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消費税で物価が上がっても賃金が上がらないため、給料で買えるものが減った―文春オンライン
2017年4月1日

【文春オンライン】3月28日 日本の税金は不平等 富裕層がトクをして庶民は貧しくなる理由
『ルポ 税金地獄』が明らかにする驚きの事実とは
重税国家ニッポンの現実を知っているだろうか。 給与明細を見ると、所得税、住民税、健康保険税、復興特別所得税……3割~4割を「取られ」ている人がほとんど。買い物すれば消費税、家を持てば固定資産税、親族が死ねば相続税もかかる。一方で節税ノウハウをもつ富裕層は巧みに税逃れをし、資金の海外流出は止まらない。不平等な税金システムの実態に迫る『ルポ・税金地獄』の著者より、驚きの事例を紹介する。
>タワマンで節税。税法の抜け穴をよく知る資産家たち
 英領ケイマン諸島、バミューダ、オランダ領セント・マーチン島……。
 そのコンサルタントの男性が開いたパスポートには、世界各地のタックスヘイブン(租税回避地)を訪ねたことを示す入出国のスタンプがいくつも押されていた。男性は、タックスヘイブンでの会社の設立や資産運用に携わって30年近くになる。
 取材したのは2016年春。世間ではタックスヘイブンを利用した富裕層の税金逃れや資産隠しを暴露した「パナマ文書」が話題になっていたが、男性はまったく意に介していなかった。
「したり顔で解説するコメンテーターや学者を見ると思いますよ。この中に、実際にタックスヘイブンで会社を設立し、現地の法律事務所と折衝して金融取引をしたことがある者がどれだけいるのかとね」
 男性は自らの取引で法に触れたことは一度もないと、胸を張った。
 そして、タックスヘイブンでの取引について、日本でいったん納めた税金を取り戻した「戦歴」を語った。日本の税法を研究して「抜け穴」があることをわかったうえでの取引だったためだ。
 このコンサルタントの男性が言うように、税法には多くの「抜け穴」がある。それは、世界の税制が1つではなく、それぞれの国が税制を定めていることから生じる抜け穴といえる。国内の制度でも、税制が複雑で、いろいろな利害関係があるため、「抜け穴」はできる。富裕層は専門家に相談するなどして、こうした抜け穴を活用しやすい立場にいる。
 朝日新聞経済部は、15年8月から1年余りにわたり、経済面を中心に「にっぽんの負担」という連載を続けた。こうした税の抜け道を駆使して節税に励む富裕層や税制優遇で恩恵を受ける大企業がある一方で、低所得層が税や社会保険料の負担に追い詰められていること、様々な税制が時代遅れになっていることを現場から報告して、解決策を探った。
 なかでもタワーマンション(タワマン)を利用した富裕層たちの節税策は、本連載で報じたことで大きな反響を呼んだ。
 それは、タワマンの高層階の「時価」と、相続税や贈与税のために使われる「評価額」との差が大きいことに着目した節税手法だった。
 相続税や贈与税は国税だが、その評価額には、自治体が集める固定資産税の評価額が使われる。それは、総務省が定めた基準で計算したマンション建築にかかる費用(再建築価格)がもとになる。マンション全体で再建築価格を算出し、上層階か下層階かに関係なく部屋の広さで割り振られる。
 ところが、実際のタワマンは、階が上がるにつれて販売額は高くなる。この時価と評価額の差に注目した節税がタワマン節税の基本だ。私たちが 取材した中では、タワマンを活用して6億円の資産を課税されずに息子に渡すことに成功した富裕層もいた。
 連載の反響は大きかった。これを受けて政府は18年度から固定資産税に例外を設け、タワマンの場合には上層階の固定資産評価を上げ、下層階は下げる方針を決めた。階数によって増減率は変わるが、40階建ての場合は、最上階の評価額が5%上がり、1階は5%下がる。1階と最上階は固定資産税も相続・贈与税も評価額が1割違うことになった。
