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必要な給付減らさぬため(「東京」)、武器工場の国有化―戦争放棄の憲法と相いれない(「赤旗」)、自維政権と国会 「定数」「副首都」は見送れ(「東京」)
2026年7月8日
【東京新聞】7月5日〈社説〉週のはじめに考える 必要な給付減らさぬため
 消費税減税や社会保険料軽減に対する関心が高まっています。
 国民や企業の所得に占める税と社会保険料の比率を表す国民負担率は45・7%、将来世代の負担となる財政赤字分を足した潜在的国民負担率は48・4%に上り、収入の約半分が差し引かれます。
 物価高騰が続く中、負担を減らしたいと願うのは当然です。
◆負担は「五公五民」並み?
 この状況は江戸時代の年貢米比率「五公五民」に例えられ、重い負担の訴えにもなっています。
 ただ、消費税収も社会保険料も社会保障制度の財源です。負担を財源に給付する「支え合い」の仕組みで、年貢とは異なります。
 税・保険料などを財源に年金、医療、介護、子育て支援、福祉などに充てる社会保障費用は年間約144兆円。政府の一般会計約122兆円を超えるお金が使われ、年金と介護は高齢者の生活を、医療は全世代を、子育て支援は現役世代の生活を支えています。
 分かりにくいのは医療、介護、保育などを提供するサービスの給付です。年金のような現金給付と違い、実感を得にくいからです。
 政府の社会保障国民会議に示された税・保険料の負担と現金給付の国際比較では、日本の中低所得の子育て世帯の負担の重さが浮き彫りになりました。負担軽減のため「給付付き税額控除」導入に向けた議論が進みます。中低所得層には現金給付は必要でしょう。
 一方、子育て世帯は、医療や保育のサービス給付を考慮すると、負担は軽減されます。高齢者世帯も年金に医療と介護の給付を加えると、受益はより増えます。
 年間の社会保障費用約144兆円のうち、年金給付の割合は4割超、医療と介護、保育の給付も合わせると4割超に上ります。
 例えば、医療の給付を1人当たりの年間額で示すと、医療ニーズが高まる75歳以上の約95万円に対し、0~4歳は約28万円。健康な人が多く、給付が少ない現役世代でも高額医療を受ければ、一定額以上の負担を健康保険で賄う高額療養費制度があります。
 サービスの給付は見えにくいのですが、病気やけがで受診し、高齢で介護を受け、仕事を続けるため保育所に子どもを預けられるのは、財源の再分配により社会保障制度を支えているからです。
 幼稚園から大学までの教育費も税財源が投入され、「人生前半の社会保障」との見方もできます。そう考えると実際に受けている給付は少なくないかもしれません。
◆各世代支える社会保障
 2012年に関連法が成立した「社会保障と税の一体改革」では消費税率を5%から10%に引き上げることを決めました。
 その代わり、受け取る基礎年金(国民年金)の半額に消費税収を充てることになりました。保育の充実、幼児・高等教育の無償化、保育士・介護職員の待遇改善、低所得高齢者の介護保険料軽減にも消費税収が充てられています。
 社会保障国民会議は中低所得者支援のため、飲食料品の消費税率を1%に引き下げることを検討していますが、年間約4兆3千億円の税収がなくなります。必要な人に支援を確実に届ける「給付付き税額控除」の議論も道半ばです。
 税負担の軽減は歓迎すべきですが、代替財源を確保しなければ、責任ある議論と言えません。財源が減れば、これまで通りの社会保障を維持できないからです。
 社会保障は高齢で働けなくなったり、病気・けが、障害を負ったり、失業した場合など、「必要」に応じて給付される制度です。負担軽減に目を奪われ、必要な給付まで減らされてはなりません。
 江戸時代、年貢の一部は用水路や河川整備などの公共事業にも充てられましたが、多くは武家や藩を運営する財源として使われたようです。それとは異なり、現代の消費税と社会保険料の負担は、社会保障の給付として私たちの暮らしに返ってきます。
◆「総中流」前提からの転換
 今の社会保障制度は、均質な中間層が出現した戦後の高度経済成長期以降、「総中流社会」を前提として組み立てられてきました。
 しかし、今や単身者やシングルマザー、外国人労働者、非正規雇用労働者など立場が多様化し、経済格差の拡大に伴い、懸命に生きているのに報われないと感じる人も増えています。
 社会保障も均質な中間層という前提からの転換が必要でしょう。社会の多様化を受けて、どのような困難を給付が必要な対象と位置づけるのか、誰にどこまで負担を求めるのか、再分配のルールの再考が迫られています。
 どんな困難に陥っても、社会が支えてくれる、公平・公正で、誰もが納得できる社会保障制度を、再構築したいと考えます。

【しんぶん赤旗】7月5日<主張>武器工場の国有化―戦争放棄の憲法と相いれない
