格差広げる奨学金という名のローン
2016年6月11日
【日本経済新聞】6月11日 麻生財務相、19年の消費増税は「当然」
ウランバートル=重田俊介】モンゴルで開催したアジア欧州会議(ASEM)財務相会合を終えた麻生太郎財務相は10日、同行記者団の質疑に応じた。2019年10月に延期した消費増税の判断について「(19年の引き上げは)当然だ」と語った。麻生氏は会合で、国際公約となっている20年度の基礎的財政収支の黒字化目標の堅持を表明しており、次回の増税は予定通り進める考えだ。
会合で懸念を共有した英国の欧州連合(EU)離脱問題には「離脱しない方がいい」との認識を示した。23日に迫る国民投票で離脱が決まっても、実際に離脱するのはほぼ2年後となることから「経済だけを見た場合は(すぐに)影響が出るわけではない」とした。
ウランバートル=重田俊介】モンゴルで開催したアジア欧州会議(ASEM)財務相会合を終えた麻生太郎財務相は10日、同行記者団の質疑に応じた。2019年10月に延期した消費増税の判断について「(19年の引き上げは)当然だ」と語った。麻生氏は会合で、国際公約となっている20年度の基礎的財政収支の黒字化目標の堅持を表明しており、次回の増税は予定通り進める考えだ。
会合で懸念を共有した英国の欧州連合(EU)離脱問題には「離脱しない方がいい」との認識を示した。23日に迫る国民投票で離脱が決まっても、実際に離脱するのはほぼ2年後となることから「経済だけを見た場合は(すぐに)影響が出るわけではない」とした。
【日刊ゲンダイ】6月11日 TPPに一言も触れず 安倍首相の応援演説に山形の農家怒り
安倍首相が山形で墓穴を掘った。9日、山形県内で自民新人の月野薫(61)の応援演説をしたのだが、「経済政策が最も大きな争点」と強調しながら、TPP(環太平洋経済連携協定)について一言も触れなかったのだ。
午前中に山形入りした安倍首相は、和牛農家やサクランボ園を視察、特産品のさくらんぼ「紅秀峰」も食べ、演説で「甘くておいしかった」と絶賛。農業関係者との意見交換会にも顔を出して、農家に寄り添っている印象を与えるのには熱心だった。だが、県内の農業関係者は「山形県の地元農業にも大きな打撃を与えると懸念されているTPPについて全く話さないのでは、農家への説明責任を放棄したとしか言いようがありません」と呆れていた。
安倍首相が山形で墓穴を掘った。9日、山形県内で自民新人の月野薫(61)の応援演説をしたのだが、「経済政策が最も大きな争点」と強調しながら、TPP(環太平洋経済連携協定)について一言も触れなかったのだ。
午前中に山形入りした安倍首相は、和牛農家やサクランボ園を視察、特産品のさくらんぼ「紅秀峰」も食べ、演説で「甘くておいしかった」と絶賛。農業関係者との意見交換会にも顔を出して、農家に寄り添っている印象を与えるのには熱心だった。だが、県内の農業関係者は「山形県の地元農業にも大きな打撃を与えると懸念されているTPPについて全く話さないのでは、農家への説明責任を放棄したとしか言いようがありません」と呆れていた。
【毎日新聞】6月11日 中高年未婚者 老後の不安、最大は生活費不足
40~50代の未婚者は「老後の不安」として生活費の不足を挙げる人が最も多く、次いで健康に関する不安も大きいことが民間団体の調査で分かった。寝たきりになった際の介護や認知症への不安を挙げる人は男性で30%、女性で42.5%に上った。近年の生涯未婚率上昇で中高年の未婚者が増える中、経済と健康の両方に将来不安を抱えている様子が明らかになった。
40~50代の未婚者は「老後の不安」として生活費の不足を挙げる人が最も多く、次いで健康に関する不安も大きいことが民間団体の調査で分かった。寝たきりになった際の介護や認知症への不安を挙げる人は男性で30%、女性で42.5%に上った。近年の生涯未婚率上昇で中高年の未婚者が増える中、経済と健康の両方に将来不安を抱えている様子が明らかになった。
【毎日新聞】6月1日 くらしの明日 私の社会保障論 奨学金という名のローン=中央大教授・山田昌弘
日本では、経済的困難などの理由で奨学金をもらう学生が増えている、という話をアメリカの大学教授の友人にしたら、けげんな顔をされた。なぜそれが問題なのか、と。
若年層の所得がのびず、卒業後、奨学金の返済が困難になる若者も増えていると説明すると、今度は「おまえの言っている奨学金(スカラシップ)というのは、教育ローン、つまり借金なのでは」と言われてしまった。
アメリカで「スカラシップ」といえば通常、成績優秀者に対して、学業に専念してもらうために給付される返済不要なものをいう。一方、卒業後、返済しなければならないものは「教育ローン」、つまり借金であると意識される。