 しかし、これで十分なわけではない。低層階と高層階の実際の価格差は1割程度では済まない。また、40階の評価は5%高くなるにすぎない。一方、評価の差が大きくなると、通常のマンションに比べて、タワマンの低層階の評価が低い現象も生まれかねない。公平さを追求すると、すべてのマンションを個別に評価しなければいけなくなり、タワマン節税の対策が、固定資産税の制度全体の見直しにつながりかねないのだ。
>ふるさと納税の恩恵は富裕層に
 こうした制度の矛盾をつく節税対策はまだある。その代表はふるさと納税だ。
 16年10月、横浜市の赤レンガ倉庫のイベント広場で開かれた「ふるさと納税大感謝祭」には、全国61市町村の「出店」が軒を連ね、「地方物産展」の様相になった。初日は、午前10時のオープンとともに、待ちかねた来場者が会場になだれ込み、足の踏み場もないぐらいの盛況になった。中でも行列ができたのは、宮崎県都城市のコーナーだった。持ち込んだホットプレートで焼いた人気の宮崎牛が試食でき、紙コップで焼酎の「白霧島」がふるまわれた。
 15年度のふるさと納税の寄付額が約42億円と首位になった都城市の人気の高さを見せつけたが、会場となった横浜市は逆に、15年度のふるさと納税による市民税の流出が約31億円、神奈川県も県民税の減額が約21億円と、いずれも全国一多かったので、制度を象徴する光景となった。
>ふるさと納税大感謝祭。都城市の前は賑わいを見せる。
 ふるさと納税は本来、自分が応援したい生まれ故郷などに寄付をして、所得税や住民税を軽くするしくみだ。だが、記者が「大感謝祭」で見た光景は、自治体の特産品を売り込む自治体の姿でしかなく、寄付によって解決したい地域の課題を訴える自治体のコーナーを見つけることはできなかった。
 そして、ふるさと納税による減税の恩恵を受けやすいのは、やはり富裕層だ。都城市は100万円を寄付すると、小売価格で60万円を超える焼酎1年分がもらえる。ふるさと納税による減税には所得に応じた上限がある。100万円を寄付すると、計99万8千円が所得税と住民税から戻ることになるが、その恩恵を受けるためには、サラリーマンなら年収3千万円ぐらいが必要となる。
 このように、富裕層は様々な税制の「抜け道」を活用できる。さらに、多くの税制優遇も用意されている。子や孫への贈与が1500万円まで非課税になる「教育資金贈与信託」の制度は、安倍政権が発足してすぐの13年4月に始まったが、信託協会によると、信託財産の総額は16年9月末に約1兆2千億円に達した。
 個人に適用される所得税は最高で45%だが、法人実効税率は16年度に30%を切った。こうしたことを背景に、「合同会社」の設立が増えている。06年にできた新しい会社の形態で、少ないお金で設立でき、決算公告の義務もない。その設立数が、10年の約7千社から16年は約2万4千社に増えた。個人のアパート経営者が合同会社を設立して節税するような動きが広がっていることも一因だ。
>税金で貧困率があがる日本
 一方で、消費税が上がっても給料が上がらない人は多い。その結果、消費増税があった14年度の実質賃金は3.0%も下がった。消費税で物価が上がっても賃金が上がらないため、給料で買えるものがそれだけ減ったということだ。実は、実質賃金は11年度から5年連続して下がり、10年度より5.3%も減っている。賃金が下がったり、物価が上がったりして、実質的な給料の価値が下がっているのだ。
 庶民の生活を圧迫しているのは消費税だけではない。高齢化とともに上がり続けている年金、医療、介護の社会保険料は、所得が低い人にも容赦なくかかる。増え続ける非正規労働者が多く加入する国民健康保険には所得に関係なく、世帯ごと、家族の人数ごとに定額でかかる負担があり、悪税と言われる「人頭税」のような要素がある。
 自治体財政も逼迫しているため、税も保険料も、滞納すると差し押さえをするなど厳しい取り立てが待っている。
