【しんぶん赤旗】6月6日〈経済アングル〉消費税は軍拡の財源
安倍晋三政権による軍拡への暴走はとどまるところを知りません。3月2日の参院予算委員会で、安倍晋三首相は「安倍政権においては防衛費をGDP(国内総生産)1%以内に抑えるという考え方はない」と表明。自民党政務調査会も3月末、「北朝鮮の新たな段階の脅威」に対処するためとして、敵のミサイル基地などをたたく「わが国独自の敵基地反撃能力の保有」を検討するよう求める提言をまとめました。
同時に、安倍首相は2020年と期限を切って改憲することを明言。9条に3項を付け加えて自衛隊を書き込むことで2項を死文化することを狙います。
安倍首相の改憲発言を受け、経団連の榊原定征(さかきばら・さだゆき)会長は、「経済界として重く受け止めている」「非常に意義のあること」と強調。「政府の流れを受けて、経済界としてもしっかりとした見解を持つべきだ」として憲法問題の論点を整理し、年内に提言する考えを示しました。
改憲をめざす動きのなかで軍拡はさらに加速します。自民党の提言を実現するには、ミサイル基地などを特定する偵察衛星や無人偵察機、敵の地上レーダーをかく乱する電子攻撃機や攻撃対象をたたくステルス戦闘爆撃機、陸上や潜水艦、イージス艦から発射する弾道ミサイルや巡航ミサイルなどが必要とされます。
政府は19年10月に10%への消費税増税の強行を狙います。経団連の榊原会長は5月22日の会見で「2019年10月の消費税率引き上げは国民と国際社会への公約であり、必ず実現してもらいたい」と強調します。
政府は消費税増税の一方で社会保障の削減を狙います。消費税が軍拡の財源となることは必至です。(清水渡)
【ダイヤモンド・オンライン】5月31日 65歳以降「年金だけでは暮らせない」という現実
>年金生活の赤字は毎年のように拡大している
私ごとで恐縮だが、GWに生活設計塾クルー(私が所属する会社)のオフィス移転をした。メンバー全員で「これを機会にモノを減らそう」と固く誓い、引っ越しの2ヵ月前から資料と書籍の整理をはじめること。
古い資料や本は、整理しながらつい読みふけってしまうものだ。インターネットが広く普及したのが2000年頃だとすると、6人のメンバー全員が「普及前」の時代からFPをやっているので、白書など政府発行の資料やデータブックがやたら多い。本棚の場所も取るので、思い切って処分するもの、残すものの仕分けを進めていく。
毎年データを参考にしている「家計調査年報」(総務省統計局)は、ところどころ抜けはあるが昭和58年分からあった。過去データは総務省統計局のHPで入手できるが、アップされているのは平成12年(2000年)分から。それ以前のものは、国会図書館などに行かないと手に入らないので、この年報は移転先に持っていくことに(捨てるのはいつでもできる)。
家計調査年報のバックナンバーのうち、私が欲しいデータは「高齢無職夫婦(夫65歳以上、妻60歳以上)の家計収支」だ。多くの年金生活者は、年金収入だけでは支出を賄うことができず、現役時代に貯めた貯蓄や退職金を取り崩して生活をしている。10年くらい前から、年間収支の赤字額をウオッチしているので、もっと古いデータを見てみたくなった。
古いデータの前に、まず2010~2016年分を見てみよう。
「収入」は、ほとんどが公的年金。公的年金の額は、物価に連動するため上がったり下がったりしている。グラフの上にあるのが年間支出額で、これは「消費支出」と「非消費支出(税金・社会保険料)」の合計額である。収入から支出を差し引くと、収支は赤字。これが年金生活者の家計の特徴だ。赤字分は、貯蓄などを取り崩しているのが実態である。
2010年の年間収支は、約49万円の赤字。年々赤字額は増え、2015年にはなんとマイナス75万円まで拡大している!赤字がどんどん増えていく要因を知りたくて、エクセルに詳細なデータを入力し推移を眺めながら分析したことがある。
数字を並べてみた結果、年金収入は思った以上に減少し、消費支出(食費やレジャー費など)はそれほど大きな変化がなかった。税金と社会保険料の負担は増えているはずなのに、非消費支出も思ったより増えていない。
ここからは私の予測だが、介護保険料や後期高齢者の健康保険料は公的年金から天引きされるため、「年金の額面自体」が減ったと考えた高齢者(アンケート記入者)が多かったのではないか。
いずれにせよ、グラフ掲載期間内の家計収支の赤字拡大のおもな要因は、「お金の使い過ぎ」ではなく、「年金の手取り減少(=税金と社会保険料の負担アップ)」だということがわかった。
>22年前の年間収支の赤字はわずか15万円!
