防衛装備の輸出拡大 なし崩しの運用許されぬ(「毎日」)、「政治とカネ」―許されない首相の居直り姿勢(「赤旗」)
2025年12月3日
【毎日新聞】12月3日<社説>防衛装備の輸出拡大 なし崩しの運用許されぬ
ひとたび歯止めがなくなれば、武器輸出がなし崩しに拡大しかねない。平和国家としてのありようが問われる問題だ。
高市早苗政権は、防衛装備移転三原則の運用指針を見直す検討を始めた。焦点は、輸出を認める分野を「救難・輸送・警戒・監視・掃海」の5類型に限定するルールの撤廃だ。護衛艦など戦闘に使われる武器の輸出に道を開く。
安全保障面で協力関係にある国への輸出によって、地域の抑止力向上を図る狙いがある。防衛産業の強化も目指す。成長が見込めず撤退した企業が相次いだためだ。
三原則は、日本の安全保障や平和貢献に資する場合などに限って輸出を認めている。野放図にならないためのしばりが、運用指針の5類型だ。撤廃されれば事実上、歯止めがなくなる。
輸出先から第三国へ武器が渡る懸念もある。紛争当事国に持ち込まれ、間接的に戦闘に関与する事態は避けなければならない。現在も第三国への同意のない輸出を禁じる仕組みはあるが、確実に機能するのか十分な検証が必要だ。
東アジアの安全保障環境が厳しさを増す中、各国は防衛力増強を急いでおり、日本の装備品にも関心が寄せられている。だが、やみくもに輸出を進めれば、地域の軍事バランスを崩し緊張を高める。
政府はこれまでも殺傷能力のある武器輸出の緩和に動いてきた。英国、イタリアと共同開発している次期戦闘機では、日本から第三国への直接輸出を可能にする規定を新設した。日本の護衛艦を共同開発・生産の名目でオーストラリアへ輸出することも決めた。
自民党ではかねて5類型撤廃を求める声が強かった。武器輸出に慎重な公明党が、一定のブレーキ役を果たしてきた。撤廃に前向きな日本維新の会と連立を組んだことで、問題点を精査しないまま議論が進む恐れがある。
5類型の制限を失えば、武器が戦闘に使われるリスクが高まる。「死の商人」のイメージがつきまとうようでは、平和主義の理念が損なわれる。
安全保障政策の重要テーマである。運用指針の改定は、政府の国家安全保障会議で決められるが、幅広い合意が不可欠だ。国会で議論を尽くす必要がある。
【しんぶん赤旗】12月1日<主張>「政治とカネ」―許されない首相の居直り姿勢
「そんなことよりも、定数の削減やりましょうよ」―。高市早苗首相は「政治とカネ」の問題を「そんなこと」呼ばわりし、軽んじる姿勢を党首討論(11月26日)でまざまざと見せつけました。カネの力で政策をゆがめる企業・団体献金の禁止どころか規制強化も棚上げ。定数削減に論点をすり替えて、ごまかす手法は日本維新の会と同様です。
しかし、自民党政治で繰り返される金権腐敗に対して、国民は国政選挙で厳しい審判を下しています。「政治とカネ」の問題に背を向けて居直る高市首相の姿勢が厳しく問われます。
■相次ぐ疑惑の発覚
「政治とカネ」をめぐる疑惑は、高市政権発足後も相次いで発覚しています。
共同通信は、自民党の北村経夫参院議員が自身の政策秘書が代表の企業にチラシ印刷代などとして約2000万円を支出していたと報道しました。本紙「日曜版」が報じた維新の藤田文武共同代表や高木佳保里総務会長の疑惑と同じ公金還流です。共同通信は「政治資金規正法などに抵触しないものの、秘書側に多額の政治資金を支出する『身内びいき』が政党を問わず常態化している可能性がある」と指摘しています。
さらに、国の事業を請け負う会社からの選挙期間中の寄付を禁じた公職選挙法に抵触するおそれのある寄付を、自民党議員が受けていたことも次々と報じられています。
共同通信によると、自民党の小泉進次郎防衛相や河野太郎元デジタル相らが代表を務める神奈川県の計15支部が、国の事業を請け負った会社から昨年の総選挙期間中に寄付を受けていました。NHKは、自民党の萩生田光一幹事長代行、土田慎前財務政務官、平将明前デジタル相が、同様の寄付を受けていたと報じています。
「政治とカネ」が繰り返し問題になっているのに、真摯(しんし)に向き合わない高市首相にはあきれるばかりです。これでは、国民の政治不信は深まる一方です。
■腐敗構造にメスを
しかも、高市首相が党首討論で持ち出した国会議員の定数削減は、与党の合意を押しつけ、民意を切り捨てる身勝手なものです。
維新は、もともと企業・団体献金の禁止を主張してきました。しかし、企業・団体献金を重要な資金源として温存したい自民党と連立を組むために、それを棚上げし、論点そらしで持ち出したのが定数削減です。
「政治とカネ」の問題を不問にするために高市首相が使った論点そらしの発言には、多くの批判が集まっています。木原稔官房長官は「残り時間がなく、急いで話題を転換する趣旨だ」(11月27日の記者会見)と弁明に躍起です。しかし、企業・団体献金の見直しにまったく取り組まず、定数削減に走ろうとする高市首相の姿勢は明白で、取り繕いようがありません。
自民党政治のもとで広がった政治腐敗の構造にメスを入れるためには、政治資金の流れを透明化するだけでなく、カネの力で政策をゆがめる企業・団体献金の禁止が不可欠です。

