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大企業の内部留保 初の400兆円台―利益は大幅増 実質賃金は減
2017年9月9日

【しんぶん赤旗】9月2日 大企業の内部留保 初の400兆円台―利益は大幅増 実質賃金は減
 財務省が1日発表した2016年度の法人企業統計によると大企業(金融・保険業を含む、資本金10億円以上)の内部留保が年度としてはじめて400兆円を超え403・4兆円となりました。15年度より17・6兆円増えました。安倍晋三政権が発足した12年度(333・5兆円)から69・9兆円増やしました。アベノミクス(安倍政権の経済政策)が内部留保を押し上げたことになります。
 経常利益は12年度の35・9兆円から16年度は52・8兆円へと47・1%増加しました。役員報酬も同じ期間に9・3%も増えています。一方、労働者の賃金は3・6%の増にとどまりました。この間に物価は5・0%上昇したので、実質賃金は下落しています。
 16年度の売上高は全産業(金融・保険業を除く)ベースで15年度より10兆円も減らし、537・2兆円でした。それにもかかわらず、経常利益は同2・2兆円増加の42・4兆円。大企業は利子や配当などから多くの利益をえていることを反映しています。
 安倍政権は“企業の税負担を減らせば、設備投資や賃金は増える”などとして、法人実効税率を引き下げ、政権発足時の37・0%から16年度は29・97%と7・03ポイントも引き下げました。その結果、金融・保険業を除く大企業は、12年度から16年度の間に56兆円もの内部留保を積み増しています。しかし、建物や機械設備など有形固定資産は12年度の192・5兆円から16年度は198・9兆円へとわずか6・4兆円しか増えていません。減税分は設備投資や賃金には、ほとんど回りませんでした。

【AERA】dot.9月6日 自民党内に“脱安倍”勉強会 安倍離れが止まらない
 日本ファーストの会が年内の国政政党化を目指し、民進党が新代表の下、再出発をする。今のままの自民党で選挙に勝てるのか。党内の動きが騒がしくなっている。
 日本経済新聞社とテレビ東京が8月25日から27日に行った世論調査では、内閣支持率は内閣改造後の調査からさらに4ポイント上がり、46%まで上昇。安倍政権への風当たりが弱まったように見えるが、その数字を額面通りに受け取る人は永田町にはいない。政治ジャーナリストの角谷浩一さんはこう話す。
「内閣改造後はご祝儀相場。国会閉会中は野党の活動が見えず、与党の支持率は上がる。加計学園問題を始め、納得のいく説明が閉会中審査でも行われておらず、秋の臨時国会が始まれば状況はまた変わる。衆議院議員の任期満了が来年に迫るなか、安倍政権に不安を持つ議員の一部に安倍離れが起きている」
●自民党は相当深刻
 そんな動きの一つだろう。自民党の議員有志が8月25日、安倍政権に批判的な有識者を講師に招く勉強会「日本の明日を創る会」を発足させ、国会内で初会合を開いた。衆参両院議員19人、代理を含めると約30人が出席した。講師に招かれた政治評論家の森田実さんは「自民党の現状は相当深刻」「(憲法改正は)国民投票で間違いなく否決になる」などと苦言を呈した。
「反安倍」とも見られかねない集まりだが、呼びかけ人の中心である平沢勝栄衆議院議員(二階派)は、こう反論した。
「二階俊博幹事長に報告したうえで、勉強会を立ち上げ、会合もすべてのマスコミに公開して行っている。反安倍でも、安倍降ろしが目的でもない」
 北朝鮮のミサイル発射について記者団の取材に応じる安倍晋三首相。政権がピンチのときに得意の外交・安全保障で支持率を挽回してきた (c)朝日新聞社© dot. 北朝鮮のミサイル発射について記者団の取材に応じる安倍晋三首相。政権がピンチのときに得意…
 かつて平沢氏は東京大学の学生時代、安倍首相の家庭教師を務めたこともある。入閣待機組の有望株ながら、今回の内閣改造で処遇されなかったが……。
「都議選の大惨敗を受け、東京の議員中心に動き始めた。内閣改造の後に動き始めたわけではない」と平沢氏は否定し、こう言葉を継いだ。
「次の選挙で日本ファーストが多くの候補者を立ててくるのは間違いない。場合によっては日本ファーストと民進党の連携もありうる。いまの自民党が太刀打ちできるのか」
 だからこそ、現政権に批判的な識者の話を聞くことで国民目線に戻り、党の立て直しを図りたいと言う。
