りもなく、集団的自衛権行使を認めるという事実上の憲法改正までして、アメリカに媚を売った。当然、その見返りに地位協定改定を働きかけても良いはずだが、安倍総理にはそんな姿勢は全く見えない。
もちろん、アメリカに米軍管制権の返還を求め、地位協定の不平等性を訴えて、根本から改定しようということをいきなり20年までにやれと言っても難しいかもしれない。しかし、読売新聞によれば、今回の飛行ルートで横田空域を横切るのは、わずか数分という短時間だそうだ。それくらいの例外も認められないという米側の姿勢は、おそらく、どうせ、安倍総理は強くは言ってこないだろうという読みがあるからだ。
■日米安保と日米地位協定が日本の足かせになる
この問題は、安全保障とか「主権」だけの問題ではない。横田空域の占領というアメリカによる主権侵害が、日本の成長の足かせになっているということをあらためて認識する必要がある。日本にとって、大きな「損失」になっているのだ。
少子化による人口減、製造業の競争力低下などで、日本の成長力は衰え、アベノミクスの第3の矢はいつまで経っても発射できない。そんな中にあって、インバウンドは大きな伸びが期待できる分野だ。17年の訪日外国人数は2869万人と、5年連続で過去最高を記録している。インバウンド消費額もうなぎのぼりで、今年は5.1兆円に達するという予測もある。
ちなみに、羽田の新ルートは外国人客を呼び込むのに重要な役割を果たすと期待されていて、国交省の試算では、今回の発着枠拡大による年間の経済効果は約6500億円にのぼるということだ。国交省の試算だから多少割り引いて考えるとしても、非常に大きな金額であることは間違いない。
もし、このまま唯々諾々と米軍の拒否を受け入れてしまえば、2020年に訪日外国人数4000万人、消費額8兆円という政府の目標は絵に描いたモチに終わるかもしれない。さらには、日本の観光政策の練り直しも迫られることになるから、日本にとって、由々しき問題だ。
■安倍政権は本気の交渉をするべきだ
2020年からの発着枠拡大のためには、年内には、各航空会社との調整を始める必要があるため、もうタイムリミットが近づいている。少なくとも、今回の発着枠拡大については、日本側の主張をとことん主張し、それができないなら、ドイツ・イタリアには改定を認めて日本に認めないのは、日本だけに原爆を落としたのと同様、アジア人差別ではないのかというくらいのことを言っても良いのではないだろうか。
12月には米国からの高額武器購入の予算が決まる。それを取引材料に使うこともできるはずだ。
冒頭に述べたとおり、安倍総理をはじめとする現政権の改憲派は、現行憲法を「アメリカからの押し付け憲法」「70年以上改正されず時代に合わない」と批判してきた。ならば、同じくアメリカから締結を強要され、60年近く改正されていない日米地位協定も改定に乗り出すのが筋というもの。今回の新飛行ルート設定拒否に対してもより強い姿勢で交渉すべきだ。
米側は、ギリギリになったら、地位協定の見直しや横田空域の返還の問題にはしないという条件を付けて、ほんの少しだけ横田空域の端っこの部分を削ってやるということで恩を着せに来るつもりかもしれないが、そんなことでお茶を濁されてはたまらない。空域を削るだけでなく管制権も返還させないと、空域が変わるたびにパイロットは米軍と羽田空港の管制との間で切り替えを強いられ、事故につながるミスを誘発しかねない。この際、本格的な空域返還交渉をしっかりと行い、それを地位協定の抜本改定交渉の第一歩とすべきだ。
もっとも、日米地位協定をアイゼンハワー米大統領と結んだのは安倍総理の祖父である岸信介総理だ。祖父のレガシーを孫が壊すなんてことはできっこない。そう考えると、総理に期待するだけ無駄なのかもしれないという気もしてくる。やっぱり、安倍総理を代えないと、この国はいつまで経っても米国の属国のまま。
悲しいことだが、それが現実なのかもしれない。
【友の会ニュース】(千葉健生病院)№440 高齢者医療費自己負担の現状 入院費の状況―療福祉相談室 胄柳美代子
▶高齢者には大きな負担
年金は少しずつ減っているのに、医療費の自己負担や保険料は少しずつ増えているといった矛盾の中で高齢者の方は今、生活しています。
実際、70歳以上の医療費の自己負担が増えています。入院費は、平成29年8月に1割または2割負担で年収約156万円以上の方の負担が1か月44400円から57600円になりました(ただし入院期間など一定の条件で、自己負担上限が下がります)。去年の段階で、入院患者、家族に入院費を説明したときに「人院費がかかるからできるだけ早く退院したい」と話す方も多くいました。
