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経済的な苦しさをしめすエンゲル係数が上昇
2017年2月18日

【dot.asahi】2月15日 豊洲市場問題・極秘文書を入手 都「議会には『きれいな土地を購入する』と言ってしまった」
 最高責任者だった石原慎太郎元都知事(84)の参考人招致が決定した豊洲市場問題。本誌は“失政”の証拠となる2003年4月から
05年5月にかけての都と東京ガス(以下、東ガス)の交渉記録や石原氏側近の浜渦武生副知事(当時)が01年7月に交わした計2枚の文書(以下、「浜渦合意」)を手に入れた。しかし、そこに関わった浜渦氏と1999年から01年6月まで都の市場長を務めた大矢實氏を直撃するも否定された。
「疑惑」はその後も続く。「浜渦合意」の1年後、02年7月に都と東ガスが結んだ「豊洲地区開発整備に係る合意」(以下、「02年合
意」)でようやく汚染処理についての言及が出てくる。押印したのは前川燿男(あきお)・知事本部長(04年4月から本局長)ら5人の局長などだ。前川氏は現・練馬区長で、昨年の都知事選では小池氏を応援した人物だが、皮肉なことに“戦犯”の一人でもある。本誌が以前報じた通り、東ガスとの交渉が05年5月に終わった直後の同年7月に退職し、9月には東ガスに“天下り”していた。
 前川氏らが結んだ「02年合意」は、交渉資料によれば「浜渦合意」の内容を再確認したもの。だが、汚染対策について初めて具体
的に、<「環境確保条例」に基づき対応を行う>と書かれている。石原氏を相手取り、豊洲の用地売買について住民訴訟を起こしている原告団の一人、水谷和子氏はこの文言が「重要だ」と語る。
「この都条例の規定は汚染そのものを除去する義務がないゆるいもので、覆土でフタをするなどして、汚染の拡散を防止する措置を
とればいい。汚染が残ることが前提とされています。あとは買ったものの自己責任となってしまうのです」
 前川氏は本誌の取材に「(交渉に)関与したことはありません」などと説明していた。だが、この主張を覆す証拠が今回、明らか
になった。「02年合意」を受けて汚染対策を決める03年から05年の計11回の交渉の場には、すべてに前川氏がトップを務める知事本局の担当者が出席しており、同局が交渉の中心的な役割を担っていたことは明白だ。04年7月22日の記録では同局の参事が、「庁内では知事本局長までは話をしている」と、上司の前川氏へ報告をあげたとハッキリ言っているし、同年12月21日には東ガス側が前川氏のいる知事本局長室を訪れ、土壌汚染対策について意見交換した記録もある。自分は関係ないという前川氏の主張とは矛盾する。
ちなみに前川氏は本誌の取材に東ガスへ天下ったことについて、「問題ない」と答えていたが、在職中の職務に関連する企業への天
下りを禁じた都の基準に抵触していた可能性がある。
 さらに資料から都側の無責任な「ダブルスタンダード」も露呈する。03年12月2日の会話だ。
<都が(汚染処理費用を)負担するすべは本当にないのか。予算が通らないということなのか>(東ガス)
<議会での説明がもたない>(都)〔以下中略〕
<議会の中で、きれいになった土地を購入すると言っているのか。事実関係を知りたい>(東ガス)
<市場が委員会のなかで発言をしている>(都)
<委員会のなかで発言をしているので、先送りすることはできないということか>(東ガス)
 都は「汚染土壌が残る」という前提で東ガスと合意しておきながら、都議会には「きれいになった土地を購入する」と、真逆の説
明をしていたことになる。実にいい加減である。
 すったもんだの末、05年5月に東ガス側は汚染にフタをするだけでなく、地表から2メートルまでの深さの環境基準を超える汚染物
質を除去するなどの条件で都と合意し、対策工事を実行した。
「この時に両者が合意した汚染の調査方法は、30メートル四方につき1地点を調査すればよいという粗い基準で、結果的に多くの汚
染が残されてしまったのです」(石原氏を相手取り、豊洲の用地売買について住民訴訟を起こしている原告団の一人、水谷和子氏)
 結局、08年には都の調査で環境基準の4万3千倍を超えるベンゼンなどの汚染が発見される。慌てた都は汚染処理費として858億円
をつぎ込んだが、東ガスは78億円を負担したのみだった。なぜ、公金が一方的に使われたのか。本誌は08年当時に都の市場長だった比留間英人氏を直撃しようと自宅を訪ねた。しかし、本人は出てこず、妻が「取材には一切応じませんので、申し訳ありませんがお引き取りください」と語るのみだった。代わって移転を決めた当時の大矢市場長(前出)が、08年に高濃度のベンゼンが検出されたことについて、こう主張した。
「私は関知していないが、政争に巻き込まれたんだよ。ためにする議論もされている。覆土で問題なかった。地表から4メートルの
深さまで対策したものを5メートルまで掘れば、そりゃあ、地下は汚染されている。問題は改善された土壌から出るかどうか。検査の仕方もある。深く掘れば掘るほど汚染は出るに決まっている。そんなことしても意味がない。地球の真ん中にマグマがあって熱が高いからいけない、というのと同じじゃないか?」
 17年1月にも豊洲市場の地下水から環境基準の79倍のベンゼンが検出されているが、“政争”で済む問題なのだろうか。(本誌・
小泉耕平、上田耕司)
※週刊朝日 2017年2月24日号より抜粋 

