市民公開セミナー『医療と消費税』」が開催されました
 8月21日、東京・日比谷公会堂で、日本医師会と四病院団体協議会の主催による、「市民公開セミナー『医療と消費税』」が開催されました。その内容を参加した全国の会・常任世話人 川上 允さんから報告があました。
 セミナーではこのまま消費税があがると医療は崩壊するーと発言があるなど、消費税増税への警告が発せられました。以下に詳報を掲載します。    (文責・川上 允)

以下、発言順
【日本医師会会長(メッセージを副会長が代読】

【四病院協議会代表(氏名メモ欠落)】医療機関は非課税ということで、その代替として公定医価格に1.53%が上乗せされていることになっているが、これはいわば計算上のトリックだ。その結果、控除外消費税(医療機関の負担分)は、中小病院で年間3〜4千万円、大病院では3〜4億円にものぼる。国会議員と話し合って驚くのは、消費税の医療分野における実態をほとんどしらないことだ。
このまま消費税が引き上げられれば医療は崩壊する。

【海堂尊】消費税はわかりづらい税で、国民はだまくらかされている。何のための税かも不明である。人口減少社会に直面している日本は、医療を根幹とした社会にパラダイムシフトする(社会を立て直す)必要がある。シッコという映画では、フランスの医療を確立した要因をインタビューに応じた女性が「政府が市民を恐れているからだ」と国民の力を誇らしげに語っていた。アメリカや日本はどうか、国民が政府を恐れている。国民が自立し、自尊心をもって立ち上がる必要がある。

【堤未果】アメリカでは毎年90万人が自己破産している。その主な要因は医療費だ。それは、すべてが商品になってしまっているからだ。政府は医療にかける予算を削り、民間にまかせてしまった。選択肢は広がったがそれはタテ型で、所得のないものは選択肢がない。アメリカが今日ほど大企業と政治が結び付いたときはない。マスコミもそのなかにいる。 9・11の同時多発テロ以後、支配層は敵を作り、「テロリストを許すな」のワンフレーズで国民を動員した。そのなかで国民と医師の間はビジネスとなり、医療問題が重大な社会問題に発展した。オバマは、根本に手をつけず、保険証を配っただけなので、矛盾はさらに深刻化している。民間の保険に加入している一定の所得のある層が破産している。医療訴訟が多発し、自殺者の職業別では医師が第一位である。 カトリーナ・ハリケーンで大災害を受けてニューオーリンズの「復興」では、あらゆるものが民営化・市場化され、市民の暮らしと教育などはひどいことになっている。3・11(東日本大震災)の「復興計画」は、ニューオーリンズの再現になりかねない。 TPPは、農協の問題ではない。オバマは、日本をTPPに参加させることで、不人気を一気に挽回したいと考えている。アメリカの財界・投資家の狙いは日本の医療を市場化させ、大儲けをすることだ。

【今村聡】国民の多くは医療機関が非課税(控除外消費税)で、仕入に含まれる消費税を負担していることを知らない。医療の多くは公定価格で、同じ非課税の賃貸住宅経営などとことなり、まったく自由裁量ができない。このまま税率が上がれば医療は崩壊する。

【田辺功】消費税は弱い者いじめの税金である。ところが湖東京至教授の調べでは、トヨタやソニーには多額の輸出戻し税がある。また、派遣社員は人件費ではないので、増やせば増やすほど戻し税が多くなる仕組みだ。その一方で大学病院などは3億円以上も消費税を負担している。(田辺氏は、湖東氏の写真と戻し税額一覧、さらには消費税の年度別負担額と法人税減税を対比したおなじみのグラフを使って、消費税の不公平さを解明した)

【船本智睦】前日に「病院管理学会」でおこなった講演を紹介しながら発言した(同趣旨の内容が「TKC全国会医業・会計システム研究会ホームページ」に掲載されているので、それを添付する)。

【伊藤伸一】医療では急性期(救急医療)が一番経費がかかる。全身麻酔をすると3000円の医療費が認められるが、局部麻酔だとゼロになってしまう。その結果、救急医療の熱心であればあるほど持ち出しが多くなる。病院(医療機関)は、一旦「原則課税」として、その軽減策を検討すべきだ。

【自由討論】今村氏は、「消費税法に、医療費も輸出戻し税同様『非課税』と明記すればいい」「医療や教育などは国家の根幹であり、これに課税するのはおかしい」などと発言。これにこたえて「これまで、政治の場では「他の業種とのバランス」論から拒否されてきた、との発言があった。これを受けて堤氏が「輸出品などと医療を同じレベルで論ずるのは論外」と指摘した。