【琉球新報】12月15日<社説>オスプレイ墜落 海兵隊撤退しかない 訓練場返還式典は中止せよ
この危険で不気味な灰色の機体が飛ぶ限り、どこに落ちてもおかしくない。県民の命と尊厳を守り、犠牲者を出さないためになすべきことが一層鮮明になった。
それは危険機種の撤収にとどまらない。欠陥機を運用する在沖米海兵隊の全面撤退と辺野古新基地、高江ヘリ着陸帯の建設断念を強く求める。
海兵隊の垂直離着陸機MV22オスプレイが13日夜、名護市安部の海岸に墜落した。多くの県民が「落ちるべくして落ちた」と背筋が凍る恐怖感を味わっている。
沖縄配備を強行した上、危険な訓練を放置する日米両政府への強い怒りが基地の島に充満している。
<見苦しい矮小化>
日米両政府は北部訓練場の過半返還の記念式典を22日に催す予定だが、東村高江のヘリ着陸帯建設を急ぐ強権的対応が強い反発を招く中、墜落事故まで起きた。式典強行は県民感情を逆なでする。
翁長雄志知事は式典中止を要求した。北部訓練場は返還を前に基地機能強化が際立ち、安倍政権が口にする「負担軽減」は虚飾に満ちている。安倍政権で「基地負担軽減」を担う菅義偉官房長官は式典中止を決断すべきだ。
海兵隊によると、事故機は空中給油を受ける訓練中に切れた給油管がプロペラを破損し、不安定になったという。制御できなくなったから海に落ちたのだ。墜落の衝撃で機体はバラバラになって波間に漂った。それでも海兵隊と日本政府は「不時着」と言い張る。オスプレイが使う辺野古新基地計画などへの影響を抑えようとする矮小(わいしょう)化は見苦しい。
墜落の要因は激しい訓練にもある。高江ヘリ着陸帯への離着陸の頻度は増し、宜野座村や金武町の抗議をよそに、騒音防止協定に抵触する深夜まで両町村の住宅地上空で物資宙づり訓練が続いている。
そして、今回の墜落は風速が強い暗闇の中での空中給油訓練中に起きた。練度向上を最優先し、民意を無視して危険な訓練を強行する海兵隊の組織体制、人権意識の希薄さが引き起こしたのだ。同じ日の夜、配備先の普天間飛行場に別のオスプレイが胴体着陸していたことも明らかになった。
海兵隊の安全管理は全く機能していない。オスプレイを巡り、2012年に全41市町村長と議長が建白書に署名し、「オール沖縄」で配備に反対した。今も建白書は生きている。翁長県政は海兵隊撤退にこぎ着ける包括的基地施策を立案し、日米政府との折衝力を高めてもらいたい。
<県民見下す暴言>
駐留する地の住民感情を全く認識していない。この人の思考回路はどうなっているのか。米軍統治下に逆戻りしたかと錯覚する。
安慶田光男副知事の抗議に対し、在沖海兵隊トップのニコルソン四軍調整官は「操縦士は住宅、住民に被害を与えなかった。県民に感謝されるべきだ。表彰ものだ」とのたまい、抗議されること自体に不満を示した。机をたたき「政治問題にするのか」と開き直る場面もあった、という。
沖縄を見下す「植民地意識丸出し」(安慶田副知事)の暴言だ。トップの姿勢が軍隊組織に悪影響を及ぼす。海兵隊は沖縄社会と到底相いれない異物と化している。一刻も早く姿を消してもらいたい。
県内での米軍機墜落は今年2件目で日本復帰後48件目だ。年に1度以上、米軍機が落ちる都道府県がどこにあるのか。オスプレイは試作段階を含めて墜落事故が相次ぎ、37人が犠牲になっている。
この欠陥機が飛び続ければ、墜落などの重大事故は避けられない。安全対策を尽くすといっても新たな犠牲を防ぐ担保にはならない。沖縄の空から消えてもらうしかないのである。
海上保安庁の合同検証要求に対する米軍の返答はなく、現場から報道陣を遠ざけるよう県警に規制を促す場面もあった。日本の主権が発揮できない現場統制、日米地位協定の欠陥も正さねばならない。
【しんぶん赤旗】12月17日<主張>個人消費の低迷 収入増やし立て直すこと急務
年末を迎え、家計のふところ具合が気にかかる季節ですが、間もなく4年になる安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」のもとでの家計収入の伸び悩み、消費の低迷は深刻です。政府の統計でも勤労者の実質賃金は、今年初めから前年同月を上回っていたのが10月には横ばいに転じ、家計の消費支出は1年以上にわたって実質マイナスを続けています。「アベノミクス」で大企業のもうけや内部留保が増えても賃金は十分増えていないためで、国民の収入を増やし、消費を立て直すことがいよいよ差し迫った課題となっています。
