【赤旗】12月31日 政党助成金7268億円に―23年間―
年額約320億円の国民の税金を政党が山分けする政党助成金の累計額が、1995年の制度開始から今年までの23年間で7268億8645万円にのぼることが本紙の調べでわかりました。23年間に受け取った政党は40党。うち31党が、政党助成金を手にすると分裂・合併・再分裂を繰り返し解散・消滅しました。何の苦労もせずに国から巨費が転がり込む政党助成金は、政治の腐敗、政党の堕落をもたらしています。
制度開始から党名を変えず一貫して受け取り続けている自民党の累計額は、全体の半数近くの3395億2715万円に達しました。次いで民進党(16年3月まで民主党)2106億2611万円、公明党562億5439万円となっています。
政党助成金は、政治腐敗の“温床”と批判されてきた企業・団体献金の「廃止」を口実に導入されましたが、自民党は企業・団体献金と政党助成金の“二重取り”を23年間続けています。自民党本部収入に占める政党助成金の割合は、制度開始時の95年は56・7%でしたが、現在は72・3%(2016年)です。
安倍自公政権は、来年10月から3年かけて、食費や光熱費など日常生活にあてる生活保護の「生活扶助」などを160億円も減らそうとしています。今年自民党が受け取った政党助成金は「生活扶助」削減幅を上回り、制度開始以来最高額の176億296万円です。
政党助成金は、政党助成法に基づき総務省が毎年予算に計上していますが、政党が同省に受け取りを申請しなければその政党には支給されません。自ら税金で懐を豊かにしながら歯止めのない大軍拡を進め、生活保護や医療・介護など社会保障を削減する政党のあり方が問われています。
安倍政権は22日に閣議決定した18年度予算案に、今年と同じ317億7300万円の政党助成金を計上しています。
【福井新聞】1月8日〈論説〉安倍政権の行方 見栄え重視の政治は無用
2018年の国内政治を展望すれば「1強他弱」に変化があるか否かだ。安倍政権の独走政治は自民党、また野党の勢力図からも際立っている。それは「諫言(かんげん)の士」もいない自民党議員のだらしなさ、離合集散を繰り返し知力体力不足に陥った野党の双方に問題がある。このままでは政治のダイナミズムが失われる。各種世論調査が示すように、国民の多くは「これでよいのか日本の政治」と感じているのではないか。
安倍晋三首相の第2次政権は6年目に入った。在職日数は1次含め戦後3位、戦前からは歴代5位だ。9月の自民党総裁選で3選を果たせば憲政史上最長の政権が視野に入る。果たして元勲伊藤博文や吉田茂元首相に比肩する名宰相たる人物か、質が問われよう。
安倍首相の特性は強固な政治信念にある。第1次内閣が政権運営の未熟さからわずか366日で自壊したことも大きな教訓だろう。側近や主要閣僚を理念が共通する右派で固め、強靱(きょうじん)な体制を構築した。
だが、最大の強さは祖父・岸信介元首相の悲願でもあった憲法改正への異常なまでの執念だ。
自民党は結党以来「自主憲法の制定」を党是に掲げる。日本が主権を回復したサンフランシスコ講和条約発効から60年に当たる12年4月に「日本国憲法改正草案」を発表した。そこには「国防軍」も明記された。安倍首相が第2次政権を発足させたのはそれから8カ月後だ。年頭記者会見でも早期の改憲実現に一段と強い意欲を示した。
こうみれば、異例の日銀一体による経済政策アベノミクスさえ宿願達成の手段に映る。国民の支持を持続するには、暮らしを安定させ、着実な経済成長力を数字で示す必要があるからだ。これほど分かりやすい目的を持った政治家が他にいるだろうか。
そのためには首相の言う「政治はモメンタム」つまり、勢いが不可欠となる。
デフレ脱却、地方創生、一億総活躍、女性が輝く社会、全世代型社会保障制度、人づくり革命、生産性革命など、次元の違う「スローガン政治」を間断なく打ち出す必要があった。
だが、どの政策も満足な成果を出せず、実社会は格差と貧困、分断社会が広がる。経済成長率も目標の実質2%に達しないままだ。
集団的自衛権行使を解禁した安全保障関連法や特定秘密保護法、「共謀罪」法を数の力で成立させた。森友、加計学園問題にみられるおごり、対米最重視の外交姿勢も、全ては強権体制の所産だ。安倍首相に求められるのは誠実で丁寧な、虚言なき政治ではないか。
20年の東京五輪・パラリンピックが終われば経済減速は必至の状況。25年には団塊の世代が後期高齢者となる超高齢社会が本格化する。社会保障制度の維持や巨額の財政赤字をどうするのか。力強く見栄えは良いが、将来に付けを回す課題先送り政権では困る。
持続可能な社会へ本音で語り、国民と苦労を分かち合う政治家が出現すべきだ。
【日本経済新聞】1月12日〈大機小機〉政策パッケージの誤った方向
政府は新たな経済政策パッケージとして、「人づくり革命」と「生産性車命」を掲げた。
人づくり革命は、幼児教育の無償化と低所得者層への高等教育の無償化が柱だ。生産性革命は、賃上げや設備投資に積駆的な企業、革新的技術による生産性向上を目指す企業への税負担軽減策を盛り込んだ。
財源には、消費税率10%への引き上げ分などから約2兆円の予算を充てる。増税分を借金返済だけでなく、国民の暮らしに直結する用途に使おうという意図は望ましい。特に日本の公的教育費は経済協力開発機構(OECD)加盟国の中でも最下位で、支出を伸ばすべきだ。
しかし、その方策として、無償化がよいとは言えない。例えば幼児教育の無償化を考えてみよう。女性の社会進出に伴って膨らんだ保育への需要に対し、都市部を中心に供給が追いついていない。
こんな状況のままで無償化しでも、保育園に落ちる子が減るわけではない。それどころか、無償化でもっとたくさんの子供が保育園に応募し、さらに多くの子供たちが入れなくなる。同じ予算を使うなら、お金を無償化に回すのではなく、保育園を拡充し、入学定員を増やすべきだ。そうすれば、待機児童の数も減る。
回すべき金額も足りない。公的教育費を2兆円増やしても、対国内総生産(GDP)比で4%程度にしかならず、相変わらずOECD加盟国の中で最下位だ。
生産性革命も政策の方向が誤っている。日本経済が抱える最大の問題は、消費の低迷だ。物が売れないから、経済が伸びていかない。こんな状況で生産性を向上させても、企業聞のシェア争いを激化させるだけだ。需要が増えない以上、経済全体の活動水準が拡大するはずがない。
設備投資の促進は一時的に需要を生むから、成長率を引き上げるかもしれない。しかし、消費が低迷したまま生産性が向上すれば、人がいらなくなる。賃上げに結びつくはずもない。人も余り、賃金も下がれば、ますます消費は低迷する。作ることより、使うことを考えるべきだ。
保育園の拡充なら、建設需要も保育サービスの届用も増える。所得も増えて税収も拡大する。生産性革命より、はるかに経済拡大効果があろう。(魔笛)