 本来、税や保険料は、富める者から貧しい者に再分配をして、自由な経済活動で生じた格差を是正するためにある。ところが、日本では、再分配の前と後で貧困率を比べると、勤労者や子供のいる世帯で再分配後の方が貧困率が上がる逆転現象が経済協力開発機構(OECD)の加入国で唯一起きている。再分配が機能していない先進国として恥ずかしい事態だ。
 朝日新聞経済部は、介護や医療などの現場で高齢者らが置かれた実態を報告した『ルポ 老人地獄』(文春新書)を15年12月に上梓した。今回の『ルポ 税金地獄』は、その解決のための国民の負担を考える続編と言える。団塊世代が後期高齢者になる2025年まで10年を切り、これを支える現役世代が確実に減っている今、いかにしてすべての世代の可能性を高める社会を作っていくかを考えるヒントになれば幸いである。

【朝日新聞DIGITAL】3月30日 エンゲル係数、29年ぶり高水準 食文化の変化が影響か
 消費支出のうち食費が占める割合を示す「エンゲル係数」が急伸している。総務省の家計調査によると、2016年(2人以上世帯)は25・8%と前年から0・8ポイント上昇し、29年ぶりの高水準になった。かつて学校で、低下することが「豊かさを測る尺度の一つ」と教わった係数がなぜ今、上昇しているのか。
 東京都江戸川区のスーパー「いなげや」の総菜売り場で、近所の女性(74)が和洋とりどりのおかずの品定めをしていた。
 「夫の介護で疲れているときはお総菜にしています。手作りするのと半々ぐらい」。女性は要介護2の夫(73)と二人暮らし。介護費がかさみ、年金だけでは足りず月10万円ほど貯金を取り崩して生活する。それでも「食費はかかるけど、そうも言っていられない」。
「夫の介護で疲れているときはお総菜にしています。手作りするのと半々ぐらい」。女性は要介護2の夫(73)と二人暮らし。介護費がかさみ、年金だけでは足りず月10万円ほど貯金を取り崩して生活する。それでも「食費はかかるけど、そうも言っていられない」。
 「時間がなくて、ついついお世話になっています」と話すのは会社員の女性(44)。夫と共働きしながら2人の子育て中。「割高だけど、時間を買うと思って週に3回ぐらいは買っています」
 高齢化や共働き世帯が増える中、家計の「食」の中身は、かつてと様変わりしている。中でも総菜など「調理食品」が消費支出に占める割合は16年に3・4%と、30年前(1・8%)の倍近くに増加。外食や、ペットボトルで買うことも増えた飲料などが伸びているのも特徴だ。
 経済成長とともに下降の一途をたどってきたエンゲル係数は、05年を境に上昇傾向に転換した。総務省が14~16年の上昇幅1・8ポイント分について分析した結果、その半分の0・9ポイントを占めたのが食品価格の上昇。円安で輸入食品の価格が上がっているのに加え、中国など世界的な食料需要の高まりなどが背景にある。
 そこに、調理食品や外食の増加などライフスタイルの変化(0・2ポイント)や、将来に備えた節約志向などで消費支出そのものが減った影響(0・7ポイント)が加わった。
 「生活にゆとりのないばあい、他の生活費は減らせても、食料費だけは減らすことが難しいので、一般的には、エンゲル係数が大きくなる」
 30年前の中学「公民」の教科書でこう説明されていたエンゲル係数だが、最近の上昇は貧困の予兆なのか。
 岐阜大の大藪千穂教授は「かつてと違い、高齢化や為替変動、食文化の変化など様々な要因が全部混ざってエンゲル係数が上がっており、『上昇したから貧困』と直結はできなくなっている」と指摘。一方で、「特に低所得者層にとっては今でも生活の大変さを表す指標の一つとして重要な意味を持ち、中身を分析して影響を考えていく必要がある」と話す。(中村靖三郎)

【東洋経済オンライン】3月29日 エンゲル係数の急上昇は何を意味するのか 消費を増やし経済を安定化させるためには?