―政府の経済統計でも
今週新たに発表された日本銀行の全国企業短期経済観測調査(短観、12月分)によると、企業の業況判断指数(DI)は大企業製造業が1年半ぶりに改善したものの、先行きの見通しでは製造業、非製造業とも悪化を予測、依然不安定なことが明らかになりました。とりわけ大企業の製造業のうち、「小売り」や「物品賃貸」「宿泊・飲食サービス」などの業況判断が悪化しており、消費の不振が長引いて、企業の活動にも影響していることを浮き彫りにしています。
日銀の短観は調査対象が多く、調査時点から発表までほとんど間がないことから注目されている経済指標です。業況判断は「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を差し引いたもので、全体の判断は改善しても、中小企業製造業では「悪い」と答えた企業が多数です。
日銀短観だけでなく、政府などが発表する一連の経済指標で顕著なのは、安倍政権の発足から4年近くたっても、勤労者など国民の収入は改善せず、国内総生産(GDP)の6割を占める個人消費が低迷を続けていることです。10月の毎月勤労統計調査(厚生労働省)では、勤労者の実質賃金がプラスから再び横ばいに後退、家計調査(総務省)では10月の実質消費支出が前年同月比0・4%の減少と、昨年9月以来「うるう年効果」が反映した2月を含め実質14カ月連続のマイナスとなっています。
消費低迷の影響は日本経済の全体像を示すGDPの統計でも浮き彫りになっており、12月上旬に発表されたことし7~9月期の第2次速報では全体の伸びが0・3%と1カ月前の第1次速報の0・5%より悪化しました。個人消費の伸びも0・3%で、財政支出と輸出に頼ったいびつな姿です。
この4年近く、安倍政権の「アベノミクス」で大企業や大資産家はもうけを増やし、ため込みに回しても、国民の収入は増えず、消費は伸びません。安倍首相は雇用が改善しているといい続けていますが、増えているのは非正規など不安定な雇用ばかりで、国民の収入増に結び付いていません。賃上げなどで収入を増やし、消費を立て直すことがいよいよ急務です。
―IMFも賃上げ求める
世界のほとんどの国が参加する国際通貨基金(IMF)は先月末発表した報告で、デフレから脱却し経済を再活性化させるため消費者が支出を増やすことが必要な国にとって、賃金の引き上げが大きな効果を持つと最低賃金の引き上げなどを求め、「これは特に日本に当てはまる」と指摘しました。
国民の収入を増やし消費を立て直すことは、世界経済の活性化のためにも、日本が担う責任です。
【しんぶん赤旗】12月15日 年金カット法 成立 最低保障なく際限ない減額―倉林氏反対討論
年金カット法が14日の参院本会議で自民、公明、維新などの賛成多数で可決、成立しました。共産、民進、希望の会(自由・社民)、沖縄の風は反対しました。反対討論で日本共産党の倉林明子議員は「最低保障もなく、際限なく減らされる年金制度を将来世代に残すわけにいかない」と批判しました。
倉林氏は、新たに導入される「賃金マイナススライド」によって、引き下げられた水準の年金が将来世代に引き渡されることになり、「将来年金確保法案」というのは「看板に偽りあり」だと強調。年金抑制の「マクロ経済スライド」の未実施部分を、翌年以降に持ち越す「キャリーオーバー」の導入で、消費税が10%に増税されたときに年金が上がらないどころか下がるという「高齢者にとっては悪夢のような事態」が起きると指摘しました。
さらに、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の株式運用比率を倍増させ、年金を株価つり上げの道具にしたと批判。国民に年金削減を押し付けながら積立金を積み上げる必要はないと主張。老後の生活の基礎となるように低年金の底上げ、最低保障年金の導入、現役世代の雇用・賃金の立て直しなど「本当の改革が求められる」と訴えました。