「民主主義の健全な姿は自民党に対峙する勢力があることだ。それがないから、自民党が傲慢になり、弊害も出てきた。現時点では自民党に代わる勢力があるとは思えないが、政権交代が起きれば混乱も生む。国民の信頼を取り戻し、自民党が必ず勝たなければならない」(平沢氏)
●党内に新たな受け皿
 日本の明日を創る会に名前を連ねる後藤田正純衆院議員(石破派)は、勉強会について「反安倍ではなく脱安倍」と位置付け、こう話した。
「政治には緊張感が必要だ。安倍政権への検証が必要だが、自民党執行部は意見を言わず、一部の大手新聞は礼賛ばかりで、野党は批判だけに終始する。国民の受け皿がないなら、たとえ執行部に嫌われてでも、自民党内につくる必要がある。例えばデフレ脱却は本当に消費者目線なのかなど、政策の中身もきちんと議論していかなければならない」
 民進党の新代表には前原誠司氏が選ばれた。今後、どのような野党共闘が進むかに注目が集まるが、目下、10月22日には三つの衆院補選が控えている。前出の角谷さんは言う。
「補選がある3小選挙区はいずれも自民現職が亡くなり、自民にとって『弔い選挙』。志半ばのものを引き継ぐわけで、支援者の力の入れ方も違う。この選挙でも自民が惨敗するようなら、安倍離れの動きが一層加速することは間違いありません」
 もっとも、9月末に召集される臨時国会では、いまだ「丁寧な説明」(安倍首相)がない加計学園の獣医学部新設問題などで野党の追及があるだろう。その対応次第では、試金石となる補選を前に政権の求心力が失われる可能性もある。(編集部・澤田晃宏) ※AERA 2017年9月11日

【財経新聞】7月21日銀行はいつから“サラ金”になったのか?
  (上)
 日本銀行がマイナス金利政策を導入してから1年半が経過した。金融の超緩和策にもかかわらず企業の資金需要に勢いはない。しかし、厳しい状況にある銀行の貸出業務の中で怪気炎を吐いている数少ない部門がある。銀行のホームページを覗いてみると、カードローンに入れ込んでいる姿が見えて来る。カードローンは、無担保で使用目的も自由という、かつて“サラ金”と呼ばれた貸金業者の得意分野だった。
 2000年代の初め、派手なCMや街頭でのティッシュ配りなどを強力に進め、貸金業は隆昌を極めた。貸金業者の消費者ローン残高は12兆円まで伸ばしに伸ばした。その間、グレーゾーン金利と呼ばれる金利の未整備状態を巧みに活用してまさに我が世の春を謳歌していた。
 しかし舞台は突然暗転する。多重債務が社会問題化すると共にグレーゾーン高金利の借金返済に行き詰まる個人が続出した。個人の自己破産件数が過去最多の24万2千件となった03年には、貸金業者に対する世間の目が一段と厳しさを増し、大きな社会問題と化した。
 06年1月に最高裁が過払い金の返還を認めた判決を下したことを契機として、貸金業法が改正された。このため、グレーゾーン金利がなくなり金利は年20%以下と明確化し、過払い金返還請求の嵐が貸金業者に吹き荒れた。
 これによって貸金業者の淘汰が進み、最大手の武富士は倒産に至り、アコムは三菱UFJフィナンシャルグループの子会社に囲い込まれ、プロミスは三井住友FGの傘下で、社名をSMBCコンシュマーファイナンスに変更した。
 06年度末に約1万1800社だった貸金業者は16年12月末で1876社となり、銀行系列に組み込まれた以外の業者も、金融庁が主導する金融秩序の中に収まった。
 金融庁の傘の下でカードローンについて銀行と同一の業務を営むはずの貸金業者に、明確なハンディが課せられた。貸金業改正法が完全施行された10年以降、貸付額を利用者の年収の3分の1を上限とする総量規制が貸金業者に課された。銀行は適用外となり貸出額に規制上の上限はない。年収がない専業主婦であっても銀行であれば貸せる。
 規制のない銀行のカードローンは急速に増加し、11年度末に消費者金融を逆転した勢いのまま、現在銀行のカードローン残高は貸金業者の2倍強にまで膨れ上がった。17年3月末は前年同月比9%増の5兆6千億円だ。
 (中)
 超低金利の状況にあって、カードローンは高い金利で貸出しできるほとんど唯一の商品であり、銀行にとって魅力が大きい。しかし残高の急拡大はひずみを徐々に表面化させている。16年の個人の自己破産は6万4637件と13年ぶりに増加した。このため、金融庁は顧客利益重視の融資業務を銀行に求め、返済能力を上回るような過剰なカードローン融資を注視していると見られる。
