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所得税の見直しは消費税増税とセットで―日本総合研究所・山田久主席研究員
2017年12月9日

【しんぶん赤旗】12月6日〈主張〉企業不正の広がり 信用崩した構造 大本から正せ
 製造業大手による品質データの改ざんが深刻な広がりをみせています。広範な製品に使用されている素材メーカーのデータ書き換え・偽装は神戸製鋼所、三菱マテリアルにつづき、日本経済団体連合会(経団連)の榊原定征会長の出身企業である東レにまで波及しました。どこまでまん延しているのか、構造的なゆがみではないか。徹底した原因究明をすすめ、日本のものづくりへの信用を失墜させている不正の大本にメスを入れることが求められます。
▸認識の甘さあらためよ
 神戸製鋼グループはアルミ・銅・鉄鋼の部材、三菱マテリアルの子会社はゴム製の「シール材」、東レの子会社はタイヤの補強材―。次々と判明した製品検査データの改ざんは、飛行機、自動車、原子力発電所など幅広い分野で素材として使われているものです。取引した企業だけでなく、多くの国民が不安をつのらせるのは当然のことです。
 不正が発覚した企業側は「顧客(民間企業)との関係で安全上の問題はない」などと、詳細を公表することに消極的・否定的ですが、航空機、自動車などの利用者は国民・消費者です。消費者を事実上置き去りにした企業側の姿勢も問題です。
 共通しているのは、根深い隠ぺい体質です。神鋼ではこれまで何度も不正が繰り返されてきました。三菱マテリアル子会社は2月には不正をつかんでいましたが、10月まで「不適合品」を出荷していました。東レ子会社では昨年7月には問題がわかっていました。企業風土や組織のあり方が問われています。
 経団連は、会長出身企業の東レで不正が判明したことにあわてて、約1350社の会員企業に品質問題の実態調査の徹底を要請しました。個別の企業だけに対応を任せていられない事態となっていることをうかがわせます。
 ところが、監督官庁の世耕弘成経済産業相は「特異な事案」「経産省がやらなくても会社は内部調査をやっている」と国会で答弁するなど、まるで人ごとです。甘い認識をあらためるべきです。
 不正の背景について、度重なるリストラでの人減らしによる疲弊を指摘する声が現場から上がっています。長年不正が繰り返されてきた神鋼では、従業員はピーク時の3分の1に激減し、非正規労働者がふえ、過密労働が横行しており、40~50代の基幹を担う労働者が不足しているといわれます。安全で高品質のものづくりの現場を取り戻すためには、異常なリストラ、人減らしに歯止めをかけることが不可欠です。
▸経団連の姿勢が問われる
 東レの不正は、榊原経団連会長が同社の社長・会長だった時期に行われていました。経団連が11月に改定したばかりの「企業行動憲章」には「社会からの信頼を失うような事態が発生した時には、経営トップが率先して問題解決、原因究明、再発防止等に努め」るとあります。この言葉にてらしても、一連の不正での企業経営者の姿勢はあまりに不誠実です。
 榊原会長は安倍晋三首相に対し、消費税増税や社会保障改悪など「国民の痛みを伴う改革」の実現を迫っていますが、そんなことを口にする資格があるのか。国民は到底納得できません。

【産経新聞】12月7日 平成30年度税制改正 日本総合研究所・山田久主席研究員「消費増税とセットで行うべきだ」
 高所得のサラリーマンが増税となり、自営業やフリーで働く人を減税とする今回の所得税改革は妥当だ。これまで自営業は経営者に性格が近く、いろいろ節税ができたため、会社員は所得税で優遇されてきた。だが働き方が多様になり、個人が在宅で仕事を請け負うなど、自営業の働き方も会社員に近くなっている。
 所得税の見直しは消費税増税とセットで行われるべきだ。消費税率を引き上げると、低所得者ほど税負担感が重くなる逆進性が問題となり、所得税で所得再分配を図る必要がある。将来の消費税増税時に、さらに高所得者の所得税を引き上げれば、勤労意欲を阻害しかねない。今回、所得税だけを見直すことは、全体的な税制の観点に欠ける。