アメリカの大学、そして大学院の授業料は信じられないほど高い。それを負担できる親は少ない。結果、多くの学生は教育ローンを借りることになる。
あるメディカルスクール(大学院レベル。日本の医学部に相当)に通う医学生は、借金が2000万円を超えたと言っていた。それでも大学や大学院に進学するのは、大卒と高卒の収入格差がアメリカでは極めて大きいからだ。日本では約1・4倍だが、アメリカでは2倍以上に上り、院卒との格差は更に大きくなる。
うまく一流大学を卒業し、高給の職に就けたら、ローンの返済は可能だが、できないと借金地獄が待っている。大学進学が一種のギャンブルと化しているようだ。
ただ、大学も優秀な学生を確保するために、奨学金を充実させている。だから奨学金をもらうために、大学のレベルを落として入学する学生もかなりいる。
アメリカでは、大学の内部で裕福な親をもつ学生(中国やロシアからの外国人留学生も多い)から、成績優秀な貧困家庭出身の学生への再配分が行われているともいえる。
日本で多くの学生が受けている日本学生支援機構の「奨学金」と言われるものは、有利子であろうが、無利子であろうが、返済が必要であり、その意味では「教育ローン」である。
そして日本でも、アメリカと同じような状況が生じている。それは、学生の親の平均収入が低下し、学費を全部負担できない親が増えていること。その結果、教育ローンに頼らざるを得ない学生は増大し、進学を諦めざるを得ない高校生も出ていること。そして、正社員や正規の公務員など安定した職に就けず、借金を返済できずに破綻する卒業生が増えていることである。
たとえ正規雇用で働いていても、借金返済がその後の人生に影を落とす。
ある学生が「奨学金をもらっている人と結婚してはダメ。結婚後の生活が苦しくなるよ」と親に言われたとリポートに書いてきた。
この話を別なところでしたら、正社員の若者から「僕も彼女も奨学金をもらった。返済のめどがつくまで結婚して子どもを育てるなんて無理だと話し合っている」と聞いた。
実のところ、教育ローン問題と日本の結婚難や少子化は結びついているのだ。
日本では、経済的困難などの理由で奨学金をもらう学生が増えている、という話をアメリカの大学教授の友人にしたら、けげんな顔をされた。なぜそれが問題なのか、と。
若年層の所得がのびず、卒業後、奨学金の返済が困難になる若者も増えていると説明すると、今度は「おまえの言っている奨学金(スカラシップ)というのは、教育ローン、つまり借金なのでは」と言われてしまった。
アメリカで「スカラシップ」といえば通常、成績優秀者に対して、学業に専念してもらうために給付される返済不要なものをいう。一方、卒業後、返済しなければならないものは「教育ローン」、つまり借金であると意識される。
アメリカの大学、そして大学院の授業料は信じられないほど高い。それを負担できる親は少ない。結果、多くの学生は教育ローンを借りることになる。
あるメディカルスクール(大学院レベル。日本の医学部に相当)に通う医学生は、借金が2000万円を超えたと言っていた。それでも大学や大学院に進学するのは、大卒と高卒の収入格差がアメリカでは極めて大きいからだ。日本では約1・4倍だが、アメリカでは2倍以上に上り、院卒との格差は更に大きくなる。
うまく一流大学を卒業し、高給の職に就けたら、ローンの返済は可能だが、できないと借金地獄が待っている。大学進学が一種のギャンブルと化しているようだ。
ただ、大学も優秀な学生を確保するために、奨学金を充実させている。だから奨学金をもらうために、大学のレベルを落として入学する学生もかなりいる。
アメリカでは、大学の内部で裕福な親をもつ学生(中国やロシアからの外国人留学生も多い)から、成績優秀な貧困家庭出身の学生への再配分が行われているともいえる。
日本で多くの学生が受けている日本学生支援機構の「奨学金」と言われるものは、有利子であろうが、無利子であろうが、返済が必要であり、その意味では「教育ローン」である。
そして日本でも、アメリカと同じような状況が生じている。それは、学生の親の平均収入が低下し、学費を全部負担できない親が増えていること。その結果、教育ローンに頼らざるを得ない学生は増大し、進学を諦めざるを得ない高校生も出ていること。そして、正社員や正規の公務員など安定した職に就けず、借金を返済できずに破綻する卒業生が増えていることである。
たとえ正規雇用で働いていても、借金返済がその後の人生に影を落とす。
ある学生が「奨学金をもらっている人と結婚してはダメ。結婚後の生活が苦しくなるよ」と親に言われたとリポートに書いてきた。
この話を別なところでしたら、正社員の若者から「僕も彼女も奨学金をもらった。返済のめどがつくまで結婚して子どもを育てるなんて無理だと話し合っている」と聞いた。
実のところ、教育ローン問題と日本の結婚難や少子化は結びついているのだ。