さて、本棚から出てきた古い家計調査年報のデータを見てみよう。昭和58年と直近を比較したかったのだが、この頃は「高齢無職夫婦(夫65歳以上、妻60歳以上)の家計収支」のカテゴリーがない(調査としてあったのかもしれないが、掲載はされていない)。
当時は60歳から満額の年金が支給されていたので、年金生活は60歳から。「60歳以上の高齢世帯(夫婦ではない)」の収入には、夫が少し働いて得た収入や、夫婦以外の同居の家族の収入や支出も含まれているので、現在の調査とは連動性がない。昭和と比較できなくて、残念。
比較できる資料の中で最も古いのは1994年のデータであった。2016年の収支と比べてみよう。
グラフで目を引くのは、1994年の赤字額が少ないこと。年間収支は、2016年がマイナス66万円に対し、1994年はマイナス15万円で済んでいる。赤字額が少ない要因は、次の2つ。
(1)年金収入が2016年より21万円多い(2)消費支出は16万円、税金・社会保険料ともに今より15万円少ない
赤字額が少なければ、老後資金の取り崩しのペースが緩やかになる。これは年金生活者にとても重要なことである。
「老後資金はいくら貯めるといいですか?」といった質問に私は次のように答える。
【老後資金の目安=下記AとBの合計額】 A.65~90歳までの25年間の「年間収支の赤字」の合計額 B.病気の備えや住宅の修繕費、車の買い換え費用などの数年に1回の「特別支出」
25年間の特別支出を1000万円と見積もったとする。年間収支の赤字額が15万円なら25年間で375万円、特別支出と合わせると、老後資金の目安は1375万円の計算になる。
ところが、年間収支の赤字額が66万円なら、取り崩し額は25年分で1650万円、特別支出との合計額は2650万円にもなる。年51万円もの赤字分の差は、25年分の累積だとさらに重たいものになる。収支赤字の額は、老後の生活に大きな影響を与えることがわかるだろう。
もちろん、すべての人が家計調査のデータ通りに暮らすわけではないので、年間収支は各世帯により異なる結果になる。ただし、まだ老後を迎えていない人にとってみると、「年金生活」の具体的な支出イメージは持ちにくいので、家計調査データは参考になるのだ。年金額は人によって異なるが、現役の時よりも収入格差が少ない。そういう意味でも「高齢無職夫婦の年間収支」は、使える資料なのである。
手取りで見ると17年間で33万円の減少!
3つ目のグラフも見てほしい。これは、年金収入が厚生年金と企業年金(退職金の分割受け取り)の合計で300万円ある人の手取り額を試算したグラフだ。手取り額とは、「額面の年金収入」から「所得税・住民税+国民年金保険料・介護保険料」を差し引いた金額のこと。
手取り額は、1999年には290万円あったのが、2016年は257万円。なんと17年間で33万円も減っている!年金生活者のデモ行進が起こってもおかしくないくらいの減り方である。
原因は、税金と社会保険料の負担アップである。グラフの内訳を見ると、1999年は介護保険が導入されていなかったので、「使えないお金」は国民健康保険料が10万円程度だけ。今より高齢者向けの税金優遇もあり、所得税・住民税はかからなかった。
しかし、現在は介護保険料もかかり(介護保険は2000年に導入)、国民健康保険料はアップし、高齢者向けの税優遇は廃止・縮小され(老年者控除の廃止、公的年金控除の縮小)、所得税・住民税がかかるようになった。グラフの試算は、東京23区に住んでいる人の例だが、社会保険料が30万円、所得税と住民税は合計で13万円かかる計算となっている。
今回は怖いグラフの3連発だったため、暗い気持ちにさせてしまったかもしれない。しかし、少子高齢化が進み、「年金額は徐々に減少、高齢者でも税金と社会保険料はこれからも負担増が続く」という流れはこれからも続くだろう。考えたくない現実かもしれないが、働いている間にぜひ知っておいてほしい。「老後は何とかなる」と思ってはいけない。「何とかする」と思えるように、マネースキルを身に付けていこう。
((株)生活設計塾クルー ファイナンシャルプランナー 深田晶恵)
【AERA dot.】5月31日 森友に続き、加計問題でも「知らぬ存ぜぬ」 “前川砲”潰す安倍政権の卑劣
安倍晋三首相の「腹心の友」が理事長を務める加計学園の獣医学部新設が「総理のご意向」で進められたことを示す文部科学省の内部文書はやはり「本物」だった。文科省の前川喜平・前事務次官が5月25日に会見し、安倍政権に反旗を翻した。官邸の「知らぬ存ぜぬ」は卑劣ではないのか?