 2017年の春闘がどうなるのかは消費の先行きに大きな影響を与える。2017年1月の有効求人倍率は1.43という高水準で、失業率も3.0%という低い水準であり、労働市場の需給逼迫は明らかだ。新卒者の就職戦線は著しい売り手市場で、企業の人事担当者は新卒者の確保にやっきになっている。
 しかし、こうした中でも賃金は低迷している。人手不足を反映して、パートやアルバイトの時給は上昇しているが、正社員の賃金の上昇には結び付いていない。
>日本は賃金が上昇しやすい環境にある
 3%という失業率の水準は、日本経済で失業と欠員が一致する構造失業率として考えられている水準にある。労働力人口にちょうど見合うだけの雇用が経済にある状態なので、完全雇用という言い方をする人もいる。自ら職を辞して条件がよい仕事を探す人がいるので、どれほど景気が過熱して人手不足になったとしても、失業者がまったくいなくなるということはない。「完全雇用」とはいっても失業率はゼロ%にはならない。
 需給が逼迫すれば価格が上昇するという経済の基本的な考え方に立てば、構造失業率に近い水準にまで失業率が低下すれば、賃金は上昇しやすい状態にあると考えられる。
 賃金上昇率と失業率の間にはフィリップスカーブと呼ばれる逆相関の関係があることは確かだが、失業率が何%になれば賃金上昇率が加速するという固定的な関係ではない。労働市場の背景となる経済社会状況に影響されて、賃金の上昇が加速しはじめる失業率は必ずしも一定ではない。
 賃金が上昇すればサービス価格が上昇しさまざまな商品の価格上昇に波及するし、逆に物価が上昇すれば労働者は生活を維持するためにそれに見合う賃上げを求める。賃金上昇率が物価上昇率に影響を与え、物価上昇率が賃金上昇率に影響するという密接な相互関係がある。現在の経済学でフィリップスカーブとして使われるものは、賃金上昇率を物価上昇率に置き換えて、物価上昇率と失業率の関係にしたものが多い。
 インフレを加速しない失業率であるNAIRU(Non-Accelerating Inflation Rate of Unemployment)という考え方があるが、その水準は構造失業率に近い水準であるとみられる。このインフレを加速しない失業率も固定的なものではない。たとえば、現在失業率が3%で物価上昇が起こっていないからといっても、インフレが激しくなった後に金融財政政策で景気を減速させ、失業率を3%に戻せばインフレを止められるとは限らない。インフレが激しかった時代の経験からは、一度インフレが加速すると、それを止めるためには失業率を大きく高めて景気を冷やす必要があるというように、過去の経験に依存する「履歴効果」があるからだ。
>消費が増えないのは所得が低迷しているから
 日本で失業率が低下しているにもかかわらず物価上昇率が高まってこない原因として、家計の消費意欲が弱く内需が低迷していることが問題とされることがある。しかし、消費の低迷は消費者の意欲の問題ではなく、所得の問題だ。
 GDP(国内総生産)統計の家計貯蓄率をみれば、1994年度に11.1%だった家計貯蓄率は2015年度には0.7%にまで低下していて、昔に比べて手取り所得から消費に回る比率は高まっている。
 家計は可処分所得のほぼすべてを消費に振り向けているが、家計は貯蓄率をマイナスにすれば、現在の所得で今まで以上に消費を拡大することが可能だ。しかし、そのためには保有している資産を減らす必要があり、経済が拡大する中で家計が資産を減らして消費を拡大しなくてはならないというのは、安定的に拡大する経済の姿として、どう考えても不自然だ。家計の消費が低調なのは消費意欲の問題ではなく所得が不足しているからであり、所得の拡大がなければ消費を持続的に拡大させることはできない。