【朝日新聞】12月7日 官製春闘「もういい加減に」 金属労協議長が政権に疑義
「労働条件は労使が主体的に決める。(政府主導の賃上げは)もういい加減にしないといけない」――。自動車や電機などの産業別労働組合が加盟する金属労協の高倉明議長は6日、賃上げに直接「口出し」する安倍政権のやり方に疑義を示した。
▸来年春闘「実質3%アップめざす」 サントリー新浪社長
 政権が経済界に賃上げを求める「官製春闘」は来春闘で5年目に入る。日産労連出身で今年、金属労協議長に就いた高倉氏は、賃上げする企業への減税など、政権が検討している政策を「アメとムチの短期的な施策」と指摘。「賃上げできる中長期的な政策を出すのが政府の役割」と述べた。
 金属労協はこの日の記者会見で、2018年春闘方針として「ベア3千円以上」の統一要求を掲げると発表。ベアは5年連続、「3千円以上」は3年連続の要求になる。一時金(ボーナス)の「年間5カ月分以上」の確保や、非正規労働者の正社員への転換促進も求める。8日の協議委員会で正式に決める。
 金属労協傘下の自動車総連や電機連合はこの方針に沿い、「ベア3千円以上」の要求を軸に調整する。(木村聡史)

【東京新聞】12月8日 加計設置審委員 認可「忸怩たる思い」
 学校法人「加計(かけ)学園」の獣医学部の設置認可を巡り、文部科学省の大学設置・学校法人審議会の審査に関わった複数の委員が七日、本紙の取材に応じた。このうち一人は「認可された加計学園の計画でも国家戦略特区認定の条件を満たしているとは思わない」と語り、「忸怩(じくじ)たる思いだ」と苦渋の決断だったと明かした。 (井上圭子、中沢誠)
 「今思えば反対意見を言えばよかったという反省はある」。委員は、七カ月に及んだ設置審の審査を苦々しい思いで振り返った。
 委員を束ねる主査から「訴訟になった場合、こういう是正意見の付け方では勝てない」と告げられたのは、認可の是非の最終判断を下す十一月五日だったという。「委員の三分の一ぐらいは圧力と感じていたのではないか。自分も少し感じた。自分一人が反対しても否決されるものでもないし、抑えてしまった」と話す。
 委員は、加計側が提出した当初計画について「学生数が膨大。実習時間が絶対的に足りない。獣医学の専門家が作ったとは思えない内容だった」と明かす。
 政府は、特区認定に際し、「新たな分野の需要が明らか」「既存の大学・学部では対応困難」など四条件を設けた。政府は加計学園の計画を「四条件を満たしている」と主張している。
 しかし、委員は「四条件とは程遠い内容。通常ならある程度練った案を申請してくるのに、(文科省は)加計学園のひどい未成熟な計画を設置審に丸投げしてきた」と証言する。特に委員が問題視したのは「既存の獣医師養成ではない構想が具体化」という条件だ。「病原微生物を扱うはずだったのが、どんどんハードルが下がって骨抜きになっていた。新しくも何でもない構想になった」と振り返る。
 文科省の担当者は会議の席で、委員らに何度も「この場は四条件を審査する場ではない」「四条件と切り離して審議してほしい」と伝えたという。「私たち委員だって四条件で審査したら認可できるわけがないという認識だった」と語る。
 設置審は認可答申に至るまで加計側に何度か計画改善を求めたが、委員は「認可できる状況に達するために何が足りないかを、設置審が加計側に手取り足取り教えてやったようなものだ。三回も改善を求めたのがその証拠だ」と説明する。
 「特区選定の会議のメンバーに獣医学の専門家が誰一人いない中で特区が決まった」。委員は、政府内で進められた特区選定の妥当性にも疑義を示す。委員は「設置審にかかったことで認可に向かう道筋はできていた」と認可ありきの流れだったと証言する。
 最後に委員はこう訴えた。「開学したあと、加計学園がどう運営していくのか、これからもチェックしていかなければならない」