「安倍首相は森友・加計疑惑が長引いていることを『うっとうしい』と周辺に漏らしていた。与党国対には追及逃れのため『今国会の大規模延長はせず、都議選前までの小幅延長で乗り切れ』と指示を出している。本格的な対応はサミット後に練るが、予想以上に早い展開だ」(官邸関係者)
そればかりか、早くも強引な“前川封じ”の動きがあるという情報もある。
「菅義偉官房長官らは前川氏に激怒している。間接的だが官邸から法務省と最高検を通じて地検特捜部に『天下りのあっせんなどいろいろスキャンダルがあるので、立件を視野に調べろ』と示唆があったとか。立件は難しくブラフの意味合いが強いと思うが、政権寄りのメディアは動くでしょうからね」(法務省関係者)
それほど、前川氏による告発は重かった。会見で国家戦略特区制度での獣医学部の新設について「総理のご意向だ」「官邸の最高レベルが言っていること」などと書かれた文科省の内部文書について「私が在籍中に共有していた文書。確実に存在していた。あったことをなかったことにはできない」と、語気を強めて本物だと証言。文科省の内部調査では資料を「確認できなかった」としたが、前川氏は「見つけるつもりがあれば、すぐに見つかるもの」と異論を唱えたのだ。
また、特区認定の手続きについて「最終的に内閣府に押し切られた」と、内閣府の“ゴリ押し”があったと主張。その上で、国会の証人喚問について「あれば参ります」と言い切った。
だが、政府は黙殺するつもりだ。元上司の松野博一文科相は「辞職した民間人の発言についてコメントする立場にない」。「文書は怪文書のようなもの」と主張していた菅官房長官は前川氏が1月に文科省の天下り問題の責任をとって辞任した経緯について「当初は自ら辞める意向を全く示さず、地位に恋々としがみついた」と、露骨な“人格攻撃”で応じたのだ。
野党が要求した前川氏の証人喚問を、自民党は拒否した。だが、資料の真贋は官僚の目には明らかだ。文科省幹部はこう語る。
「文書は誰が見ても文科省で作成したもので、もう認めて楽にさせてくれ、官邸と内閣府が責任をとれというのが本音。前川会見に『今さら何を』という声もあるが、省内の大半は言い分には納得している。獣医学部新設に反対してきた文科省としては、今回の経緯はすべてを否定されたようなもの。『強引すぎる』という声は当時からあった」
内閣府幹部もこう語る。
「文書は本物でしょうね。審議官クラスは官邸の首相秘書官や事務方から、よく直接電話を受けます。『総理、官房長官はこういう方向でやってほしいとお考えだ』という言い方はよくあり、特殊なケースはメモにして共有します。今回のように『総理のご意向』と書いてあるのは、よほど強く言われたんでしょう」
文書では内閣府の藤原豊審議官が文科官僚に対し、<官邸の最高レベルが言っていること>などと、「圧力」ととれる文言を使ったと記録されている。前川氏は会見の中で「官邸の最高レベル」の意味について、
「一番上であれば総理だし、その次であれば官房長官でしょうから、お二方のどちらかのことかなと思った」
と答えている。実際に総理や官房長官の指示があったのだろうか。発言の主とされる藤原審議官は、経済産業省からの出向組。経産省関係者がこう語る。
「藤原氏は経産省の中では規制緩和などを主張する『改革派』で、今の省内では少数派です。派手な政策を打ち出すタイプで、ある意味、軽いノリ。有力官庁の経産省は文科省を下に見ているため、居丈高な物言いになったのでは。審議官が直接、総理や官房長官と話す機会はまずないが、同じ経産省出身の今井尚哉首相秘書官などを通して聞いた話を文科省に伝えていたと考えると辻褄が合う」
ところで、渦中の前川氏とは、どんな人物なのか。前川氏を知る総務省官僚は、「まともな人ですよ。話はおもしろいし、企業の御曹司なのに全然ひけらかさない。記者会見を見てビックリした」と語る。
