内部留保 過去最大594兆円(「赤旗」)、GDPと生活実感―物価高対策なき政府 停滞は必至(「赤旗日曜版」)
2026年6月6日
【しんぶん赤旗】6月2日 内外経済 内部留保 過去最大594兆円―1~3月期法人統計 賃金格差広がる
財務省がI日に発表した、2026年1〜3月期の法人企業統計によると、資本金10億円以上の大企業(金融・保険業を含む)の内部留保は前年同期を29•9兆円上回る593•9兆円となり、過去最大を更新しました。ここでいう内部留保とは利益剰余金のほか、引当金などを含めたものです。
大企業の指標を第2次安倍晋三政権発足直前となる12年1〜3月期と比べると、経常利益が158•7%と大幅に増加したことを受け、内部留保も87•5%増でした。一方で1人あたり賃金は28%の伸びにとどまりました。
賃金を資本金規模別に見ると、10億円以上の大企業では713•8万異ったのに対し、1000万円〜1億円の中小企業では367•6万円とほぼ半分にとどまります。中小企業と大企業の賃金格差の推移を見ると、12年に1•74倍だった賃金格差は26年には1•94倍にまで広がっています。なお、法人企業統計の四半期調査は資本金1OO0万円未満を集計の対象にしておらず、実際の格差はさらに広がります。内部留保を賃上げに活用するほか、内部留保への課税を財源に、中小企業の賃上げへの直接支援に踏み切ることが必要です。
金融業と保険業を除く全規模・全産業の経常利益は前年同期比14・6%増の32兆6271億円でした。人工知能(AI)向け需要の増加や、中東情勢を背景とした資源価格高騰などが寄与しました。増益は6四半期連続で、1〜3月期として過去最高額となりました。
製造業は42•9%増の12兆9231億円で過去最高。情報通信機械でメモリーなどAIデータセンター向け需要が増加したほか、電気機械で工場自動化需要も伸びました。
非製造業は1•4%増の19兆7040億円。中東情勢の緊迫化により原油や天然ガスなどの資源価格が値上がりし、商社など卸売業の利益が改善しました。
一方、節部投資額は0•05%増の18兆8064億円とほぼ横ばいでした。非製造業では物品賃貸業や電気業が増えましたが、製造業の情報通信機械や輸送用機械で前年同期の生産能力増強投資の反動減が目立ち、相殺されました。
全産業の売上高は1•1%増の408兆6614億円で、過去最高を記録しました。
財務省は「景気は緩やかに回復しているとの政府見解とそごはない」と説明。その上で、中東情勢や金融市場の変動を含め、今後の動向を注視する姿勢を示しました。
【しんぶん赤旗日曜版】6月7日号GDPと生活実感―物価高対策なき政府 停滞は必至
1〜3月の実質GDP(国内総生産)は前期(2025年10〜12月期)比0•5%増で、2期連続のプラス成長でした。その主な要因は、トランプ関税の打撃から回復した輸出が大幅に回復したことです。
プラス成長だからといって、日本経済が回復したわけではありません。GDPは、経済の規模を示す指標ですが、国民生活の実態を示すものではないからです。問題はその中身です。大企業が過去最高益を更新し続け、株価はAI (人工知能)ブームを契機に高騰し続けています。
それとは対照的に、企業倒産件数はコロナ禍の22年以降、増大し続け、24年、25年と連続して1
万件を突破し、今なお増え続けています。非正規労働への依存も婁わらずで、希望退職募集企業も増え続けています。実質賃金は25年度まで4年連続マイナスです。消費支出も低迷しています。
25年の平均消費支出額は、2000年の水準にも及びません。日本経済は今もなお停滞状態にあるのです。GDP発表の当日、プラス成長にもかかわらず、株、円、国債の価格がそろって下落する「トリプル安」となりました。
この現状は、プラス成長や大企業の高収益、株高が、物価高に苦しむ国民にほとんど恩恵を与えないことを示しています。背景には政府の失敗があります。大企業への利益誘導、政策の手足を縛る対米従属路線によって日本経済、国民の生活は壊されてきました。
さらに深刻な問題に直面しています。先行きの見えない中東情勢に加え、高市早苗政権による的外れの政策です。その第一は、対米従属強化です。特に、米国が日本に求めている軍事費の増額はアジアの軍事的緊張を高め、財政に重くのしかかります。
第二は、看板政策の「責任ある積極財政」です。財政支出には、需要を刺激し物価を押し上げる側面もあります。物価高のもとでの晨財政は物価高を助長しかねません。適切な財源を確保しなければ、積極財政は財政をさらに悪化させ、逆に積極財政を困難にするという政策矛盾を抱えています。昨年10月、積極財政が掲げられた直後から、財政悪化懸念から長期金利の上昇と円安が同時に進行し、物価上昇に拍車がかかりました。政府•日銀が外国為替市場に介入して円高に誘導しても円安は進んでいます。円安の要因には、日本経済の停滞や、円売り•外貨買いにつながる輸入依存(恒常的な貿易赤字)の問題などが考えられます。
第三は、物価高騰にも有効な手だてを打てないでいることです。高市政権の財政善一辺倒の対策はたちまち限界を迎えます。国民の生活を支える施策は必要です。一方、軍事費の大幅な増額などで財政規律が緩めば、積極財政自体が困難になるばかりか、新たな借金を余儀なくされ、国民負担増になりかねません。
高市政権は、発足当初の中国との関係悪化を皮切りに迷走を繰り返し、補正予算編成などでの混乱もあります。日本経済のさらなる停滞は必至です。
工藤昌宏 (くどう•まさひろ 東京工科大学名誉教授)