平成30年になり70歳以上で現役並の収入があり医療費3割負担の方の入院費も年収の段階によって3段階に自己負担かわけられました。今までの入院費より数万円支払いが上がるというのは高齢岩世帯にとっては大きな負担です。
▶支払いに悩む人が急増
実際、要介護の妻と二人暮らし、妻を介護保険のショートステイにあずけて入院した患者さんは「お会がかかるから入院したくなかった。去年は妻が入院しその費用も支払いができない。妻の年金はほとんどないし自分の年金では払いきれない」と。年金収入があっても、急な病気の入院費の備えをできない状況で生活されている方にとっては入院費の出費は人きな経済負担となります。こういった悩みを抱えている方はかなりいるかと思います。
▶予想以上にお金がかかる
入院費の自己負担の限度額が変わったことは入院して初めて知る力か多く、食事代も上がり、人院すると色々と物品も用意しなければならず、予想した以上にお金かかかります。また、要介護者を抱えていると介護している方が入院した時の要介護者の対応もあり経済的負担か増えます。
まずこういった状況を把握しながら、誰もなるかもしれないと考え、自分たちに何ができるかなど考えていきたいと思います。
【赤旗】10月30日〈主張〉消費税10%の増税―集め方も使い方も格差拡大だ
安倍晋三首相が来年10月からの消費税率の8%から10%への引き上げを強行する立場を繰り返しています。消費税はもともと低所得者ほど負担が重い逆進的な税金であるうえに、今回の増税は「軽減税率」の導入など格差をいっそう拡大する中身です。社会保障などに必要な財源は、消費税に頼らず、経済の立て直しと大企業や高額所得者の適切な負担で確保すべきで、消費税増税は中止すべきです。
低所得者ほど負担が重い
生活必需品を含め原則としてあらゆる商品やサービスに課税される間接税=消費税が逆進的な税金であることは、マルクスが活動した19世紀から問題になってきたことです。同じ時代の政治学者ラサールは『間接税と労働者階級』という本の中で、間接税は「比較的貧困な階級に過大な負担をかける」と批判しました。
生活必需品への課税は低所得者層や年金に頼る高齢者の生活を直撃しますが、所得が100倍あっても生活必需品は100倍も消費するわけではありません。所得が多い人ほど負担を多く求めることができる累進的な所得税など直接税と違って、消費税が逆進的なものになるのは明らかです。
安倍政権は今回の増税では食料品などの税率を据え置く「軽減税率」を導入するといいます。「軽減」と言っても現在の8%の税率はそのままなので、軽減でも何でもありません。
1パック500円の肉を買う人は40円の消費税を払わされ、10%に引き上げられた時と比べ負担は10円しか違わないのに、1万円の高級肉が買える人は800円の消費税を払っても負担が200円違うことになるなど、不公平を拡大します。
「しんぶん赤旗」が非課税品目などを考慮して試算した結果でも、年収2000万円以上の世帯の所得に占める消費税の負担割合は8%で1・5%、10%で1・8%なのに対し、200万円未満の世帯では8%で8・9%、10%では10・5%にもなります(19日付)。低所得者が消費税率より高い負担率を押し付けられる異常な実態を浮き彫りにしています。
安倍政権が10%への増税にあたって実施する「キャッシュレス」やクレジットカードで買い物すればポイントで還元するというのも、そうした決済を利用しない高齢者などには何の恩恵もありません。自動車や住宅などの減税も購買力がなければ無縁です。
安倍政権は、「幼児教育の無償化」を盛んに宣伝しますが、保育園に入園できない人たちの負担は減りません。
零細業者は排除の恐れも
消費税は売り上げにかかった税額から仕入れにかかった税額を差し引いて納税する仕組みです。増税4年後の2023年10月からは仕入れにかかった税額を証明する「インボイス」が求められます。年商が1000万円以下の免税業者は発行できないので、取引から排除される恐れがあります。消費税増税は消費者だけでなく零細業者にも格差を拡大します。
安倍政権は大企業や高額所得者の利益を増やすとともに、大企業減税で政権復帰以来4兆円以上も減税しました。大企業や高額所得者の適切な負担で消費税増税を中止するとともに、安倍政権を退陣に追い込むことが不可欠です。