【毎日新聞】2月18日 ふるさと納税 返礼品競争過熱 困った目玉なし東京23区17年度予想、208億円の税収減を見込む
 高級肉などの「返礼品競争」が問題となっている「ふるさと納税」の影響で、東京23区が2017年度、少なくとも208億円
の税収減を見込んでいることが各区への取材で分かった。16年度の129億円から1.6倍になる見通し。地方の自治体が特産品を用意して寄付を呼び込み合う中、目を引く産物に乏しい23区は、止まらない税流出に頭を抱えている。【五味香織、谷本仁美】
 税収減の見込みは、多い区で▽世田谷区30億円=16年度比1.8倍▽港区23億4100万円=同1.5倍▽渋谷区14億60
00万円=同2倍--など。ほぼ全ての区が、16年度より多くなると予測している。
 ふるさと納税は、出身地など応援したい自治体に寄付すると、居住地の税が軽減される仕組み。都市部と地方の税収格差を埋める
目的で08年度に導入された。手続きの簡略化や軽減の上限額の引き上げによって15年中に利用者が急増、16年度の23区への影響は前年度の5.4倍に跳ね上がった。高市早苗総務相は「競争過熱や、制度の趣旨に沿わない返礼品は問題」として、対策に乗り出す考えを示している。
 各区は減収拡大に危機感を募らせる。世田谷区の保坂展人区長は2日の記者会見で「学校一つ分の減収だ」と述べ、不快感をあら
わにした。30億円の税収減は学校1校の改修費に相当するという。
 杉並区の田中良区長は、仲介サイトで人気上位の返礼品を高級肉が占めていることに「税制度が『肉食欲』にじゅうりんされてい
る。古里を応援しようという思いで税金の一部を納めるはずなのに、モラルハザードだ」と恨み節を述べた。
 地元で返礼品を探す区担当者は「地方と比べられたら勝ち目がない」とため息を漏らす。中野区は昨年10月から、交流のある青
森県や北海道の特産品を返礼品にして寄付を募っている。これまでに約4500万円の寄付を受けたが、来年度の減収見込みは7億円を超え、遠く及ばない。しかも、寄付の半分は返礼品や送料などの経費で消えてしまうという。
 杉並区も17年度から、仲介サイトを利用して寄付を募る方針だ。ただ、直接的な返礼品は用意せず、被災地支援や福祉の充実に
活用する方法を検討している。
 
【日本経済新聞】エンゲル係数29年ぶり高水準 共働き増・値上げ…  16年、0.8ポイント上昇の25.8%
総務省が17日発表した2016年の家計調査速報によると、家計の支出に占める食費の割合である「エンゲル係数」は2人以上の世帯で
前年より0.8ポイント上昇して25.8%となった。1987年以来29年ぶりの高水準。食品価格が上昇したほか、共働き世帯の増加で調理食品などの購入が増えたことが背景にある。衣料品などを買い控えており、家計の節約志向は根強い。
 16年の1世帯あたりの月額消費支出は平均28万2188円で、物価変動の影響を除いた実質で前年に比べ1.7%減った。前年を下回っ
たのは3年連続だ。
 勤労者世帯の消費支出も実質で1.7%減。エンゲル係数(農林漁業世帯を除く)は24.1%となり、90年以来の高水準だった。
 家計の支出のなかで、食品はほかの支出に比べて削りにくく、一般的にエンゲル係数が高いほど他の支出に回す余裕がなく、経済
的に苦しいとされる。経済が発展途上にあるときは高く、成熟すると低下してくる。80年代以降にエンゲル係数が低下傾向だったのは「景気が上向き消費全体が活発で、娯楽など食品以外の支出が増えたため」(総務省)とされる。
 日本経済はすでに成熟しているが、同指数は15~16年の2年間で1.8ポイント上がった。総務省は「うち半分は食品の物価上昇に
よるもの」と分析した。
 消費者物価指数(CPI)をみると、16年の総合指数は0.1%低下したが、食料は1.7%上昇。円安傾向などで原材料価格が上昇し
、菓子類や加工食品が値上がりしたためだ。
 働く女性の増加も食品への支出増につながっている。総務省が17日発表した労働力調査(詳細集計)によると、女性の就業率(15
歳以上)は48.9%と前年比0.9ポイント上昇した。93年(49%)以来、23年ぶりの高い水準だ。15~64歳の生産年齢人口ベースでみると就業率は66%に達し、過去最高水準となっている。16年の女性正社員の雇用者数は36万人増の1078万人となり、増加数はこの10年で最も多かった。
食品への支出は勤労者世帯で増えた(東京都内)
 食品への支出は2人以上の世帯で実質0.2%減だったが、勤労者世帯では0.6%増。特に「時短」につながる弁当や総菜セットなど
調理食品は4.5%増と旺盛だ。
 一方、勤労者世帯でも家具・家事用品は1.8%減、被服及び履物は3.4%減と振るわない。勤労者世帯の可処分所得は42万8697円で
実質0.4%増。企業の賃上げの効果もあり4年ぶりに増加したが、可処分所得のうち消費に回した割合を示す「平均消費性向」は1.6ポイント低い72.2%で、15年ぶりの低水準となった。
 SMBC日興証券の牧野潤一氏は「16年は賃上げより食品値上げの影響が大きく、節約志向が高まった」とみる。特に無職世帯に
とって値上げは家計に打撃だ。高齢夫婦の無職世帯ではエンゲル係数が15年から1.7ポイント上昇の27.3%となった。