 高市早苗政権の「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)の原案に、武器製造工場の国有化の検討が初めて盛り込まれました。日本が長期にわたって戦争を行うことができる体制の構築のためです。高市政権の「戦争国家づくり」への危険な暴走であり、断じて許されません。
■継戦能力強化狙う
 政府は6月30日の経済財政諮問会議(議長・高市首相)で、骨太方針の原案を示しました。原案は「安全保障の強化」として「装備・体制の両面で5年以内に防衛力を変革する」と表明。「データとAI(人工知能)の活用、無人アセット(兵器)導入、反撃能力にも活用し得るスタンド・オフ防衛能力の強化等により、『新しい戦い方』に適応する」としています。
 AIや無人兵器、長射程ミサイルなどを組み合わせ、他国領土にある軍事目標を破壊できる敵基地攻撃能力を一層強化しようとしています。
 同時に、原案は「持続的な対応能力の確保に向けた取り組みを強化」するとし、戦争を長期に続けられる能力(継戦能力)を重視。そのために「防衛生産基盤強化法の見直しも視野に、安定供給が困難な重要装備品のGOCO等による国の関与」を検討するとしています。
 GOCOは「国有施設民間操業」を意味し、政府が武器を製造する工場や設備などを買い取り、運営は軍需企業が行うというものです。2023年成立の防衛生産基盤強化法は、採算がとれず事業を継続できない軍需企業の工場や設備などについてGOCOの適用を可能にしています。
 骨太の方針の原案は、この法律の改定を含め、「安定供給が困難な重要装備品」の製造についてもGOCOを適用することを検討するというものです。
 背景には、ロシアによるウクライナ侵略などにみられる戦争の長期化があります。戦争が長引いても必要な武器が不足しないようにするためで、消耗品である弾薬などの製造を想定していると報じられています。
 しかし、これは日本が他国と長期の戦争をたたかうことを想定するものです。戦争を永久に放棄することを宣言した日本国憲法とは決して相いれません。
■攻撃の標的になる
 軍需企業を優遇し、武器製造工場などの取得に巨額の税金を注ぎ込むことも極めて重大です。
 自民党と日本維新の会の連立政権合意書は「防衛産業にかかる国営工廠(こうしょう)および国有施設民間操業(GOCO)に関する施策を推進する」としています。GOCOだけでなく、政府が直接に所有・運営する「国営工廠」の創設も狙われています。
 国営工廠は戦前・戦中、旧陸海軍直属の工場として、侵略戦争遂行のための軍需を支えました。太平洋戦争では米軍の日本本土空襲の目標になり、大きな被害を受けました。戦争になれば、日本の国土が戦場となり、軍需工場が相手国の標的になることは不可避です。
 「戦争する国づくり」を阻止する運動と世論を大きくすることが求められます。

【東京新聞】7月7日〈社説〉自維政権と国会 「定数」「副首都」は見送れ
 国会正常化に向けた与野党協議は6日、全面合意には至らなかった。自民、日本維新の会は、国会空転を招いた与党提出の衆院議員定数削減法案と「副首都」創設法案の今国会成立を断念すべきだ。皇族数を確保するための皇室典範改正案も「立法府の総意」を正しく反映させなければならない。
 不正常な国会が続く最大の要因は、与党が定数削減法案と副首都法案の審議を野党の同意を得ずに強行したことにある。民主主義の基盤である選挙制度に関わる議員定数の変更や統治の在り方を巡る制度改革は、与野党の幅広い合意に基づく必要がある。与党の「数の力」で押し切ろうとするのは無理筋というほかない。
 与党側が皇室典範改正案の審議を優先し、衆院定数削減と副首都の2法案の審議をいったん中断したことは当然だが、典範改正案の審議後に再び2法案の審議を乱暴に進めるなら、混乱が繰り返されるのは避けられまい。
 衆院議院運営委員会の与野党理事は典範改正案の扱いを協議したが、折り合わなかった。与党側の姿勢に懸念がある以上、野党側が典範改正案の審議にすんなり応じなかったのはやむを得ない。
 政府提出の典範改正案には、国会全会派による「立法府の総意」案を逸脱し、皇位継承を男系男子に限ろうとする条項が含まれ、野党が反発している。政府が改正案を出し直さないなら、国会で審議を尽くして修正するほかない。与党は「静謐(せいひつ)な環境」で審議する条件を早急に整える責務がある。
 参院では高市早苗首相が、野党側が求めた党首討論や予算委員会の集中審議への出席に応じる考えを示し、与野党が党首討論と集中審議の実施で合意。政府提出法案の審議を再開する方向になった。
 首相は国会での質疑を避けようとする姿勢が目立つ。与野党は当初予算成立後に党首討論を月1回開催することで合意しているが、4、6月は開かれず、首相出席の集中審議も歴代政権に比べて減少している。首相陣営の中傷動画疑惑を巡り秘書の陳述書を提出しようとするなど、野党側の質問に正面から答える姿勢とは言い難い。
 国会会期は17日の会期末まで2週間を切った。首相が、衆参両院で法案を可決・成立させて政策を実現するには、野党の追及にも誠実に向き合い、国会正常化に自ら努めなければならない。