 2016年の家計調査では、エンゲル係数が大きく上昇して1980年代後半以来の高い水準になったことが話題となった。
 エンゲル係数は「消費支出に占める食費の割合」だが、食費は生きていくためには削減が難しい支出であるため、所得が低い層では高くなり、所得が高い世帯では低くなる。エンゲル係数が低いことは、生命維持のために欠かせない食料品以外の消費を行う余地があり、家計の余裕が大きいことを意味している。
>エンゲル係数上昇の要因は高齢化だけではない
 日本では経済の発展に伴って所得水準が上昇し、エンゲル係数は長期的に低下を続けてきたが、2000年代に入ると反転して上昇傾向を示すようになった。この大きな原因は、日本経済が成熟化して所得の伸びが鈍化する中で高齢化が進んでいるという人口構造の変化だ。高齢者の世帯は子供の教育の必要性がないなど消費支出が少なく、エンゲル係数が高い。エンゲル係数の低下が止まり上昇に転じたことは、必ずしも日本の家計の余裕度が低下したということではない。
 しかし、ここ数年のエンゲル係数の急上昇は人口構造の変化だけでは説明がつかず、所得が伸びない中で必需的な消費の代表である食料の物価が相対的に高い上昇率となったことが大きな原因であると考えられる。このことは、賃金上昇率が高まることによって物価の上昇が加速するという順番でデフレからの脱却が起こるのであれば問題はないが、物価上昇が賃金上昇よりも先に起こるという順番では、実質所得の減少から消費が低迷してしまい、結局デフレ脱却が頓挫してしまう危険性を高めることを示唆している。
 消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)は2016年に入ってから前年比で下落傾向が続いてきた。政府・日銀が掲げてきた2%の物価上昇の目標からは程遠い状況だったが、国内消費の観点からは実質所得を下支えすることになっていた。物価の下落は原油価格の下落が大きな要因だったが、原油価格が下げ止まったことなどから、2017年1月には消費者物価(生鮮食品を除く総合)も上昇に転じている。このまま原油価格が持ち直していけば消費者物価指数の上昇率は、今年末頃には前年比で1%台に達する可能性が高い。
>物価の上昇よりも先に労働分配率の引き上げを
 政府は経済界に4年連続で賃上げを要請するなど、近年の春闘は政府主導の「官製春闘」とも揶揄されるが、それでも2017年の賃上げが昨年の水準を超えることは難しそうな状況だ。春闘の賃金交渉では、物価の動向も議論の対象となるが、議論のベースとなる「事実」はその時点で判明している前年末頃の物価の動向、つまり現在でいえば2016年末頃の物価上昇率である。このため賃上げのペースは、どうしても物価上昇に遅れがちになる。
 このまま物価上昇率が高まっていけば、賃金の増加は物価上昇に追いつけず、実質ベースで所得が減少してしまうだろう。所得の低迷から消費が落ち込むおそれが大きい。もちろん物価がこのまま下落を続けることが望ましいというわけではなく、財政・金融政策を総動員して、とにかく物価の上昇を引き起こせばデフレからの脱却が実現するという戦略では成功がおぼつかないということだ。
 GDP(国内総生産)やNI(国民所得)の中からどれだけの割合が賃金として支払われたかを表す労働分配率は、多くの先進諸国で低下傾向にある。日本の消費を持続的に拡大するためには、労働分配率の上昇が必要だ。これは、政府が企業に呼びかければ実現するというようなものではなく、税制や雇用に関する法制度や慣行、経済に対する考え方など社会的な規範を含む幅広い問題を検討する必要があるだろう。欧米でも格差の拡大が問題となっているように、労働分配率の低下傾向を逆転させることは、日本経済のデフレ脱却ということだけではなく、先進諸国経済の安定化のためにも重要な課題である。