前川氏は産業用冷凍機メーカー・前川製作所の創業者一族出身。妹は中曽根弘文元外相の妻という「華麗なる一族」だ。東大法学部卒業後、1979年に旧文部省に入省。初等中等教育企画課長だった2005年には自身のブログ「奇兵隊、前へ!」で、当時の小泉純一郎政権下で検討された公立小中学校への国庫負担金の削減を真っ向から批判するなど、率直な物言いで注目を集めた。
前川氏の入省当時から親交があるという元文科官僚の寺脇研氏がこう語る。
「入省時から将来の次官候補と言われていた。仕事もできて人柄も良い。派閥もつくらず省内で幅広く慕われた。小泉改革を批判したときも今と似た構図で、教育の専門家が一人もいない当時の経済財政諮問会議で、義務教育への予算削減が決められることに辞職覚悟で抗議した。公正さを重んじる性格です」
内閣人事局の設置(14年)により官僚の人事権を官邸が掌握した現在と違い、当時は官僚の人事は官僚が決めていた時代。前川氏はその後も順調に出世を重ね、初等中等教育局長などを経て16年6月に事務次官に上り詰めた。だが、今年1月に発覚した文科省の天下り問題で責任を問われ、わずか半年で辞任。元経産省の古賀茂明氏は、こうした経緯も今回の行動に影響したのではないかと推測する。
「経産省など有力省庁は実際もっとおいしい天下りをしているのに、安倍政権には文科省だけが『悪の巣窟だから退治してやる』というように扱われた。『政治主導』の演出に利用された不満が省内にたまっていたはず。前川氏も今回の行動で再就職などが難しくなるわけで、相当な覚悟でしょう。いわば忠臣蔵の浅野内匠頭です。前川氏を慕う現職職員は今も多く、これから内部告発が続けばさらに大きな展開になるでしょう」
前川氏に続く「四十七士」は現れるのか。だが、前川氏の会見直後に行われた民進党によるヒアリングでは、文科省側は資料の存在について「関係者に確認したところ、確認できなかったという結果が出ましたので、その点についてはそういうことです」(串田俊巳大臣官房総務課長)などと、これまでと同じ答えを繰り返すばかり。元トップの捨て身の訴えは黙殺された。
官僚たちはなぜ口をつぐむのか。前述のとおり官邸に人事権を握られているという事情はあるが、今回はそれ以上の「闇」を感じさせる出来事があった。
読売新聞は22日、前川氏が文科省時代に東京・歌舞伎町の「出会い系バー」に通っていたという“スキャンダル”を突如として報じた。少し前から文科省の内部文書のネタ元が前川氏ではないかといううわさが飛び交っていたため、政府筋による“意趣返し”のリークがあったのではないかという観測が広がった。
この報道について前川氏は25日の会見で、店に行ったことは認めながらも、女性や子供の貧困について話を聞くのが目的だったと説明。「極めて個人的な行動をどうしてあの時点で報じたのか、私にはまったくわかりません」と語った。
また、前川氏は昨年9月ごろ、杉田和博官房副長官から「こういうところに出入りしているそうじゃないか」と注意されたと明かした。杉田氏は警察庁出身で、危機管理のプロとして官邸の信頼が厚い人物。どういう手段で情報を得たのか、勤務時間外の官僚の行動まで把握していたことになる。前出の内閣府幹部が語る。
「怖いよね。変なところに飲みに行けない。杉田さんは最近は人事だけでなく、審議会の委員の人選にまで口を挟んでくる。菅官房長官の威光をカサに着てくるが、本当に菅さんの意向か、杉田さんの忖度か、こっちは確認しようもない」
官邸にプライベートまで監視され、官僚たちは身動きを封じられているのだ。
前川氏が「総理のご意向」などの内部文書を部下から示されたのは昨年9~10月ごろ。ちょうどこのころから獣医学部新設は実現へ急ピッチで進んでいく。
「それ以前は文科省や農林水産省、自民党獣医師問題議連会長の麻生太郎氏、前担当大臣の石破茂氏などの反対に遭い、難航していた。愛媛県と今治市は国家戦略特区で獣医学部の新設が認められる以前、小泉内閣時代に始まった構造改革特区に獣医学部新設を15回にわたって提案したが、全部、蹴られていました」(自民党中堅議員)(本誌・小泉耕平、村上新太郎、大塚淳史/今西憲之)
※ 週刊朝日 2017年6月9日号