 17年3月、全国銀行協会は利用者の返済能力を正確に把握し、貸し過ぎを防止するための自主規制を申し合わせた。カードローンは悪くないが、破産に至るまで貸すのは論外という理屈である。
 そもそも、貸出しを行うには貸金業者よりも銀行の方が有利だ。超低金利の預金で資金を調達できるのに対して、貸出金利は他の銀行貸出しでは比較にならないくらいの高利周りだ。借りる側も、銀行からの借入れであれば家族にバレても咎めが少ない。何しろ貸したくてたまらない銀行が強力に推進するから、PRもど派手だ。取引がなくても、来店しなくても、30分程度で結果が出る。借金の罪悪感などみじんも感じさせない。まさに、銀行の“サラ金”化である。現在の銀行のカードローン推進状況が自主規制のもとでどんな変化を見せるのか。まさに見ものである。
 仮にカードローンの現在の伸びが続いた場合、あと数年で、銀行と貸金業者の消費者ローンの合計残高はピークの2003年を超えてしまう。所得や人口動態を考えると、潜在顧客層は明らかに減少している筈だ。銀行のカードローン市場の成長率は鈍化するとみるのが自然だが、銀行は超金融緩和の状況下で、当面この分野を見限ることは出来ない。今後新規顧客数の減少が明らかであれば、より一層早めの囲い込みを狙う。
 貸金業法が改正されてから10年が経過、多重債務者問題を追及する弁護士や、弱者救済を旗印にしたマスメディアが一体となって消費者金融業者を攻撃・排除した。
 また、全国に展開する過払い金専門の法律・司法書士事務所がテレビCMなどを使って、グレーゾーン金利の返還を呼びかけ、返還を求めていった。民法の時効は10年だが、それまでに消費者金融・クレジット業界が返還に応じたのは6兆円にのぼる。手数料分の20%を法律・司法書士事務所に天引きされても5兆円弱の資金が多重債務者に還流した。この過払い金バブルによって、多重債務者が一時的に救済されたことは否めない。この多重債務者がカードローン利用者としてゾンビのように復活しているのではないか?
 (下)
 その多重債務者が"復活"する懸念がある。貸し倒れから5年を経過すると、貸し倒れの記録が消去され、消費者ローン“適格者”に復活する。過払い金請求の記録は他社と共有されないので、過払い金請求と無関係の銀行なら、請求した翌日からでも貸してくれる。当時、過払い金を請求されたのは消費者金融・クレジット業界だったため、年収の3分の1を上限とする総量規制に縛られることなく銀行が貸してくれる。
 しかし、過払いや貸し倒れから復活した人が再び返せなくなるリスクはやはり高い。ゾンビは復活したのか?復活した多重債務者に複数の銀行が競り合うように資金の蛇口を緩めたら、未曽有のカードローンバブルが始まる。その結果、カードローン債権の劣化が大幅に進み、銀行のカードローンを保証している貸金業者や銀行関連の保証会社が手痛い打撃を受けることも予想される。その前哨戦は既に始まっている兆しがある。
 貸金業法の改正は、多重債務者を生みだす貸金業システムに変革を迫り、同時に、グレーゾーン金利で不当利得を得た貸金業者に“厳罰”を与えた。その結果、消費者金融業界は大きな打撃を受けたが、銀行カードローンは急増しつつあり、自己破産が不気味な増加を続け再び社会問題化しようとしている。
 多重債務者問題が過剰債務問題に変わり、プレイヤーが貸金業者から銀行に変わっただけで、基本的な構造は何も変わっていないのかも知れない(21日付、日本経済新聞は社説で”銀行を総量規制の対象から外したのは、銀行を優遇するのが目的ではなく、消費者金融と比べて顧客の立場に立った審査体制が整っているという信頼感に基づいていたはずだ”と銀行の姿勢を厳しく指弾している)。
 お金を必要とする人に融資することは金融機関の祖業である。それと同時に、借入れで一時しのぎのをした挙句、後から返済に苦しむ人は多い。銀行にとって消費者ローンの顧客掘り起しは、どこまでが借り手のためになり、健全といえるのか。銀行は激しい競争に打ち勝つために、簡単に借り入れができることを強調しすぎているのではないか。全国銀行協会は自主規制を申し合わせるだけでなく、借入と返済との関係を社会教育で啓蒙するべきでないのか。銀行は社会的な存在理由と、難しい局面に立たされている現在の状況を、もっと見つめなおす必要があるだろう。
 最早、単なる規制強化では過剰債務問題を解決できないことは明らかだ。この機会に、銀行のカードローンも含め、個人の無担保融資をどんな法体系で運用するのかという難しい問題が、銀行業界を指導監督する森金融庁長官にも突き付けられている。(矢牧滋夫)